【できる事できない事】第34節 FC琉球戦【感想】

ぶっちゃけ試合見直してないので、もう感想です。半分くらい妄想です。琉球の小泉まじでいい選手だったなぁ…

①スタメン

長崎は前節から1人だけ変更、富樫に代わってエジガルがスタメン入りした。5連戦の5戦目、最も疲労が影響する試合だったが前節岡山戦の大勝を受けたか、手倉森監督はほぼターンオーバーせずに琉球戦のオーダーを組んできた。

対する琉球は5人変更、池田・市丸・田中・鈴木・沼田がスタメン入りした。順位的には厳しいシーズンだが一貫してボールを保持する主体的なサッカーを志向している。27節松本戦以降は5勝3敗と調子を上げつつある。チームの中心は小泉佳穂、上下にポジションを移しながら最後尾と最前列を繋ぐ金髪のリンクマン。今年のJ2で一番注目している選手の一人だ。

②ボール保持志向のチームが苦手な長崎

footballlabで算出されている敵陣ポゼッション指数でソートしてみると、こんな感じになる。一目瞭然、今シーズン長崎が勝ち点を落としたチームが上からずらっと並んでいる。

手倉森監督は「柔軟性と割り切り」というポリシーを一貫して掲げている。昨シーズンは1年目から柔軟性、つまりは「状況に応じてボール保持もカウンターもできる、プレスも撤退守備もできる」事を求めすぎた為、チームとして軸を作れなかったのが低迷の一因となった。今年は秋野を中心とした可変システムを落とし込むことで「ボール保持」のベースを作った1年であり、今のところ成果も結果も上々である。高木監督時代の5バック人海守備から4バックのブロック守備への移行も昨シーズンから継続しており、こちらもそこそこの仕上がりになってきた。今シーズン序盤から中盤まではカウンターからシュートに繋げないシーンが多かったが、ここへきて氣田や名倉のようなドリブラーが調子を上げてきて縦に速い攻撃も見られ始めた。

現代サッカーは攻撃、攻撃から守備、守備、守備から攻撃の4局面で整理して語られることが多い。ボール保持を軸にカウンター、ブロック守備と柔軟性が見えてきたチームにあって決定的に欠けているのが攻撃から守備の局面だろう。ボールを失った瞬間のリアクション、パスコースを限定して前から奪いに行く守備について現段階では「できたり、できなかったり」という状態だ。殊更、相手がボールを持てるチーム、つまり圧力を掛けても簡単に怯まないプレス耐性を仕込まれたチームには尻込みしてしまい、早々に自陣に撤退してしまう試合が少なくない。徳島相手にダブルを喫したのも、今節琉球に敗れたのも、この部分が大きな原因だったように思う。

ボールを持つのが上手いチームは相手のプレスを交わすのも当然上手い為、無闇に突っ込んでも逆にピンチになる事がある。だからといってボールホルダーへの圧力を諦めて自陣に撤退してしまうのは、安全第一なように見えて実は自分の首を絞める行為にもなる。ボールを持てる選手、パスを出せる選手はフリーにすればその力を十二分に発揮し、また琉球で言えば狭いスペースでボールを受けられる選手が揃っているからだ。

長崎の攻撃力をどう抑えるかというところが1つポイントでしたが、受け手のところで頑張るというよりも、しっかりと出し手のところで僕らがプレッシャーを掛けながらいきたかった。特に長崎のストロングポイントである前線の選手にボールが入らないという状態をどう作るかというところがポイントでした。それもデュエルという部分で戦ってくれたし、チャレンジアンドカバーでしっかりとスペースを与えないというところも、非常に機能的にできたかなと思います。
(樋口監督)

今節の長崎と琉球の命運を分けた部分は樋口監督のインタビューで語られている。自陣に引いてボールの受け手を潰そうとした長崎、出し手にプレッシャーをかけた琉球…一番大きな差はここに出たと言えるだろう。

③手倉森監督の狙い

この試合の手倉森監督の狙いはどこにあったのか。ボール保持志向の相手を苦手にしているという実感は監督もチームも当然あっただろう。5連戦の5試合目、いくらホームの試合が多いというアドバンテージがあっても体力的にはキツくなる。相手に圧力を掛けるためにチームの半分をターンオーバーして走り勝つ選択肢があったかもしれない。もしくは相手にボールを持たれる前提で3バックにしてスペースを埋める守備からカウンターを狙うこともできたかもしれない。

しかし手倉森監督の選択は富樫→エジガルを入れ替えるのみ、つまり前節岡山戦で大勝した流れを引き継いでボールを握り勝ちたいというものだった。手倉森監督は割とオカルト信仰な部分があるというか、言霊や流れを大事にするタイプの監督という印象がある。今季一番の内容で大勝した前節があって、その流れを重視するのか、琉球の対策でチームをいじるのか…これなら前者を選択しそうだなという感じがする。今となっては結果論に過ぎないが、福岡→一旦沖縄→長崎という日程的不利を抱えた琉球の方が動けていて、ホーム連戦のはずの長崎の方が動きが悪かったところを見るに、この試合は守備から入るべきだったしフレッシュさを重視するべきだった。

④岡山戦の流れを踏襲した理由

他にも選手を入れ替えなかった理由を推測するなら怪我人の多発も影響したかもしれない。亀川、米田が負傷離脱した中でどうやら毎熊、二見もトラブルを抱えているらしい。ボール保持を軸にしたい長崎にとってディフェンダー中心に負傷者が出るのは土台が崩れるのに等しく、台所事情はかなり厳しい。アウェイが先行する厳しい日程を3位で乗り切ったのは期待以上の成果だったかもしれないが、その代償を今になって払わされている感じである。前からプレスにいくにもサイドに蓋をしない事には袋小路を作れず、本職センターバックがサイドバックを務める急増システムではリスクの方が大きかったのかもしれない。

もう一つ、前節の流れを踏襲した理由があるとすれば、そもそもプレスで相手を限定する守備を仕込めていないという事情があるのかもしれない。前述の通り攻撃、守備、守備から攻撃という3局面はある程度整理できてきたが、攻撃から守備の局面は上手くいかない試合が少なくない。これは単純に仕込む時間がない説と仕込める人材(コーチ)がいない説が考えられるが、前者の理由は相当大きいだろう。ただでさえ過密日程の今年、シーズン中の練習はコンディション調整が主であり戦術的な幅を広げるのはかなり難しい。相手のボール保持がそこそこのレベルであればサイドハーフの澤田や名倉がプレスに加わって圧力を掛けられる試合もあるが、それこそ徳島や琉球のようにプレス外しに長けたチームに前掛になれるほどの習熟度ではなさそうである。

去年まで仙台の監督を務めた渡邊晋さんの著書でも「限られた練習時間のほとんどを攻撃練習に費やしたから守備が安定しなかった(意訳)」という経験が語られていた。プロ選手といえど1日の練習時間は2時間程度しか取れず、外野が思っているほどあれやこれやと落とし込む時間はない。結局は取捨選択しながらシーズン毎に継続していくしかない。徳島の躍進もリカルドロドリゲス監督の集大成であることを考えれば、2年目の手倉森長崎に出来ないことがあるのは当然といえば当然である。徳島や琉球、東京Vのようなチームは今の長崎にとっては天敵であり、ヒトカゲにとってのゼニガメ、グーにとってのパー、つまり負けパターンのような存在なのかもしれない。

⑤おわりに

「相性が悪かったから負けても仕方ないね」などという気は毛頭ないが、この試合を受けて「手倉森監督の限界」「この人件費の差で負けるのはあり得ない」という意見は少しフェアではないというのが個人的な思いだ。

ただ負けてしまったものは仕方がないとして、アウェイ千葉戦からまた勝ち続けないと昇格は果たせない。怪我人続出、苦手タイプの東京Vをアウェイに残すなど懸念材料は少なくない。それでも勝ち続けるには粘り強さや冷静さも求められる。少なくとも琉球戦の後半、エリア内で澤田が倒された怪しい場面があったとしても試合の終盤のパニック具合の方が心配になる。少しでも選手の力になるために、私も明日は蘇我駅に乗り込みます(タッパー持参)

最後に。琉球といえば人気YouTuber田中恵太のVlogは相当面白いので、すべてのJサポはチャンネル登録した方が良いと思う。本当にリアルなプロサッカー選手の日常が分かるし、我が家はこのVlogに影響を受けてコーヒー煎れるセット買いました。

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