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新たな地へ

16年目の東京。デザイナーになるために上京したけれど、今や私の仕事はパソコンさえあればどこでもできる時代になった。

フリーランス6年目の私は、コロナ前に地元の秋田に移住しようと計画していたが、瞬く間に広がったパンデミックで地元に帰れなくなり1年が過ぎてしまった。その間に家の更新で引越しをして、地元に戻ることも白紙になり今に至る。それも一つの運命だったのかもしれない。

コロナ前と今で、仕事も生活もガラッと変わった。長年描いていなかった絵を再開して、本格的に陶芸をはじめて。それまではほぼデザイン一筋でやってきたが、今はPCを触らず、粘土をこねたり、絵を描いてる時間の方が多くなった。

花粉症は、ちょっとづつ溜まったコップの水が溢れ出すように始まるという例えがあるけれど、自分の創作の感覚もそれに近いものがある。ストレスが限界に達した時や疑問が爆発した時、美しい景色やものを見て感動したり、映画を観たり音楽を聴いた時。それがネガティブなものでも、ポジティブなものでも。パーンッと弾けるように溢れ出して、ドバドバ流れてくる。

この感覚で作ったものは、高確率で自分の中に残る好きなものになる。数年前は毎日手を動かすという強迫観念みたいなものに取り憑かれていて、できなかった日にはズーンとなっていたけれど、人それぞれ合うやり方は異なると気づいた。感情は生きてる限り必ず動く。作ることに向き合う以上に、日常に目を向けて、怒ったり、悲しんだり、喜んだりしてよく笑うこと。そうしていれば、おのずと水は溜まってくる。心を動かしていれば一生つくれる気がする。

今暮らしている街に引っ越してから、もうすぐ2年。引っ越してきた理由は、友人が住んでるから。彼女とは同じ短大で出会い、同じ職業。よく食べて飲んで、色んな国を旅したり、たくさんの時間を共にしてきた。今は徒歩圏内のご近所さんなので、しょっちゅうご飯会をしたり、散歩したりしている。

そんな彼女とこの秋、京都へ移住することになった。

私は親に何かあったら、地元へ帰ると決めている。だから親が元気なうちに、いろんな土地に住んでみたいと思った。その最初の地に、京都を選んだ。京都は街も景色も大好きで、憧れの職人さんや作り手さんがたくさんいる地。自分にとってはものづくりの聖地なのだ。

最初の地として京都を選んだけれど、いろんな地を転々としていきたいなぁ。日本の地方も見たいし、世界も見たい。どんな人や文化に出会い、どんな感情が生まれるのだろう?世間が言うことより、自分で確かめて感じたことが全てだと思っていて、そうして積み重ねきた経験が、私の財産だ。偏見や壁の先に、いろんな色が見えてわくわくする。

この16年、デザインという仕事をがんばったと思う。自慢できるような経歴はないけれど、時間と情熱をいっぱい注いでまっすぐ向き合ってきた。叶わなかったこともたくさんあるけれど、挑戦したことで出会えた人や、新しい夢を見つけられたので、後悔はない。この仕事を選んで、東京に来て本当によかった。これからは誰かのためじゃなく、自分が作りたいものを極めていくことに時間を注ぎたい。

一緒に行く友人も、同じ志で新たな一歩を踏み出す。2人で念願だったアトリエを借りるので、やっと生活とものづくりのオンオフもできそう。健康第一なので。

あっという間に、引っ越しまで数ヶ月。仕事の環境も整え、家探しもはじめていよいよ本格的になってきた。わくわく半分、寂しさも半分。残りの日々はこの16年で出会った好きなお店や、大切な人達をめぐりたい。全ての出会いが今の私をつくってくれた。もうない場所や、二度と会えない人もいる。だからこそ、伝えられる感謝はちゃんと伝えに行きたい。

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