マガジンのカバー画像

空間

26
空間を昔から愛していて、抽象的なまま自分の心で感じることが自分にとっての幸せなのだと思う。
運営しているクリエイター

2024年9月の記事一覧

煌びやかな雨

煌びやかな雨

窓ガラスに幾千もの光の粒が映る。
夜景は風に靡かない。ただ、そこに居る。

私の髪は風によって靡いていく。顔に、横浜の風が吹きかかる。
眺めているのか、見渡しているのか、それとも、見つめているのか。

この街と、仲良くなれたようなそんな気がした。

高層階ビルの窓から零れ落ちてきたかのような、煌びやかな雨が降る。
アスファルトは雨を、私の足を、弾いていく。

私は、東京という街を思い出しながら、東

もっとみる
餅のような灯り

餅のような灯り

豆電球をつけなければ寝れない時期があった。

あのオレンジ色のぼんやりとした灯りがないと、目をぎゅっと瞑っても、大きな暗闇が私を食べようと襲いかかってくる。

電球の暗さのことなんて気にも留めなくなった頃には、こんな思い出すらも、思い出せなくなっていた。

床に寝転び、
そのまま真上を見ていると、
オレンジ色の灯りを放つソレが、
餅のように呼吸していた。

真っ暗闇の中で、
自らが燃え上がり、

もっとみる
夏は終わらない

夏は終わらない

18時30分になると、秋の訪れを感じる。

秋が来る。
でも、夏は終わらない。

スズムシが鳴く夜に、君は夏と秋のどちらを想像する?

少年が、スマホの画面を横に持ちながら歩いていく。

回り出したあの子と 僕の未来が

そんな音を垂れ流しながら。

若者は、ゆっくりと歩く。
1秒後にもまだ同じ場所にいて、まだ次の足を前に出していない。

じゃりっと、砂を踏む音が聞こえる。
ゆっくり、進むその若者

もっとみる
蒼白さ

蒼白さ

夜が明ける。
黒に、蒼さが混じりだす。

白いカーテンが揺れて、蒼色が透けて、映画のワンシーンのようにそこに立ちすくんでみる。

光を拒絶するような蒼白い空間というのは、太陽が顔を出すまでのほんの一瞬のことで、ほんの一瞬だからこそ、私は、白いソファに寝転んでみる。

こういう静けさを愛さなければいけないんだ、というような使命感が私を包み込んでいく。

こういう、蒼白く、太陽が昇るまでの一瞬の静けさ

もっとみる