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ChatGPT時代の家庭学習

ツールではなくひとつの知性

巷で話題のChatGPTですが、個人的には非常に注目しており、GPT-4を搭載したBingAIも含め、積極的に検証、活用しています。
これまでの検索に毛が生えたようなレベルのチャットAIと異なり、十分話し相手になるレベルに仕上がっており、感動すら覚えます。
ChatGPTをはじめとする昨今のジェネレーティブAIの進化については、詳しい記事がいくつもありますので、ここでの説明は省きますが、もうツールではなく、ひとつの知性がそこにあり、人類は日常的にデジタルな知性と対話しながら生活をしていく時代に突入したと認識しています。

調べるのではなく、答えが返ってくる

チャットAIの進化について少しだけ触れておくと、既に、動画URLを指定すると、その内容を要約してくれるレベルに賢くなっており、例えば、中田敦彦のYouTube大学のある動画のURLを貼り付けて要約を頼むと、以下のようにまとめてくれます。

このURLは、YouTubeの動画「【北条政子①】大河ドラマ「鎌倉殿の13人」がもっと面白くなる!鎌倉時代の本当の主役はこの人だった!」です。この動画は、2022年に放送されたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に関する歴史解説動画で、北条政子という女性の生涯と彼女が関わった人物や出来事について紹介しています。
bing.com

追加で質問すると内容をどんどん教えてくれます。他にも「どうして水は青いの?」と聞けば、

水は実際には透明ですが、私たちが見るときに青く見えるのは、水が太陽光の一部を吸収し、青い光を反射・散乱させるからです。この現象を「散乱」または「ストークス散乱」と呼びます。水中の物質がある程度含まれている場合、水の色はより濃くなり、茶色や緑色になることもあります。
chat.openai.com

と、回答してくれますし、「10歳の子供でもわかるように説明して」と言えば、きちんと噛み砕いて平易な言葉で解説してくれます。他にも「走っている電車の上で、高くジャンプすると着地はどうなりますか?」といった質問にも慣性の法則を交えて返してくれます。
また、社会分野では「明治維新の良かった点と悪かった点について教えて下さい。」と問いかけると、以下のような文章で返します。

明治維新は、日本の歴史において非常に重要な出来事であり、多くの変革をもたらしました。以下に、明治維新の良かった点と悪かった点を説明します。

良かった点:
近代化の促進:明治維新は、日本を封建的な社会から近代的な国家に転換するきっかけとなりました。明治政府は、軍事、教育、法律、経済などの分野において、西洋の知識や技術を積極的に取り入れ、近代的な制度を整備していきました。
国家統一の確立:明治政府は、幕末に分裂していた藩や領主たちを統合し、中央集権的な国家体制を確立しました。これにより、国内の政治的不安定さが解消され、国力の向上につながりました。
人権の尊重:明治政府は、法律を整備することで人権の尊重を宣言し、奴隷制度の廃止や平等な教育の普及など、人権に関する改革を進めました。

悪かった点:
民族主義の強化:明治政府は、国家の統一を図るために、日本人の民族主義を強調するようになりました。これにより、日本人以外の人々や文化への差別や排斥が生まれました。
植民地支配の強化:明治政府は、国家の経済的利益を追求するために、朝鮮や台湾、南樺太などの領土を植民地化しました。植民地支配によって、現地の人々の権利や自由が侵害され、苦しむことになりました。
大日本帝国の建設:明治政府は、国家の近代化と民族主義を強調し、大日本帝国の建設を進めました。これにより、国民が盲目的な愛国心を持つようになり、第二次世界大戦への道が開かれることになりました。
以上が、明治維新の良かった点と悪かった点の一例です。
chat.openai.com

間違いも多数見受けられますし、苦手な分野もあります。ただ、そういった未熟な部分もポジティブに感じられるほど、過去のAIとの違いを見せつけてくれます。

人類はAIに餌を与え、そのAIの家畜となる

こうなってくると「人類はこのAIにもっとデータを提供すべきだ」という気持ちになってきます。チャットAIは既に検索エンジンとも連携を強めているので、人や街やモノに関する情報をどんどんデジタル化してWeb上に上げていくだけで、AIの知識として取り込まれ、より高度な回答が可能になっていきます。
これまでは技術をツールとして使ってきましたが、これからはAIが中心となって、人間がその世話をしながらその世話になるという共生社会に近づいていっています。ちょっとSFチックに書きすぎましたが、快適なようなで毎日何かを失っていくような時代の流れが今後加速していくように感じます。

手間の分だけロマンと仕事があった

家庭学習の話に中々進めていませんが、学習する意義が揺らいでいるので、もう少し社会変化について書きます。デジタル化が進んだ昨今、ジャケットを見ながらCDを買ってコンポで聴いていた時代は遠い昔になり、今はワイヤレスイヤホンで聴きたい曲を好きなだけ聴く時代になりました。同じく、映画館に行って映画を観ることも少なくなりましたし、ホームシアター化したお部屋でDVDを観ることもなくなりました。本に関しても装丁や重みや厚みを感じることもなく、内容だけを電子データですぐ読むことができます。
子供になりたい職業を聞いても、なかなか出てきませんし、職場の若いメンバーと話しても業界や仕事に夢やロマンを感じている子が少なくなっていると感じます。
私がただ、懐古主義の面倒臭いオジサンになっているだけなのかもしれませんが、昔に比べ社会を構成するプロセスや仕事が減ったことで、そこにあった夢やロマンみたいな輝きが失われて、自分を投影する場所が減っているのではと感じたりしています。
うまく例えられないのですが、最近コンビニでメロンパンの皮のクッキーの部分だけ売っているのですが、なんかそれを見ると「結局ここが食べたかったんでしょ」と差し出されているような気がして、正しいけどどこか貧相になっている感覚があります。それと似たようなことがいろんな分野で起きていて、夢を描きにくい世の中になっているのでは?と感じています。

時代の進歩と時間差に対するジレンマ

AIの進化とそれに比例して夢がなくなる社会みたいな話を前提にすると、精神的にも肉体的にも伸び盛りの子供達に、そのうちAIに聞けばすぐ答えが出そうなことを、夜遅くまで自宅や塾等で学ばせることに親として疑問が湧いてくる訳です。
正直、技術や世の中がもっと大胆に変わって、AIの力を積極的に活用した方向に進むのであれば、もっと自分が楽しいと思えるものに大胆に時間を費やすべきだと言ってあげれるのですが、指導要領や受験制度が世の中の流れを反映するまで最低でも10年はかかると思われ、それまでは10年前の価値観の上で学んでもらわざるを得ません。
とはいえ、今回のように大胆な技術進化とそれによる社会変化の兆しを目の当たりにすると、「今は仕方ない」と割り切ることもできず、なんだか日に日に馬鹿馬鹿しくなってきます。
なんとかもう少し次の時代に役に立つ、知識や素養を身につけてあげさせたいと考えている中で、AI時代にも生きる能力というのが朧げながら見えてきましたので、久しぶりに記事を書くことにしました(ここからが本題です)。

AIが解けない問題は何か

人間の存在意義を探ろうと、ChatGPTにいろいろと問いかけている中で、少し面白い傾向が出ました。
具体的には、AIにいくつか子供向けの問題を解かせてみたところ、この辺りが人として養っていくべきスキルかなと思えるところが見えてきました。
テキストとして使用したのは、ソニー・グローバル・エデュケーションが監修している「5分で論理的×思考力×ドリル」で以前、「SPI問題で論理的思考能力を育てる」という記事を書きましたが、その取り組みの延長線で出会ったテキストで、まさにSPI問題を子供でも解けるように編集してくれた本で、我が家では上の娘が4年生になったくらいから家庭学習に使っています。

今回、手始めにまず以下の問題を出してみました。

5分で論理的×思考力×ドリル

最初の答えがこれです。

ジャンケンをした7人のうち、グーを出した人の数をx、チョキを出した人の数をy、パーを出した人の数をzとします。その場合、以下の式が成り立ちます。
x + y + z = 7 ・・・式1
x + 2y + 0z = 13 ・・・式2(指の本数の合計から計算)
式1から、x = 7 - y - zと置き換えると、式2は以下のようになります。
7 - y - z + 2y = 13
y = 3
y = 3とわかったので、式1にy = 3を代入してxとzを求めます。
x + 3 + z = 7
x + z = 4
xとzは、グー、チョキ、パーのうち、どちらか2つの数値を合計すると4になる組み合わせが存在します。例えば、x=1、z=3の場合や、x=2、z=2の場合などが考えられます。
したがって、グーを出した人が1人、チョキを出した人が3人、パーを出した人が3人の場合や、グーを出した人が2人、チョキを出した人が2人、パーを出した人が3人の場合など、複数の答えが存在します。
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これ、それっぽいですが、答えは、グー×2人、チョキ×4人、パー×1人なので、違います。もう一回聞き直すと、グーとパーの指の本数がきちんと考慮されていないことに気づいて、以下のように訂正しました。

7人で行われたジャンケンの結果、のばしている指の数の合計が13本であることから、以下の式が成り立ちます。
グーの人数 + チョキの人数 + パーの人数 = 7 ・・・(1)
グーの人数 × 0 + チョキの人数 × 2 + パーの人数 × 5 = 13 ・・・(2)
式(1)の両辺にグーの人数を代入すると、
グーの人数 + チョキの人数 + パーの人数 - グーの人数 = 7 - グーの人数
グーの人数を左辺に移項して整理すると、
グーの人数 = 7 - チョキの人数 - パーの人数
これを式(2)に代入すると、
(7 - チョキの人数 - パーの人数) × 0 + チョキの人数 × 2 + パーの人数 × 5 = 13
両辺を整理すると、
2チョキ + 5パー = 13 - 0
2チョキ + 5パー = 13
この式を満たす整数の組み合わせを求めると、
・パーが2個の場合、チョキは3個になります。しかし、このときグーの人数が2人になってしまい、合計が7人にならないため不適です。
・パーが1個の場合、チョキは4個になります。このときグーの人数が2人で、合計が7人になります。よって、パーが1人、チョキが4人、グーが2人となります。
したがって、グーが2人、チョキが4人、パーが1人であることがわかります。
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この辺りの問題は、連立方程式に直せるので、比較的適用が早いです(ちなみにテキスト自体は、方程式を知らない小学生でも解ける内容になっています)。
面白かったのは、以下の設問です。

公園に9人がけのベンチがあり、何人かが座っています。
座っている人たちは、だれも隣り合っていません。
リョウタもゆったりと座りたかったのですが、どの席に座っても隣にだれかがいることになるので、座るのをやめました。
ベンチには何人の人が座っていますか?
考えられる中で、いちばん少ない人数を答えましょう。
5分で論理的×思考力×ドリル

これに対しては、最初以下のような回答がありました。

9人がけのベンチに座っている人たちが隣り合っていない状態で座っている場合、座れる人数には制限があります。この制限は、最初の人がどこに座るかに依存します。
最初の人がベンチの両端に座った場合、残りの人はすべて隣り合わないように座れます。この場合、座っている人数は2人です。
最初の人が端ではなく中央に座った場合、それぞれの隣に1人ずつ座れます。しかし、両端の席に座る人は1人しか隣り合わないため、座るのをやめることになるでしょう。この場合、座っている人数は4人です。
よって、ベンチに座っている人数は最小で2人です。
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なんだかうまく噛み合いません。答えも違います。もう一度聞き直すと、

公園にある9人がけのベンチに、隣り合わないように座っている人たちが座っていると仮定すると、座ることのできる席は以下のようになります。
1 0 1 0 1 0 1 0 1
ここで、1は座席が埋まっていることを表し、0は座席が空いていることを表します。このように座ることができる人数は、ベンチの中央の席を空けた7席になります。したがって、座っている人数は2人です。
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となり、少しまともになりますが、答えは違います。
ちなみに答えは3人です。
何度聞いても一部おかしな文章が入ってくるので、以下のような追加質問をしてみました。

隣り合わないと言う場合には、2席分空いている場合も含みますが、その想定は含まれていますか?
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すると、

申し訳ありません、前回の回答には誤りがありました。隣り合わないという条件に2席分空いている場合も含まれるという想定は含まれていませんでした。正しくは、一席空けて交互に座る場合です。
その場合、ベンチの最初の席に座った人が、次に座れるのは3番目の席のみであり、その次は5番目の席、7番目の席と、一席空けて座ることになります。最後に座る人も同様に、隣に座る人がいないように一席空けた席に座ることになります。
このように考えると、9人がけのベンチで誰も隣り合わないように座る場合、座れる人数は最大で5人になります。
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という回答がありました。それでも答えに辿りつかないので、思い切って、

その場合の最小人数は3人ではないですか?
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と聞いてみると、

申し訳ありません、再度確認しましたところ、前回の回答に誤りがありました。最小人数は実際には3人です。
最初の人が一番端に座って、次にその隣の席に座らないようにします。次の人は2つ隣の席に座り、その隣の席に座らないようにします。そして、最後の人は一番端の席に座ります。このようにすることで、3人が隣り合わずに座ることができます。
したがって、公園に9人がけのベンチがあり、だれも隣り合っていない場合、座っている人数の最小値は3人となります。申し訳ありませんでした。
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と回答がありました。実際には一番端に座らずとも3人で隣り合わずに座れるので、正しい表現ではありませんが、なんとか答えにたどりつきました。
これ、どういうことかというと、
AIにはベンチという形状から、空いている空間に○人分という考え方が適用できていなかった。
ということかと思います。
ある意味、AIの解釈の方が正しいと感じる部分もあるのですが、問題の出題者は、隣り合わない空間を座っている人を●、空間を○とすると、●○○●○○●○○といった形で回答者がモデル化することを期待していますが、AIはベンチの空きスペースを人1人あたりで割りつけて考えないということじゃないかと思います。
実際にベンチに何人か座っていて、それを前から見た場合に、空いている空間見た時に、綺麗に2席分づつ空いているとは限りませんので。
この辺りが、人の暗黙知を頼って構成されている部分で、真面目で正直なAIが対応できない部分だと感じました。
今回のケースでは、人間の方が事象を都合よく抽象化しがちという事例でしたが、問題によっては、「太郎くんは時速60kmでは走れません。」と教えないといけないケースもあるかもしれません。

人間臭さの専門家として知性をマネジメント

まだまだChatAIについては、研究、検証を進めていく余地はありますが、上の問題への対応も含め、慣習に近いようなお決まりのコンテクストのようなものを踏まえて行動するということにおいては、人間の方に優位性があると感じており、社会のいろんな変数を踏まえて、総合的に問題解決をする能力は、小さい頃から学習していっても価値のあるものとして残るのではという手応えを得ました。
また、これからAIは検索エンジンのような自分の生活を効率化するためのツールではなく、共に生活を豊かにしていくパートナーとして、ともにマネジメントしあう存在にあると感じており、「知性を使いこなす知性」のようなものをいかに育成するかが、日々の学校生活なども含め重要になってくると感じています。
この辺りを踏まえ、具体的にどう子育てを変えていくべきなのかについては、引き続き、研究を進めて記事にしていきたいと思います。

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