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自治体、企業に求められる事業継続の視点

「緊急時の対応」から「復旧」重視へ

災害には想定外がつきもの

大規模な災害が起こったとき、自治体や消防などの防災機関においては、建物の倒壊、道路や鉄道の寸断、ライフラインの維持、火災の発生、避難所での物資不足、人手の確保など、さまざまな問題への対応が求められます。

企業もまた、社員の安全確保とすみやかな事業の再開を図らなければなりません。しかし、災害時はさらに想定外の事態が次々と発生します。

2007年7月の新潟県中越沖地震では、国内の自動車メーカー全12社が生産休止に追い込まれました。被害の大きかった柏崎市に、自動車エンジンの部品を各地の自動車メーカーに供給する部品メーカーの工場があり、この工場の生産設備の一部が破損・転倒などの被害を受け操業停止に陥ったことが原因でした。

この事態については、自動車メーカー側には発注先1社の稼働停止が全生産ラインの麻痺に直結するような発注計画の問題が、また、部品メーカーには被災後迅速に事業を復旧させるための準備の不足の問題が、それぞれ指摘されました。結果的には、各メーカーが応援人員を多数派遣し、災害発生1週間後には生産再開に漕ぎ着けました。しかし、実は2004年の新潟県中越地震でも、ある電機メーカーの子会社工場が長期の操業停止を余儀なくされ、本社の経営を危うくするという事態を引き起こしました。

災害への備えの良し悪しは、企業の存続そのものにも大きな影響を与えることになるのです。

注目を集めるBCP(事業継続の対策)

こうした経験から、企業では危機管理対策を抜本的に見直す動きが活発になっています。災害そのものは避けられませんが、起きたときのリスクを想定し、被害を最小限にし、迅速に復旧するために事前準備をしておくという「減災」の発想が主流になってきました。そこで注目されているのが「BCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)」です。

もとは事業継続のためのリスクマネジメント全般を指し、2001年9月11日の米国同時多発テロをきっかけに世界的に知られるようになったものです。ニューヨーク商品取引所でBCPが機能し、テロの半日後には機能が回復したことは有名です。

当然、これは企業だけの課題ではありません。
自治体や地域コミュニティにおける危機管理としても、まちづくり全体の中にBCPの考え方を位置づけ、住民と連携して早期の復旧を実現していくことが求められています。


従来の防災は人命や物的損害の最小化を目的とし、組織ごとに減災対策や復旧対策を講じるものでしたが、BCPでは、優先業務の継続や業務・サービス復旧までの時間を短縮することを最重要課題とします。優先復旧の重要業務を特定し、目標とする復旧所要時間・復旧レベルを設定し、復旧計画を策定。自治体においては、緊急時に提供できる行政サービスを設定します。さらに、業務拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策の用意など、その継続に必要な要素の保全等を図るものなのです。

BCPは災害に強い通信システムの構築から

企業では、自社だけでなく取引先を含めたサプライチェーンとしてBCPを共有し、連絡体制を整備します。また自治体では、防災関係機関、病院、インフラ事業体、避難所となる学校、住民など、地域内のコミュニティ全体、あるいは他の自治体を含めた広域で復旧計画を共有し、共通の通信システムで連絡体制を確保します。

連絡網は網の目状にして多ルート化し、電源や情報通信システムはバックアップを用意します。また、バックアップオフィスなどでリスクを分散。自治体では、庁舎倒壊時などの指揮命令体制をあらかじめきちんと検討しておきます。

以上のように、有効なBCPの前提となるのが災害に強い通信システムの構築だと言えるでしょう。


この記事は『防災・危機管理読本 2008』 に掲載されたものです。
初版 平成19年11月1日
発行 全国移動無線センター協議会
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一般財団法人 移動無線センター(略称 :MRC)

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