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パリの地/カルティエ現代美術館

アムステルダムから3時間半、列車に揺られてパリ北駅にたどり着いた。もっと山の合間を抜けるとかヨーロッパの自然があふれた道中になるかと思っていたが、穏やかな牧草地帯が7割を占める地平線に塗れた道中でうつらうつらするばかりだった。

辿り着いたパリはアムステルダムよりもすこし涼しさが和らいでいてより一層過ごしやすい気候だった。どこか大麻が混じっていそうな街の空気はかつてのニューヨークを思い返す都市らしいごちゃ混ぜな匂いで、浅い感想だが都市だなと思った。

今回の旅ではこの土地に5日間滞在する。そのうち色々な美術館を巡るし、フレンチカンカンも見に行くつもりだ。やりたいことは溢れている。溢れているのに、初日からやらかした。行こうとしていたポンピドゥーセンターは火曜日が定休日だった。

ポンピドゥーセンター閉館日に気づく直前のノートルダム大聖堂

ということで舵を切り、ポンピドゥーセンターの後に梯子する予定だったカルティエ現代美術館に行ってきた。十和田市現代美術館の大きなお婆さんの彫刻で有名なロン・ミュエクの個展を開催していた。ミュエクは巨大、極小彫刻を作る人といえば正確だろうか、さまざまなスケールで精密な生物の彫刻を生み出す人である。

ガラス張りに二重に囲まれた美術館は作品本体を覆う内側と、外との境目として緑を多く植えた外側の構成になっている。内側の地上階には、なんのためらいもない直喩的な生と死が、生まれたての赤子と100の頭蓋骨だけで演出されている。

地下にもまだ作品はあり、果たしてどんな搬出入の苦労があったのかと思うと学芸員課程の身分として涙が出る。

人が乗れるほどの大きさの船に小さく佇む小ぶりな男性は、船の先に視線を向け何かを思案している。その先に見ているのは希望だろうか、絶望だろうか。浮いた船の行き先は誰にもわからないのである。

ここまで大型の彫刻の作品を収集し展示するということの財力たるや。日本にもこんなに立地のいいところに広いスペースのある財団経営の美術館ができればいいのに。

今日はいよいよ本丸ルーブル美術館とポンピドゥーセンターです。

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