疑問：『僕たちは勉強ができない』のパラレルルートをどんな気持ちで読んでいいかわからない
どうも週刊少年ジャンプ購読者のMr_noiseです。ワンピースでルフィが首領クリークと戦っていた頃のジャンプから買い始めて、購読歴は20年くらい。毎週欠かさず、掲載されている漫画をすべて読んでいます。グランドラインで会おうって言ってたギンは今頃何してんだろね。
ここ最近、ジャンプで連載されている漫画を読んでどうもモヤモヤした気持ちになっています。
この『僕たちは勉強ができない』という受験×ラブコメがテーマの漫画に悩まされています。高校三年生の唯我成幸がそれぞれに事情を抱えた天才少女たちに勉強を教え、自らは大学推薦、彼女らの志望校合格を目指すという話。ヒロイン達にはそれぞれ苦手教科があり、試験の解法や勉強の仕方の紹介がところどころにちりばめられていて、ジャンプの少年漫画としては新鮮な読み味のある作品です。
そんな『僕たちは勉強ができない』は先週のジャンプで、最終回を迎え、受験を終えた主人公はヒロインのうち一人に告白し、ハッピーエンドを迎えました。この手のラブコメにありがちな誠実で努力家でいいやつだけど、ヒロインの気持ちに鈍感でどっちつかずな主人公たる成幸くんが自分の気持ちに向かい合い、決着をつける。王道なストーリーながらも、ある種、読者の分身として無個性だった主人公が自分の意志を持って、行動する様を見て、ああこいつこんな人間だったんだなとこんな風に成長したんだなと感慨を持ちながら読み終わりました。
そして今週から『僕たちは勉強ができない Route : if』として成幸君が別のヒロインと結ばれるルートを描いたストーリーが始まりました。正直、先週までの話は何だったんだという気持ちです。成幸、お前は自分の気持ちと向かい合って答えを出したんじゃなかったのかと言いたくて仕方ありません。
ただ、話の分岐は成幸くんが自分の恋心に気づくずっと前の後夜祭での花火の時点からになるそうです。後夜祭の花火の一発目が打ちあがる瞬間に触れあってた男女は必ず結ばれるという伝承があり、前回とは違うヒロインと手を結んだことでルートが分岐したということらしい。この漫画、受験漫画でなくときメモかなんかだったのでしょうか。すでに別の決着を見てしまっているので、花火の伝承がロマンチックなものではなく、その後の明暗を分ける運命論みたいな怖いものに感じてしまいます。もっと正直に言えば、「ここで物語のルートを分けるよ」という作者側の都合をあからさまに提示されて困惑しています。
このルート分岐での恋心なんてひとつのきっかけで生れたり、失ったりするものなのさ的な人生論の示唆はわりと冷たくてもリアリティを感じなくもありません。花火どーんからの手をぎゅっで恋に落ちない物語の主人公は不自然ですらありますよ。くわえて、暗い校庭で手を差し出すのはヒロインの方からだったはずなので、この時点での成幸くんがヒロインの誰かを意図的に選んだことで話しが分岐するといういやらしさもありません。成幸くんは別の誰かに選ばれることにより、別の物語が始まるという仕組みなわけです。
どうしても花火をきっかけに展開が変わる作品と言えば、岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか？横から見るか？』を連想してしまいます。この映画ではタイトル通り、主人公が花火を下から見た場合と横から見た場合の二通りの結末を示し、主人公が自らあのとき違う選択をしたらとどうなったんだろうと考え悔やむことで、青春の一瞬、一瞬の取り戻せなさや失ったものの大きさを描いています。主人公は選択を誤ったのかなと思うことで小学生ながら悲哀を知るわけです。
この映画の主人公と成幸くんの大きな違いは2点。１つは分岐が別れるきっかけが主人公の主体的な選択によるものだったか否か。2つ、選択することで主人公はヒロインを失うことになったのか。成幸くんはヒロイン側からの行動により別のヒロインとのルートに入ることになるので全然違うわけです。要するにモッテモテでどの分岐でも他のヒロインと結ばれて幸せになりそうなんですよ。悲哀を知るのは読者です。ああ、こんな偶然であのヒロインの恋は結ばれなかったんだなって。
正直、こんな展開になるまで『ぼくたちは勉強ができない』にはそんなに着目していませんでした。ただ成幸くんの一つの結末とその経緯を知ってしまったことで、これからのパラレル展開では成幸くん、そんな女にたぶらかされないで、あなたは別の世界線では違うヒロインを選んでたんだよ、その時の気持ちは嘘だったの？という謎の目線で物語を追う羽目になってしまいました。このパラレルストーリーはヒロイン4人分あるそうです。成幸くんがそれぞれの世界線でどんな選択をしてもそれって花火の時のアレ次第で変わるくらいの軽さじゃんって目で見ちまうよ。マジでどんな気持ちで読めばいいんだろう。一人くらい結ばれないエンドで悲哀を知ってくれ、成幸くんよ。
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