2021シーズン松田長崎中間報告(前編)
賛否両論の東京オリンピック2020ですが、スポーツDD(どれでもだいすき)勢の自分的にはとても楽しい2週間でした。で、オリンピックをすっかり楽しみすぎて忘れていましたが8月9日からJ2が再開します。また苦しい苦しい昇格・残留争いが始まりますよ、ハハハ。
ということで後半戦が始まる前に前半戦の振り返りを簡単に書いておこうかと思います(厳密にいえば21節が折り返しなんだけど)。吉田長崎については既に振り返り済みなので、松田監督が指揮を取り始めた13節以降の試合を対象とします。
①自動昇格ペースを超える松田長崎
一般的に自動昇格するには[試合数×2]の勝点が必要と言われており、全42試合行われるリーグ戦では勝点84が一つの目安となる。松田監督が就任した13節から前節23節までの11試合を抽出すると長崎は8勝2分1敗で勝点26を獲得しており、自動昇格の目安となる勝点22を大きく超えている事が分かる。長いシーズン、チームには必ず浮き沈みがあるもので一部分だけを抽出するのはアンフェアではあるが、松田長崎は今のところ自動昇格に挑戦できるだけの内容をピッチ上で示していると言えるだろう。長崎以外にも4チームが試合数×2の勝点を獲得しており、山形に至ってはこの期間勝点を4しか失っておらず、このペースは驚異的と評する以外に言葉がない。
もう一つ、チームの好調不調を図る指数に失点数が使われる事も多い。当ブログでは何度か紹介してきたが、自動昇格を達成するチームは得てして守備が固く、1試合平均失点が1を下回るチームがほとんどだ。松田監督が就任してからの長崎は平均失点が0.55と基準を大きく下回っており、吉田長崎が1.66だったことを考えると劇的な改善を達成している。同期間で平均失点が1を下回るチームは9チームあり、ここでも山形は平均失点0.45という驚異的な数字を叩き出している。京都、磐田あたりも安定した戦いを続けている。
②松田長崎の根幹を支えるゾーンディフェンス
昔からJリーグを見てきたファンに「松田浩の代名詞と言えば?」というクイズを出せば、ほとんどの人が「ゾーンディフェンス」と答えるだろう。「松田浩と言えばゾーンディフェンス」というのは「ヴィヴィくんと言えばあざとい」くらい結びつくものであり、松田監督の戦術を支える根幹の部分になる。
ではゾーンディフェンスとは何なのか?一言では表すのは難しいが、至極デフォルメして言えば「11人全員が連動してゴールを守る」という事になる。対義語となるマンマークは「決まった相手を1対1で対応する」というイメージだ。
松田流ゾーンディフェンスでは[4-4-2]の凸型陣形(ブロック)をピッチ中央に展開する事が基本となる。相手のボール保持に対してピッチの真ん中を使われるとゴールを守る難易度が上がってしまうため、縦パスを入れさせないよう陣形をコンパクトに保つ。そして相手ボールがサイドに展開されるようにファーストディフェンダー(エジガル・都倉)が誘導していく。サイドに誘導されたボールをサイドハーフ(澤田・ハット)とファーストディフェンダーが挟んで奪いきる、というのが最も理想的な展開になる。
上記の場所でボールを奪えればカウンターのチャンスだがフォワードも90分間ハードワークするのは体力的に無理がある。現実的にはサイドハーフとサイドバック(毎熊・加藤聖)で挟み込むことの方が試合では増えることになる。いずれの場合もボール保持者にプレスを掛けた選手がパスの行き先にもプレスを掛ける、いわゆる二度追いが重要になる。
このようにゾーンディフェンスの原則が働いている限り、ボール付近では必ず数的優位で守れることになる。11人が連動して守備陣形(ブロック)をコンパクトに保っている限り相手ボールに2人以上が守備を出来ることになり、一人が相手の体勢を崩してもう一人がボールを奪いきれば守備は成功になる(チャレンジ&カバー)
相手のボールをサイドに追い込み、二度追いして数的優位を作り、チャレンジ&カバーが作用しているうちは守備が機能していると言って良いだろう。逆にファーストディフェンダーの規制が弱く相手のボランチに前向きでボールを持たれたり、プレスバックが遅れて相手のウィングと自チームのサイドバックが一対一で晒されるような場面が頻出するときは守備が上手くいっていないと判断することが出来る。
松田監督はゾーンディフェンスについて著書で「水族館のイワシの群れのような動き」と比喩している。1人1人が個々で動くのではなく、11人が連動して1つの大きな生命体のように動くイメージになる。チームとして連動しているからこそ次のプレーに対する予測も効きやすくなり、相手攻撃陣よりも素早く動き出すことが出来る。
今のところ長崎で最も松田サッカーを体現しているのはセンターバックのレギュラーに抜擢されている江川だろう。中継にはギリギリ映らない位置で常に相手フォワードと常に駆け引きをしている。特に中断前に対峙したルキアン、ウタカ、イバはJ2屈指のセンターフォワードだったがほとんど仕事をさせなかった。単純なフィジカル勝負では分が悪いが一瞬の動き出しの速さ、予測の鋭さで相手を封じ込めた。
このゾーンディフェンスを90分完璧に遂行することは難しいが、ある程度機能したことで松田長崎は平均失点0.54を実現している。まずは守備、まずは無失点という部分がチームの土台になっている。
(後編はこちらから)
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