津村紀久子さん作の『真夜中をさまようゲームブック』がまさに夜の散歩だった

 どうもMr_noiseです。最近、『にゃんたんのゲームブック』がamazonのkindleで販売していることを知り、小学生のころ図書室で借りて遊びまくったことを久々に思い出しました。そういえば、にゃんたんシリーズ以外のゲームブックをやったことがないなと思い、とっつきやすそうなものを探していると、小説家である津村紀久子さんがゲームブック形式の小説を発表しているのを知りました。

 僕にとって津村紀久子さんといえば『君は永遠にそいつらより若い』を書いた人です。就職も決まり、あとは卒業を待つだけの女子大生が自分は処女を守っていたのではなく、攻め込むことをしなかった童貞ではないかと考え始めるお話はユーモラスで軽く読めながら寂しげなお話でとても好きでした。

 小説家が作るゲームブックなだけで興味深いのに、それを好きな小説を書いた人が作っているとなると遊ばない理由がありません。早速、同作が掲載されている美術手帖の2015年10月号を買って、遊んでみました。

 ストーリーは飲み会終わりに終電で家に帰ってきた主人公がカギを持っていないことに気づき、さらに財布の中には三千円しかない。さてこの一晩をどう過ごせばいいかという地味な冒頭から始まります。とても庶民的。なんせ最初の選択肢が漫画喫茶に行くか、ファミレスに行くか、コンビニに行くか、行く当てもなくぶらぶら歩くかの四択です。まさに真夜中にさまようだけっぽい始まりです。

 何の話だよ、どう転ぶんだよコレとにやにやしながらページをめくるのが楽しいゲームブックだったので詳細なストーリー展開についてはここでは触れないでおきます。遊んでいて思ったのは題材を含め、ゲームブックとしてよくできているなあということでした。

 ゲームブックって大きい目的が提示されて、その目的を遂げるために小さな目的を達成していくって構造になっていると思うんですよ。自分の記憶やメモだよりだから、遊んでいると途中で今の目的ってなんだっけ?と忘れてしまう時がある。あっちへうろうろ、こっちへうろうろした結果、さっきの場所にまた戻っている。それでイライラしたり、パラグラフ番号を覚えてずるしたくなるけれど、このゲームブックはそれがない。真夜中の散歩だからそりゃ迷うよなとなる。

 またゲームブックという遊びのシステム自体がたしかに行き先ない真夜中の散歩みたいだなって、このゲームブックをやっていると思いました。コンビニ行っても仕方ないし、ファミレスいってもうまくいかないし、暗くて前は見えなくて、ああまだ日は明けない、またコンビニいくかなあ?そんなとぼけたおはなしがとぼけた文章ですすんでいくのがすごく人間的だなと。

 数値やサイコロを使わない形式のゲームブックなので、とっつきやすくもありました。なんとかゴールできたっぽいのですが、どうやらマルチエンディングのよう。忘れたころにでもまたやってみようと思います。

 しかし、収録された単行本がないと思って、美術手帖を買ったのですが、今年6月発売の『サキの忘れ物』という短編集に収録されているそう。

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この号の美術手帖はこんな感じで人によっては部屋に置いときづらいテーマかも。僕も短編集の方に買い替えしようと思います。

雑に終わり

#コラム #読書感想文 #ゲームブック #津村紀久子 #真夜中をさまようゲームブック


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