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日本大学文理学部長との面談報告

先日、9月23日(水)にMoving Beyond  Hate のメンバー(今回告発した日本大学の学生も含めて)で日本大学文理学部との面談と署名の提出を行いました。

【面談までの経緯】

告発者の日本大学文理学部の学生からこの事件についての連絡があったのは夏休み真っ只中のことでした。この学生がとっていた「法学」の講義において教員が行った発言があまりにも差別的で、看過できないと感じ、私たちに連絡がきました。

これを受け、私たち Moving Beyond Hateとしてこの事件を問題としなければならないと強く感じ、告発者の学生をメンバーに加え、この件をどのように問題にしていくべきかについて話し合ったところ、署名キャンペーンを始めることにしました。9月4日に署名 Change.org 上で署名キャンペーンを始め、 9月23日現時点ですでに2700件以上の賛同が集まりました。これまで賛同してくださった方々、本当にありがとうございました。


さて、私たちが今回学部長に面談を申し込んだのは、日大の対応が長引くのではないかと危惧したからです。また、この件が学生の声を聞くことなく内部で処理され、なんら実効的な再発防止策がとられないのではないか、という大学に対する不信感がありました。一橋のアウティング事件など、過去にも大学側が差別や人権問題に対して不誠実な態度をとってきた例をあげようと思ったら、枚挙にいとまがありません。そして、日本大学に今回の被害を受けた学生の声を聞いてもらいたかったからでもあります。

そこで、私たちは文理学部に対して以下のような要請をしました。
(要求項目を含んだ内容の要請書は以下からアクセスできます。)https://movingbeyondhate.wixsite.com/mysite

【要求項目】
1、大学は差別に抗議する声明を発表すること。
声明には必ず以下の内容を含めてください。
1)菊池氏による一連の発言が明確な差別および差別煽動行為であることを認める
2)このような授業中での差別があってはならないものであると認める
3)マイノリティ学生が安心できるよう大学には差別を防止する責任があることを認める。
2、菊池氏の授業による差別被害拡大を防止すること
具体的には以下の措置を求めます。
1)直ちに菊池氏の後期の講義を停止し、菊池氏を解雇すること。
2)同教員による授業によって被害を受けた学生がいないか、緊急調査を行うこと。
3、今後同じような差別事件の再発を防止するための差別禁止ルールを、私たち Moving Beyond Hate や大学内の学生、特に留学生やマイノリティ学生との検討を通じて行っていくこと。


【調査委員会の結果】​

調査委員会の結果:
• 菊池氏は自分の講義で差別的な表現が使われていたことを認めた
(不適切な差別表現を使用、特定の集団に対する過度に一般化した思想を拡散したことを認めた)
• 菊池氏は調査委員会に対して反省の弁を伝えている
(受講生に不快な思いをさせた、と謝罪している)

委員会の提案(講師、文理学部に対して)
• 菊池氏が生徒に対して差別的な表現があったことを謝罪、差別的発言を撤回、訂正すること
• 後期の授業にあたっては差別的な発言をしないようにすること
• 文理学部が講師の後期の授業を監督・監視し、来年度の雇用について検討すること
• 文理学部、文理学部構成員がかかわる人権侵害問題にかかわる現行の規則、体制を点検し、強化すること


【これらを踏まえたうえでの、大学側の回答】

1)今週中に今回の事件を差別と認めた声明を大学側がだす。

2)菊池氏の後期の講義を続けさせ、学部側が監視しながら行う

3)今後もMoving Beyond Hate や留学生、その他マイノリティの声を取り入れながら再発防止対策をしていく。


【面談での具体的なやり取り】

(引用箇所はMBHメンバー一同が日大側の発言に対して感じた疑問、意見)

日大:同講師反省している。差別的発言しないための提案を(講師が)している。(後期にも差別が)絶対に生じないとはもちろん保証できません。だが、ほぼ生じないと確信できる話を聞きました。後期の講義を監督するから、なにか問題が生じたら文理学部がすぐ対応をとる。謝罪、反省が確かなものであるか、をもう一度試させてもらいたい。

MBH:(こういった対応だと)「もぐらたたきになるじゃないですか?」

日大:人権防止ガイドラインを周知できなかったから…

―>そもそも人権防止ガイドラインには「人種差別」「差別」について一言も書かれてない。

MBH:そもそも差別を起こさせない、そのためにもルール作り、差別させないと最初から約束させる必要がある。

日大:(ルールの話をスルー)しかし今回差別、パワハラなどに関した啓発キャンペーンが徹底されていた。予防が大事と言うが、ではそれが事前にすべてを監視する形になるのを回避しなければならない。すべての授業を監視するなんてできない。


―>「すべての授業を監視」してとMBH側から言っておらず、これは日大側が持ち出した話です。MBH側としてはこれ以上差別の被害が広がらないようにするために最初から後期の講義の停止と菊池氏の解雇を求めています。
―>そもそも、どれだけ啓発キャンペーンを行おうが、実際に差別した教員に責任を取らせなければマイノリティが安心して意義申し立てすることはできません。文理学部には200人以上の留学生が通っています。差別した教員が放置されるのならば、留学生やマイノリティは本当に安心してキャンパスに通えるのでしょうか?

日大:じゃあどうやってそういった(被害を受けたマイノリティの)声を掘り起こしていけるの?教えてほしい。実際すでに日大ではBLMに関連した記事を教員が書いたりしてるし、大学として差別問題に取り組んでいる。

MBH:教職員研修、学生向け研修、マイノリティ向けの相談窓口、日常的な差別に関する調査など、海外ではこれがあたりまえで、これから学べる。

日大:そういうのを増やしていく必要はある。でも海外は形式主義に陥ってしまっている。欧米の大学に留学して差別主義者になる人もいる… 中身あるものにしないと。

日大:(今回授業を続けさせる決定に関して)確信犯だと信じられるのなら違う対応になったと思う。でも菊池氏の対応から確信犯だとは確信しきれなかった。

―>そもそもなにを基準に確信犯じゃないと思ったのでしょうか??加害者の弁明を丸のみしているとしか思えません。これならばいくらでもごまかしがきくのではないでしょうか?

日大:制度的な処罰よりも彼をしっかりと指導していくことが重要

MBH:そもそも根本的なところに立ち戻ると、問題は菊池氏が差別的な思想をもっている確信犯かどうか、ということではなく、発言そのものが差別で、差別を煽る効果があるということ。

日大:そういう意味ではもちろん結果責任はある。だけどそれをどこまで菊池氏に負わせるか… 菊池氏は社会的制裁を受けている。彼は「震えている」し、キャリアにも影響がでる。ある程度は責任・処罰を受けている。

日大:解雇したらこの人の中に(もし仮に残っているとしたら)残っている差別心はむしろ増幅したりルサンチマンを生み出したりする可能性がある。だから徹底的に監督したうえで指導していく。

日大:解雇ということは文理学部が責任を放棄することを意味する。
(差別を防ぐために)事前検閲も考えられる。しかしすべてが監視される監視社会を望ましいとは思わない。

結局、日本大学側としては菊池氏に対してなんら処罰を与えることはなく、自分たちで「指導」していきたいとのことです。なぜ、加害者への「指導」が差別をこれ以上広めないこと、差別に対して責任をとらせることに対して優先するのか。Moving Beyond Hate一同、甚だ疑問に思いました。



【Moving Beyond Hateとして】

今回、絶対許されない差別発言が何度も講義中に行われたことを受けて、私たちは署名キャンペーンを始め、これ以上差別被害が広がらないために講義の停止と菊池氏の解雇を要求しました。後期の講義を予定通り続ければこれ以上被害が拡大しないという保証は全くありません。それどころか、差別した教員が許されていると感じたほかの人がこれに勢いづき、差別しやすくなる環境になる可能性さえあります。

人種差別撤廃条約にも規定してあるように、公的機関として大学は差別を防止する義務があります。今回の対応を見る限り、日大は差別を防止するどころか、加害者の自由を擁護していると言わざるを得ないです。

たとえ差別は絶対許されないといった趣旨の声明を日本大学が出したとしても、菊池氏に後期の講義を予定通りに行わせるという対応をすれば、全く中身のない形式的な対応で終わってしまいます。

結局、大学は今回起きた差別事件に対して責任があるにもかかわらず、それに対して様々な形で責任逃れをしていたと言えます。菊池氏が「確信犯であると確信できなかった」などと言ったり、今回の差別をより広い社会の中の差別意識の話にむりやり結び付けて、「差別は水面下にありすぎてキリがない」と言う旨の話をしたりしていました。これは一見、差別に向き合っているようにも見えますが、大学がどう責任を取るのか、という私たちが何度も投げかけた問いを無視し続けたとしか言いようがありません。

それゆえ、私たち Moving Beyond Hateはこの講義が停止され、菊池氏による差別の拡大が止まり、実効的な再発防止策が実施されるまで、引き続き声を上げていきます。

ぜひ応援してください!

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次回、この面談に参加した各メンバーの感想を載せていきます。

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