1000円やるから、私の話を聞けよ
『金をやるから、話を聞いてくれ。』
ここまでくれば、情けないというか、悲しい人にすら見えてくる
必死すぎて、自分で自分のことを笑ってしまいそうになる。一瞬だけ、話を聞いてもらいたいって思ってしまったが故の暴挙
どうやったら、同居人に興味を向けさせられるか考えた結果が、「金をくれること」って。
残念な金持ちみたいな感じだ
でも、同居人は私の話を聞いてくれる体制になった。金をもらうってなれば、ある程度の相槌や、返事や、聞く姿勢は保証されるのだろうか
とにかく聞く姿勢が格段に良くなった。これだけでも良い。しかも返事や頷きも付いてくるって、さすがはお金の力
渾身の面白いアイデアの話をする
…って、あれ?。
同居人、完全に仕事モードで話を聞いている。もっと感情的に話を聞いて欲しかったけれど、なんかよそよそしい
ちょっとわかったことがある。お金って、サービスは向上するけれど、気持ちの距離は遠くなる
同居人の聞く姿勢は100点だが、なんとなく、お金の為にやっているというか
こっちもこっちで、反応を引き出そうと、私の持っている会話のテクニックを惜しみなく出した。けど、なんだかさっぱり。キャバ嬢を笑わせようと頑張っているサラリーマンみたいが思い浮かんだ
犬が一度、美味しいものを食べたら、いつもの餌を食わなくなる様に、同居人も1000円もらったから、いつもの会話には対応しなくなってしまうのだろうか。そんなことを思った
そんな心配をよそに、同居人は1000円要求はせず、代わりに桃をむくように言った。家には沢山桃がある。一番うまそうなものを剥いて出してやった
「どうぞ1000円の桃です」というと、「1000円も無いな」と言いつつ食べている。同居人は会話の終わりを察し、テレビを付けた。
1つ300円の桃だとすると、3.3個剥けば良い。どんな桃でも価値があれば、剥き続ければ1000円分になるだろう
あっという間に桃はなくなった。
次の桃を剥く気にはならなかった。食べかけの皿だけが、嫌に存在感を強調していた
いただいたサポートは、同居人と飲むコーヒー代にあてていこうと思っています。さらに余ったら、近くのロールケーキ屋さんでケーキを買えればと思っています。