見出し画像

「尖っている」と言われて

「ヒアは尖ってるよな。」

僕はムライイズヒアという名前でお笑い芸人をしている。地元の愛知県から一人上京し、お笑いの活動をしているが鳴かず飛ばずとはこの事かという毎日だ。

そんな僕は周りからは度々「ヒア」と呼ばれる事がある。学生時代にあだ名というもので呼ばれた事がなかった僕としては人生で初めてのあだ名で、最初に呼ばれた時はなんだか妙に嬉しかったのを覚えている。


そんな僕が周りの極一部の人に時折、

「ヒアは尖ってるよな。」

と言われる事がある。


「尖っている」というのは所謂、芸にストイック過ぎる余り周りを見下し他の人とつるんだりしない芸人の事を指して使われる言葉だ。
芸人界隈では悪口の様に使われているのを時折目にする。

単刀直入に言うと、僕は尖ってはいない。もっと明確に僕の心情を文字にするならば

「尖っているなんておこがましいくらいの人間です僕は。」だ。

先にも書いた通り、「尖っている芸人」と呼ばれる人は芸にストイックな故にそうなる。ストイックだからこそ芸に手を抜いてる人を見下してしまうし、そんな芸人と仲良くしても自分には全く為にならないと感じてしまうから一匹狼になりがちなのだ。


そこで僕という人間を見てみると、ストイックとは程遠い。

やらなければならない事なんてすぐ後回しにしてしまうし「stand.fm」という音声配信アプリで毎日配信すると言った傍から二日に一回も配信していない。ストイックイズノットヒアだ。


そして何より僕があまり周りの芸人さんと仲良くしていないのは、単純に人見知りだからだ。

僕はお笑いが大好きだし、面白い芸人さんが大好きだ。そんな芸人さんを前にすると「こんな僕が話しかけてもつまらないと思われるだけだろうな。」と委縮してしまうのだ。
何が一匹狼だ。ふざけるな。もっと色んな芸人さんと打ち上げに行きたい。


少し話が逸れてしまったがつまり僕は尖っていない、というより尖るレベルなんかには全く到達していない。


では、そんな僕が周りから度々「尖っている」と言われるのは何故なのか。考えてみた。


僕はよく思った事をそのまま口に出してしまう事がある。
「面白い」「つまらない」「カッコいい」「ダサい」「あの人は良い人」「あいつヤな奴」等々、思ったらその場で考えもせず。

その言葉達は間違っている事も多々あるが、時には芯を食ったなと思う事が自分でもある。


人はプライドが高ければ高いほど人に自分の欠点をつかれた時に素直に認めにくい生き物だなと僕は思う。

無駄なプライドなんてものがない人は他人からのアドバイス等を素直に受け止めるがプライドが高くなってしまうと、
「自分の意見こそ正しいのだ。他人の意見なんて所詮、私の意見より価値のないものだ。」となってしまっている気がする。

僕も時折そんなつまらない人間になる時があるのでそこは気を付けなければならない。


ここからは僕の想像でしかないのだが、僕がプライドの高い人に真実を言ったとする。それが言われた人のプライドを傷付ける真実だとする。その言われた人は自分のプライドを守る為に僕に対して「尖っている。」と言う。

こうして今起きたプライド殺傷事件の犯人である僕を
「尖っていて周りは全く思わない様な事を言ってしまう怖い奴」
にする事で僕が言った耳の痛い話を
「全く的の得ていない話」
にすり替える事が出来るのだ。

こうすれば嫌な事を言われた人の精神も安定を取り戻す。


これが僕の思う僕を「尖っている」とする理由だ。


やはり理由が分かるとスッキリする。理由も分からず怒鳴り散らしてくるおじさんは怖いが、怒鳴る理由を知っているおじさんの怒鳴りは理解しようと歩み寄れる。

しかし、これは一例でとりあえず変な事を言う人の事を「尖っている」とする芸人さんもいるしその芸人さん的に僕がストイックに見えていればその芸人さん的には僕は尖っているのかもしれない。


とにもかくにも今回のこの文章で僕が言いたい事は二つ。

「自分を守る為に相手を嫌な人間とし、自分を正当化する人間」
というのが少なからずいる。皆さんがそういうプライドモンスターに振り回されない事を願っているし、自分自身がそうならない様に僕も日々努力をしたい。

二つ目は、芸人仲間が本当に欲しい。面白い人とたくさんお喋りしたい。ヒトリサミシイ。


あとこれはこの文章を書きながら感じた事だが、僕は尖っている尖っていないの以前に普通に嫌な奴だ。あまり思った事をそのまま口にしない方が良い。本当に。


以上。初めてこんな文章を書いたが拙い文章で申し訳がない。
この様な文章を「エッセイ」と呼ぶらしい。エッセイ。オシャレな響きだ。これからもお笑い芸人兼エッセイニスト、ムライイズヒアをよろしくお願い致しますイズヒア。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?