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悲しいときこそ写真を撮ろう

はじめに

昨日は何故だか気分がちょっとだけ塞ぎ込んでいました。お仕事が忙しい日々が続いたからなのか、思うように進まないあれこれに気持ちが萎んだのか、少し肌寒い夜だったからなのかはわかりません。一晩明けた今となっては原因なんてどうでもいいことではありますが、そんなしょんぼりデーに撮った、考えた写真のことを自分のためにメモとして書き残したいと思います。

昨日のはなし

昨日はあんまりいい一日とは言えませんでした。頼まれごとが想定よりもちょっとだけ大変でモヤモヤしたり、モヤモヤするくらいならそもそも引き受けなければいいだけの話なのでそんなことを考える自分にモヤモヤしたり。そんなしょんぼりデーだったのですが、たまたまカメラをぶら下げていたので、すっかり日も落ちて夜ではありますが家まで小一時間かけて歩いて帰ることにしました。

結果的にこの選択は成功でした。気分が落ち込んでいても視界のどこかに心が引っかかる瞬間はけっこうあって、帰り道に何枚かシャッターを切って帰りました。

悲しいときでもお腹は空くんだなぁ、ではないですが、心が萎れているときでもシャッターを切りたくなるんだなぁ、というのがなんだか自分にとっては新しい発見だったのです。

どこかに連れて行ってくれそうな小道
お辞儀をして健気にがんばる子
植物のように絡み合う金属、金属のように力強い植物
看取られている
焚き火の前なら独りでも寂しくない
住めば都
車が通る瞬間だけ姿を表すいたずらゴースト

悲しいときこそ写真を撮ろう

ここからはごく個人的な感覚の話になります。悲しかったり、落ち込んでいたりするときでも写真は撮れる。そんなとき、写真の距離感はとっても優しいなって思います。

例えば、悲しかったことを日記に書き残すとき。悲しみに包まれた頭で生み出した文章は良くも悪くも偏ったり歪んだりしていて、そして文章というかたちで残ってしまうがために生々しいその瞬間のエネルギーを強烈に残したままになってしまいます。これはある種の呪いにもきっと似ていて、受け入れられるようになるためにはタイムカプセルのように、呪物のように、どこか奥深くに隠して時に委ね、エネルギーが薄れるのを待たなければいけないような感覚があります。

一方で写真はというと、言葉が残らず、カメラという仲介役を間に挟むことで、悲しい気持ちに対して不思議な距離感が生まれます。言葉に残らなかったからそのときの悲しい気持ちを捉えられていないかというとそうではなくて、悲しい気持ちだからこそアンテナに引っ掛かるような、普段は気にも留めないような被写体に出会うことができるので、その瞬間の眼差しは確かにそこに存在します。加えて、そんな悲しい気持ちだから心に引っかかった被写体をフレームの中に美しく収めるために試行錯誤するという行為自体が、悲しい気持ちに花を手向けるようなある種の浄化のプロセスを踏んでいるような感覚があります。

今回撮った写真はあの日しょんぼりとしながら暗い道を家まで帰った自分がはっきりと刻み込まれていながらも、ほどほどのエネルギーと無愛想な優しさで接してくれているような気がして、こういうところも写真を撮ることの素敵な部分なんだなって新しい魅力を発見できて嬉しかったです。

終わりに

「ちょっとだけ悲しい日」に写真を撮ってみたら新しい発見があったので、未来の自分に悲しいことがあったときに今の自分からパスを出せるよう、ささやかなエッセイとして書き残してみました。

文章に残すことで情報量は圧倒的に多くなりますが、沈んだときのアンテナやエネルギーがあまりにも生々しく襲いかかってくるので自分が消化できたときでないと受け取れないことはあるのかなと思います。一方で写真は、文章に比べて論理性もなく、曖昧で、瞬間的なものなので情報量はどうしても落ちてしまうのですが、今回見つけたような何も言わないでそっと隣にいてくれるような程よい距離感があるような気がして魅力的だなって思います。どちらの方法も一長一短あるとは思いますが、選択肢が増えたと思って自分なりの付き合い方を探していきたいですね。

なんとなく、言語を操る動物として生まれ暮らしてきてしまったがために、どうしても言語で残るものが解像度は高いし情報量も多いし、きっと正確で優れたものに違いないと感じられてしまう病気に、少なくとも自分は気づかないうちにかかっているような気がします。でも、絵や写真にもその人だけにしかわからないかもしれないけれどアンテナ、情念、感情、いろんなものが宿ることはあると思うので、そういうものをきちんと残せる向き合い方をしていきたいなーということで、今回はオチもなく締めようと思います。

すごく私的な文章にここまでお付き合いいただきありがとうございました。また筆を取りたくて心がうずうずしたときにでもお会いしましょう。

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