【備忘録】ビスマス制作手順書【随時更新】
更新履歴
2022/6/13
作成方法についての変更を行う⇒酸素缶の必要性がなく、保温が重要である事に改定
発色の消失について瞬間接着剤の件を追記
はじめに
どうも
最近よくビスマス結晶を作っています
作成方法をようやく確立したので共有する、兼、自身の備忘録として記事を置いておきます。
ビスマス結晶づくりはマニュアル化されておらず、経験則に依るところが大きいように思えます。本来なら温度、冷却の制御、骸晶の形状の外的要因からくる規則性等をしっかり調べられたらよかったのですが、今回はそこまで出来ていません。あしからず。
最近私が「ビスマス系Vtuber」として認識されているような節があるのですが、実際ビスマスづくりは8000円程度で出来るお手軽実験です。
安全さえしっかりと気を付ければ誰でもできます。特別なことではありません。
「なんだか難しそう」「危なくない?」「金持ちの道楽でしょ」
なんて思われがちで、特別視されることも多いビスマス結晶づくり。
もっと敷居を低く、気軽に、身近な物として広まってくれたらいいなと思います。
ビスマス結晶とは
レアメタルに属するビスマス(Bismuth Bi 原子番号83)、和名は蒼鉛
融点が271℃と非常に低く、家庭のコンロで簡単に溶かすことが出来ます。
冷えて結晶化すると独特の形をとります。これを「骸晶」といい、
稜や隅の部分の成長速度が速く、面の部分の成長が追い付かない場合、面が形成されずに凹んだ状態の物を言います。
骸晶はビスマスが有名ですが、実際は「骸骨水晶(エレスチャル)」や「ガーネット」「黄鉄鉱」等々にもみられます【要調査】(NaCl型じゃなくても形成する?)
生成原理については調べ中、まとまったら追記(資料は下に貼る)
色合いはビスマスの酸化被膜の厚さによります。 ビスマスの表面に酸化皮膜が出来ることで、単層の薄膜に対して光の干渉が起きて多彩な色が呈色します。 薄膜干渉で調べると原理が分かるかも。 膜厚と色は薄い物から
黄色→赤(っぽい色)→紫→青→緑 と変わります
【重要】始める前に
まず、誰でも手軽に出来ることではありますが、
ビスマスは金属の溶融、融点は270℃と言えど実際は更に温度が高くなります。
何が言いたいかというと、
「非常に危険な実験」
であることを必ず頭に入れておいてください。
溶融物を手にかけたら当然大やけどです。水がかかれば下手すると水蒸気爆発が起こります(ガチです)油に水を入れるのとは訳が違います。
なので、一人でやる際は細心の注意を払う事、そして、もし少しでも不安なら、そばで経験者の指示を受けながら実験を行ってください。
何が起こっても「自己責任」です。
※小学生以下の人がやる場合※
危険な工程があり、かつ重量もあるので親御さんと一緒にやるようにお願いします
1、液体のビスマスに水は絶対につけないこと
は徹底してください
カップ内に残っているとビスマスが跳ねます。加熱中に付けても跳ねます。危険なのでそれだけは気を付けてください
2、換気は絶対に行う
マスクをつけ、喚起は必ず行ってください
匂いはあまり気になりませんが、ビスマスにはSDSにあるように毒性があります。気化したものを少し浴びる程度なら問題ありませんが、継続して浴び続ければ当然危険が伴います。
上記のことは絶対に覚えておいてください。
溶かした金属は…危ない。
作り方
必要な材料類を列挙します。
必要材料、道具
お金:最低8000円-推奨15000円
●ステンレスバット:500-800円
なるべく厚く丈夫な奴、ビスマスを注いだ容器や廃材などを置く
●ステンレスカップ:100-300円
今回は300mlの物で話を進めます
100均のでOK、使い捨てても大丈夫なもの。ただし取っ手付きの物は以下の危険がある
・取っ手のビス打ちの部分が外れて溶液が漏れる
・ひっかけてこぼす
ステンレス以外のアルミ製のカップやステンレスカップでもコーティングしているものは決して使わない事、不純物が混ざることで干渉色が消えて銀色になる。(ホウ砂で不純物除去が出来ると聞いたが分からない、現在調査中)
●バット用ステンレス網:800円~
メッシュは柔らかく耐久度がないので非推奨、丈夫で芯がしっかりしている奴を選ぼう。
●ペンチ:1000円
ペンチはなんでも大丈夫、しいて言えばラジオペンチのような先の細い物の方が結晶の加工がしやすい
●プライヤーレンチ:1000円~
加熱したビスマス容器を動かすために必要、間違っても軍手や耐火手袋等で直接持とうとしない事
●軍手:100円~
結晶はとがった部分があったり、ビスマスが跳ねたりする。危険なので必ずする事
軍手とは言うが、耐火手袋の方が安全。
●保護メガネ:300円前後
メガネの上から出来る奴も普通にある。必ずつける事
●スプーン:100円
加熱中、表面に出てくる皮膜をすくう用
●ハンマー:800円~
ヘッドが金属の物を買う事、塩ビは溶ける
カップ内で固まった結晶を取り出す
●ピンセット:100円~
長い奴推奨、例によって素材がステンレスであることを確認
●ビスマスチップ、インゴット 1kg:4000円~
一番高い、Amazonで売ってるので検索しよう
あるとより楽しめるもの
●ステンレスの針金:500円~
ステンレス線、これを加工してコップ内に入れると簡単に引き上げて大きな結晶が作れる
●酸素缶:200円~酸素缶ではなく保温が色制御に必要と思われるのでここはなし
酸化皮膜の制御用、緑色を作る時に必須
⇒
●やすり:100円~
加工用、形を整えたいあなたに
●カセットコンロ:2000円~
屋外でやる時に使う
●コンロ用のボンベ:1000円~
制作手順
簡易フロー
手順について補足
1,ステンレスカップにビスマスを入れて加熱する
ビスマスの量はチップであれば隙間が少し開くくらいに敷き詰める
カップに水がついていないことを確認する。
2,加熱
強火で行う、融点は271℃、とにかく弱火でやってもらちが明かないので強熱。溶けてきたらスプーンで小突いて崩してあげると良い。
3,ビスマスの追加
ビスマスが溶けてきて固体がなさそうなのを確認したらピンセットでゆっくり追加していく。ここでボチャンと勢いよく入れると悲惨なことになる。少しプライヤーレンチ等でカップを持って揺らしてあげよう。
4,表面の不純物をスプーンで取り除く
表面に明らかに膜とは異なる汚れのようなものが浮かんでいるときがある。これはスプーンで取り除けるのですくってしまう。何度もやらなくても最初の数回でいい。色味としては濁った銀色、どぶのような色。
スプーンについた膜やごみはペンチなどで落としてしまおう。すぐならスプーンをバットや地面に叩きつければ勝手に外れる。
イメージ映像は下リンクから
https://twitter.com/moyoyura/status/1515257468720676864?s=20&t=UcxIIH-nYd9pIuTmy0PWgg
5,完全に溶け切ったことを確認し、3分追加で加熱する
追加でビスマスを加えると温度ムラがあるのである程度均一にする為に3分追加加熱する。
6,冷却
冷却は火を止めたタイミングからまず8分を目安におこなう。間違っても「はやく冷えるから水につけよ~!!!」とかするな、ケガするぞ。
これについては季節による気温差が大きいので目安時間は変わりやすい。
冷却開始の最初に表面をスプーンでさらってあげるといい。
7、直接揺らさず、周囲を軽く叩くなどして固まり具合を確認する
冷却中は容器を揺らさない事が好ましい、揺れると結晶の生成に影響を及ぼす。固まったかの確認はコンロの周囲を軽く小突くなどして、明らかにしわが寄るタイミングがあるのでそこを狙う。四角い形が浮かぶこともある。
8,回収
ある程度固まったなぁと分かったらピンセットで拾い始める。一度引き揚げたら戻さずに拾い上げた方がいい、入れなおすとほかの結晶が駄目になるかもしれない。
大体300mlだと3個くらいは良いのがとれる。取る時についてくる雫は軽く振って落としてあげると良い。飛び散りには気を付ける。
9,【危険】液体の容器間移動
プライヤーレンチを買ったのはこの為
表面の膜が固まって少し盛り上がったような状態になったのを確認し、液体が出せる表面の開口部分が一つ程度になったら、その部分から一気にビスマスを流しだす。慣れてない人にはかなり重いので気を付ける。流し出すときは流し先のカップを外なら地面、屋内ならステンレスに置いて、こぼしても大丈夫な場所で。※ここで酸素ボンベを持っている人は用意する
10,色制御緑色の結晶が欲しい人は、この流し切った冷却タイミングで開口部から酸素缶で酸素を一気に流し込む。体感、この方法が最も緑が出やすい。
⇒実際は開口部を狭めたことによって保温効果が高まり、結晶の色味に差が出たと思われるので酸素缶の項は取り消しとします。
アルミ等で保温して冷却速度を制御すると色が変わるかを検証する。
11,容器内のビスマスを取り出す
容器内のビスマスはかなり固く張り付いていることが多い。カップを駄目にするつもりで考えること。ハンマーで周囲を叩き、少しづつはがしていく。その後、手順9、10にあった開口部にペンチをねじ込み、表面をはがす、無理ならハンマーで砕く。当然、金属なので触ると厚い、やけど注意。
12,結晶を加工する
ビスマスはかなり柔らかい金属で、ペンチで簡単に加工できる
・薄い部分を押しつぶして削る
・ペンチ二つで割る
など、他にもやすりで加工するなど、お好みで。
13,溶かしなおし、二回目以降
また強火で加熱しサイクルを繰り返す。
回収するたびに液量が減る。適宜ビスマスを補充する。300ml容器の半分以下になると少しづつ小さいのしか取れなくなったり、上手くいかなくなったりする。
14,後片付け
ステンレス容器に置いたり、外に置いたりして十分に冷却する。
大丈夫だと思って油断するとかなり熱を保持していたりするので危険。
ちゃんとゴミは集めて金属ゴミに。
ちょっとしたテクニック、補足、注意点
◆結晶の色の制御
最初に言いますが、制御というほど「こうすればこの色が絶対に出る!」みたいのはありません。皆さんご自身で試行錯誤してみてください、それが楽しみでもあるので。
・緑…皮膜厚い
自然に出来るときは大体青色との中間、水色で出てきやすい。多分酸素缶が必須になってくる。引き揚げ物に吹きかけても色はつかず、液状ビスマスを流しだした直後に吹きかけると良い感じに出来やすい。
運がいいとこの時、皮膜のムラで虹色のビスマスが生成する。
・青…皮膜やや厚い
引き上げまでの時間を長くしたものに出やすい。10分以上放置し、引き上げたものを少し振ったりすると青色になる。
温度低めが条件なので、一度ビスマスを取り終わったカップを再加熱→全体が溶けたらすぐに冷ます。といった感じで、二回目以降で取りやすい。
・紫…皮膜やや薄い
完全な紫はあまりとれない。大体は黄色と一緒に出てくることが多い。
ここの制御はまだ出来ないが、体感大き目の結晶と一緒に出てきやすい。
・黄色…皮膜薄い
高温で取った場合にこうなりやすい。取りだしてから振ったりせずに放置すると良いか。
赤色は原理上生成せず、それに近い色は出来るということはお伝えしておきます。
◆ステンレス網の交換時期について
実はこれについては私もまったく不用意にやっていたのですが、然るお方からアドバイスを頂きました
元素学たん大先輩からの情報で、金網の長期使用の危険性という物がありました。
確かに長期使用すると、いかにステンレスの融点が1500℃近辺と言えど、歪んできていました。
その為、安全を意識するなら、上記の通り、太めの金網で30回、細めなら15回程度が限度といったところでしょうか。
屋外ならいざ知らず、屋内で270℃以上の液状金属をこぼしたら目も当てられません。
◆発色の消失について
Twitterを見ていると
「なんか知らんけど銀色になる!」「色が出ない!」
と悲鳴を上げている方がたまにいらっしゃいます。
原因はやはりアルミニウムの容器を使っていることでしょうか。
酸化皮膜の生成にコーティング剤などの不純物は厳禁です。
そして発色の消失原因は不純物以外にも、あと二パターン存在します。
1つは酸やエタノール等の有機溶媒や溶剤に付けること
もう1つはレジンやラッカースプレーで表面をコートしたり、沈めたりすることです。
酸や溶剤に付けると表面の酸化膜が落ちていきます。逆にこれを使って半面が銀色、半面が鮮やかな発色といった風変わりな結晶を作る事も出来ます。
そしてレジンやスプレーコートに関して、正直これは完全初見殺しです。ビスマスは非常に脆く、衝撃を与えるとかけることがしばしばあります。加えて、そのままの結晶では加工された写真のようにキラキラと輝くことはありません。その為、艶出し、耐久強化の為にラッカースプレーをかける方がいらっしゃいます(というか私がやりました)
ラッカースプレー等には有機溶剤が使われているのでこれのせいで発色が消えます。レジンも溶剤が使われているので消えます。
有機溶剤が原因であるなら、無溶剤のシリコンスプレーを使えば…!?と思われるかもしれませんが、発色が膜の干渉光によって起こることを知っている方ならお気づきかもしれませんが、これでも色が消えてなくなります。
私の知識不足ですが、今のところ理想のコーティングはないように思います。ただ、以下にあるアクリ屋さんのポリメタクリル酸メチルを用いたアクリルキューブは色を失っていません。
https://www.acry-ya.com/products/detail/192/?color=234
不思議ですね。浅学の身なので、これに関してはまだ理解が追い付いていません。知っている方がいらっしゃればご教授頂ければ幸いです。
6/13追記
瞬間接着剤でガラス容器の固定を行おうとした所、容器内部白濁、結晶表面の白濁が発生。硬化前の接着剤低分子が硬化前に揮発する、「白化」が起こったと考えられる。以降は瞬間接着剤は使用しない。
◆楽しみ方
以下のようにケースに入れて保管して楽しむのもいいでしょう
他にもboothを見ればミニジオラマを作っていたり、小瓶に収納している方、アクセサリーにしている方などたくさんいます。
https://booth.pm/ja/search/%E3%83%93%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%82%B9
色々な展示方法を模索してみてください。
◆ステンレスワイヤーでの引き上げ法
見たまんまですね。液中にステンレスワイヤーを伸ばして漬けます。
この方法を使うと
かなり簡単に大き目の結晶を得ることが出来ます。
コツとしてはまず、温度をある程度下げる(三分間)
その次に表面の膜をステンレス棒の先から3cmまでつけてあげる(種結晶のようなイメージ)
その後漬けてあげて、振動を与えずに待つ。
表面にしわが寄っているのを確認次第、少し持ってあげる。カップの直径に対して半分くらいの大きさになったら引き上げる。
周囲とくっついているなら力業で行けることもあるが、下でくっついているなら無理せず軽く火にかけて溶かしてから取ると良いかも。
◆もしこぼしてしまったら
近くに人がいないとき、屋外でこぼしたときは焦らず、そのまま固まるのを待つ。カセットコンロがついているなら焦らずに消す。とにかく慌てずに処理しましょう。
屋内でこぼしたときは火事になる可能性も十分あります。なのでこぼしそうな先がフローリングだったりするなら前もって耐火マットなどを敷いておきましょう。
おわりに
最終更新2022/6/13
こちらのページは新しいことが分かり次第、もしくは差し替えがある場合、随時更新していきます。
ビスマスづくりについての総まとめページとしての完成を目指しています。分析関係の論文から分かるようなことも載せていくつもりなので、気が向いた時にちょいちょい覗いて頂けると幸いです。
間違いがあったりしたらDMでこっそり教えてください…!
ビスマスづくりは誰にでも出来ます。より知名度が上がり、身近でちょっとレアなものになりますよう。
あ、私の販売boothとTwitterはここです(ダイマ)
Twitter:https://twitter.com/moyoyura?s=20&t=tCKI-KUqPwD0CkgROvBFEg
booth:https://moyoyura.booth.pm/
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