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2018年8月の記事一覧

うしろすがたの(小説)1/2

 ずっと昔、人がまだ人の姿を取る前のことを夢にみる。それは魚の記憶だったり、鳥の記憶だったり――原生生物の記憶だったりもする。揺らいで、よどんで、移ろって……今私たちが人の姿をしていることはある意味では奇蹟に近く、そこには神の実在を信じる根拠もあるのかもしれない。
 冷夏は名前のとおり冷たい人だ。けれど夏に現象としてみられる逃げ水のように、とらえどころのない優しさを持っている。
 前述のようなとり

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