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どんがら トヨタエンジニアの反骨

チーフエンジニア(CE)の心構え

①知らないことがあっても、むしろ当たり前だと考えるべし

車のすべての分野に精通しているオールマイティのCEなんかいない。だから、自分の 得意分野をひとつ持ち、あとは専門部署と話ができるレベルまでその都度、必死に勉強すればOK

②即決するべし

「設計や評価部署が右か左かと相談に来たら、その場で即断即決し、彼らの背中を押しするべき。判断材料が足らないから、と宿題を出すようではCE失格。後になって間違っていることに気づいたら、その時に訂正すればOK

③約束と日程は絶対に守るべし

車の開発日程を守るべし

④トヨタグループの最新技術のリサーチすべし

「いま現場は何をやってるのか」と社内をくまなく聞き歩き、一番面白そうな技術を集めて車を作る。CEは自分で図面を書いたりするわけではない。それらを組み合わせればこういう車になるはずだ、という技術を見つけ、関係部署を引き寄せていくことだ。

スポーツカーを作る心構え

■顧客の購買意欲につながることを考える必要がある。

スポーツカーのファンとは、安く、専用設計されたものが欲しいとなる。
車を安く作るには、ファミリーカーなどに使っている共通部品を使わざるを得ない。だが共通部品で原価を下げようとすると、「これってミニバンと 同じスイッチじゃないか」と気づく愛好家がいて、購買意欲低下につながる。一方で、専用設計にして、その分高くすれば買うわけでもない。

■必要性を語った上で、やり方の転換が必要となるときもある。

車を安く作るために、「新車を開発するときは新しく作る部品を減らせ」というチーフエンジニアの鉄則。しかし、スポーツカーの場合は逆に、可能なかぎり新しい部品を作ることにして、 「共通部品を使うなら、その理由を説明に来い」とした。

■大衆がどのようなものが好きなのか判断できるようにする必要がある。

普通の人、大衆の皆が今どんなものを好きなのか。それがわかるようなセンスをちゃんと身につけるのが大事。トヨタは大衆車を作ってるから、大衆のセンスで判断できる能力を磨く必要がある。
大衆のセンスは、ちょっとしたことで揺れ動く。そのために、センスを身につけて、そのときの時代背景やデザインの流行考えて選択をする必要がある。
ハイセンスな人々がどんな暮らしを夢見て、何を見聞きしているかに注意していなければ ならない。
例:デザインはデザイナーに任せて、デザインしてもらい、大衆センスを身に着けて、大衆車として、売れるというものを判断できればいい。

〈センスを身に着ける方法〉
・家庭画報を読む
 『家庭画報』は「夢と美を楽しむ」をコンセプトにした婦人向けの月刊誌である。
https://amzn.to/3EPjGAM
・ファッション誌など若者向けの雑誌を眺める
・コンビニにいく
(雑誌コーナーや品揃えを見ることで、世の中のトレンドが分かる)

■方向性を具体的に伝える

「車高をただ低くしたい」と言われても、どこまで低くするのか、曖昧だと分からない。「かつてないデザインのものを頼む」と言われても、どのようなデザインにしたらいいのか、漠然たる目標を掲げるのが一番よくない。
上に立つ者が従来にない発想を打ち出すのは当然のことだが、仲間たちに具体的な目標を設定することが画期的成果に導くコツなのである。
→86のコンセプトは、「座ったままくわえタバコを地面でもみ消すことができる車高」
例:ソニーの元副社長・大曽根幸三の実話
小さなCDウォークマンを開発する際、「この大きさで作ってくれ」と設計担当者に告げて、厚さが約四センチ、十三・四センチ四方の正方形の木型を渡した。
大曽根氏は「大きさ半分、コスト半分、何でも半分にできると思え。知恵を絞るんだ」とも指示し、紆余曲折あって、なんとか完成した。

■車を開発するだけではなく、宣伝、広報、販売まですべてを取り仕切るべし

多くのチーフエンジニアはひとつの車の開発を終えると、その後は専門部署に任せている。だが、チーフエンジニアは車を開発するだけでなく、宣伝、広報、営業、販売まですべてを取り仕切るべし。
理由:開発者こそがその車を一番知っているのだから、宣伝や販売にも責任を持つのは当たり前。

■生み出したものの素晴らしさを認識させるセンスを身に着けるべし

エジソンは、みんなが作らないものを発明したことではなく、真っ暗闇の中パッと灯りをつけたことで素晴らしさを示した。
ただ電気を灯すだけではプレゼンテーションとしてはわかりやすいが、驚きにはならない。街中のガス灯とろうそくの火をすべて消させたうえで、暗闇のなかで自分の発明した電球を一斉に点けさせた。パッと街が光の中に浮かび上がり、びっくりする、感動を覚える。つまり、みんなが驚くような手法で、生み出したものの素晴らしさを認知させる発想、センスが必要。

■行動あるのみ

「企業社会の中で見る夢はいつか必ず叶う」というものではない。実際は偶然が大きく左右する。だが、その偶然にめぐり合うためにはただ行動し、周囲に訴え続けることが大事。

■無から新しいものを作りだす商品のセンスを備えるべし。信じたことは辞めてはいけない。

トヨタほどの大企業になると、言われた通りにきっちりと仕事ができる社員がたくさんいる。だが、無から新しいものを作りだす商品のセンスを備える者はほとんどいない。
トヨタの元幹部はこう証言する。「どんなものが売れるか、どんなものを客が待っているか、客自身にいくら聞いてもわからない。マーケットリサーチをいくらやっても、それで出てくる結果はやはりありふれている。そういうリサーチを超えて、『絶対、これがいけるんだ』というものを直感的に見つけられる人間がいる。それがZのチーフエンジニアには最も大事な資質なんだが、そうした人材は、平凡な上司や同僚たちの嫉妬の海を泳いで生き抜かなければならないから、組織には彼らを庇護す上役が必要だ」

■車開発の難しさは、どこに重きを置くのか。

ものすごくお金をかければどこで走行できる戦車みたいな車を作ることができるが一般ユーザーにとっては必要がない。だから、軽くて気持ちよく走ることができ、一番大事な値段もリーズナブルいうものを作ること。

■協業開発を行う時の注意点

自分に染みついた仕事の流儀は、会社が違うと全く受け入れてもらえない。 「これは自分が正しい」とか、「こう決まっているんだ」という考え方を、他社との協業の場合はしてはいけない。 相手に「間違っている」なんて言ってはいけない。 相手のことを思いやらないと、プロジェクトは最後まで行きつかない。とことん折り合うところを見つけるべし。

■周りをうまく使うべし

①説明や命令に苦労しても何とか仕事を割り振る人間
→たくさんの仲間に事情を打ち明けてやる気を出させ、仕事を割り振ると、その何十倍も仕事がはかどる。
②コミュニケーションが苦手だったり、面倒だったりして、自分全部仕事を引き受けてしまおうとする人間
→他人の仕事まで自分でこなそうとするから、夜遅くまで延々と仕事をする。でも、どんなに仕事ができたって人の二、三倍止まり。

■安く利益を追求することは必要であるが、妥協はしてはいけない

チーフエンジニアはカネとの闘いを宿命づけられている。どうやってカネを浮かせたらいいのかを常に考える。ところが、採算性と利潤追求ばかりに囚われると大事なものを見失う。
スープラの開発でも、部品を共通で使えば使うほどコストは安くつくが、妥協にもつながってしまう。すごくお金がかかるところは共通のものにして、車の個性に関わるようなところは自分たちが欲しいものにした方がいい。そのうえで共通にできてコストダウンにつながればそれに越したことはないけれど、初めから共通化ありきみたいな開発ではだめ。 考える順番が違う
⇨高級スポーツカーの作り方は違う!

■怖い上司になるべし

上司は物わかりがよすぎて簡単に納得するようではいけない。「あの人に適当な報告をすれば、後できっと確認に来る」というような雰囲気を持つことは大切。

■少数精鋭で行うべし

少数精鋭論というのは、精鋭を少数集めることではなく、少数だから精鋭になっていく!

■プロジェクトを推進させるためには、色々な人の協力を得て、進めていく必要がある。

BMWとの協業の際、BMWの工場で作る形で進めてしまうと原価の把握をすることができなくなってしまうため、トヨタ生産方式の力を借りて、BMWと協業で工場まで手を入れられるように試みてみる。

■チーフエンジニアは、パワハラ気味な対応が必要!?

自動車業界には電動化、自動化、コネクテッド、シェアリングの大波が押し寄せ、百年に一度の変革期を迎えている。創業家社長の豊田章男氏が「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬかの 「闘いが始まった」と訴える危機意識のなかで、風変わりで物言うエンジニアが煙たがられるようになっている。

■お客さんを満足させることを考えるべし

「俺や会社を満足させようとしてるんだったら、それは大間違いだぞ。お客さんがどう思うかを考えろ」by多田氏

完成車メーカー(日本とドイツの違い)

日本のメーカー
・「あらゆる点でライバルに勝ちます」 という楽でなければ却下されることが多い。絶対に勝てないとわかっていても、”気合と根性で頑張るぞ”、というのが日本のカルチャーだ。そして、その中間を求める志向が、日本企業では一番嫌われる。(二位じゃダメなのです。)
・トヨタや日産、ホンダなどといった会社のエンジニアが情報交換することはあり得ない。「エンジニア同士が接触した」、時には「近くにいた」というだけで、会社から怒られるぐらいだ。
ドイツのメーカー:
ドイツメーカーはユーザーを住み分けている
 ポルシェ:スポーツ思考
 メルセデスベンツ:ラグジュアリー思考
 BMW:スポーツ×ラグジュアリー(ポルシェよりは、スポーツ思考が少なく、ベンツよりは、ラグジュアリー感が少ない)
 VW:大衆車
・世界最大の自動車部品メーカー・ボッシュなども含め、そんなエリートたちがメジャーな自動車会社の主要ポストを占め、卒業後も頻繁にビアガーデンなどに集まって情報を交換している。(排ガス規制や衝突安全基準についても談じている。)重要な部分は独自開発するが、情報交換を重ねた方がコストを下げられ、その分もっと大事なところにカネと技術を注ぎ込める。 その方が顧客も幸せだという考えている。
■BMWと協業する場合は、企業秘密が多く、開示箇所が少ない。相手から聞いてくることも少ないので、受注生産に近い。「こういうものが欲しい」という要望を言ってほしいという話になる。
※トヨタは安く壊れないモノ作りには敬意を表するが、スポーツカーを作るノ ウハウはBMWが圧倒的に進んでるはずだ、という自信が透けて見える。

所感

・物語になっていて、読みやすい。
・完成車の開発現場のイメージはできるので、就活生にはオススメ
・お客様のことを考えて、何をするべきなのかは、常に考えて取り組むべきであることを再確認することができた。
・今後、こうなりたいなどの指標にはなりそう


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