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1と2を同時に見せつけられる映画。評価の前に感想を。アーミーオブザデッド


め~め~。皆さん、Netflix映画は見ておりますでしょうか。

Netflix映画は、最近、デヴィット・フィンチャー監督による「マンク/mank」がアカデミー賞を獲得するなど、予算もさることながらその監督の豪華さも目を見張るものがあります。

さて、重厚な物語がある一方で、今回は、スーパーマンを描いた「マンオブスチール」や、スーパーヒーローがもしも実在したら、という世界を描いた「ウォッチメン」などを監督したザック・スナイダーが、作った作品「アーミーオブザデッド」について、純粋に感想を述べていきたいと思います。

ネタバレも含んではいますが、もし、2時間28分もの映画となっていますので、当記事の雰囲気をみてから、視聴するかどうかの判断材料にしていただければと思いますので、宜しくお願いします。

ザック・スナイダー監督17年ぶりのゾンビ

さて、話の中身に入る前に、本作品を見る前の事前情報について語ってみたいと思います。


他の感想・解説サイトでも語られているとは思いますが、「アーミーオブザデッド」の期待感をあおるところとしては、冒頭でも紹介したジャック・スナイダー監督が手がける、というところにこそあります。


ザック・スナイダー監督といえば、代表作は先ほどの「マンオブスティール」や「ウォッチメン」ですが、もっとも有名なものといえば、「ドーン・オブ・ザ・デッド」となることでしょう。

ジョージ・A・ロメロ監督から連綿と続くゾンビものの派生映画というのは、枚挙にいとまがありません。

しかしながら、その最初期において、「ドーン・オブ・ザ・デッド」という優れた作品として、映画をリメイクさせた実積があるのがザック・スナイダー監督なのです。

ゾンビ映画の楽しみ方


ちなみに、ゾンビ映画の楽しみ方というのがありまして、特に、後半の映画になればなるほど、ゾンビ映画の楽しむ為には、一定のリテラシーが必要であるようになってきます。

そのリテラシー自体は、たいしたものではありません。

ただ、ゾンビ映画というのは、顔を白塗りにして、ゆっくり動けばだいたいそれっぽくなるので、低予算でつくられることが多く、近年ではそのあたりをメタ的に扱った「カメラを止めるな!」なんかは、話題になったところでもあります。


粗製乱造されたゾンビ映画も、様式美のようなものができております。

嫌味な美女はだいたい死ぬとか、性行為をしたやつは死ぬとか、いわゆる、お約束というやつです。

このお約束を題材にしてつくった映画といえば「キャビンインザウッズ」なんかもありますので、この手のお約束が好きな方で見ていない方はぜひご覧頂きたいと思います。


さて、沢山つくられたおかげで様式美が整ったゾンビ映画を、いわば、ゾンビ映画の金字塔ともいえる作品「ドーンオブザデッド」を作った監督が、17年越しに作ったゾンビ映画、といわれれば、期待しないわけにはいきません。

特に、Netflixオリジナル映画となれば、スポンサーを気にする範囲も最小限ですし、予算についても潤沢にあるのは目に見えているところ。


そんな心づもりの中で、ネタバレを最小限にしつつ、感想に入っていきます。


冒頭で、映画の一作目を見せられる感じ

まず冒頭から、お約束が盛りだくさんとなっています。


ゾンビ映画の始まりというのは、だいたいにして、しょうもない理由から始まることが多いです。

危険な物質を運んでいる最中によそ見をして事故にあったり、大学生みたいなのが、うっかり死者を復活させる呪文を唱えてしまっていたり、謎のウイルスが、手を洗わなかったら蔓延してしまった、とか。

ゾンビものに限定しなくても、怪物を呼び込む関係については、だいたいこんな設定となっている、と思って頂ければと思うところです。


「アーミーオブザデッド」についても、新婚旅行でよそ見運転をしているカップルが映し出されます。この時点で、ゾンビものB級ホラー映画をみなれている人であれば、これは、くるな、と予感できるはずです。

そして、運悪く軍がエリア51的なところから、重要機密のものを運んでいるところに、たまたま、よそ見をしていて、お互いが激突。

あとは、そこからゾンビが広がってというのが、物語の前提です。

このあたりがお約束とともに鮮やかに設定が提示されるのは、さすがな手腕といったところです。


「アーミーオブザデッド」で面白いのは、そこから、ラスベガスで広がったゾンビ騒ぎの始まりから、終わりまでがオープニングのシーンで、スタッフロールとともに一気に語られて終わってしまうところです。

ゾンビ映画を少しでもみたことある人であれば、そのダイジェストで語られる映像をみるだけど、一作見終えたな、という気分に浸れてしまいます

親子が引き裂かれてみたり、犠牲を払いながらも生き残ってみたり、巨大な電動ノコギリで戦ってみたり、悲しい別れがあったりするのが、全部オープニングだけでみせられるのです。

「アーミーオブザデッド」は、そんな紆余曲折あって、ゾンビによって崩壊したラスベガスから無事脱出した後の世界を描いている、というところがわかったあたりは、最高にわくわくするところです。

ラスベガスから脱出せよ


主人公であるスコットは、ラスベガスのゾンビ騒動から脱出した、元傭兵です。

しかし、ゾンビ化した妻を娘の前で殺してしまったことがトラウマとなり、娘とも疎遠。

ハンバーガー屋で仕事をしながら生きている人物となってしまっていました。

そんなところに現れたのが、真田広之演じるブライ・タナカ・

「アーミーオブザデッド」は、ブライ・タナカによって、ラスベガスのカジノホテルにある金庫の中に入っている金を強奪する、ということにあります。


元傭兵の男が、仲間を募って、ゾンビ軍団のいるラスベガスから、お金を奪取できるのか、というところが表面的な内容となっています。


「これからも、ハンバーガーを焼き続けるのか」


ゾンビパニックを生き抜いた人間の末路が描かれているという設定も、なかなかないところです。

悩みつつも、仲間を集めて、ラスベガスに行こうとしていきますが、集め方も面白いです。

仲間を集める


スコットが集めるメンバーは、かつて、一緒にゾンビを倒しまくったメンバーです。


無事お金を奪取した際には、5000万ドルの報酬が与えられ、それを、3人で1500万ドルずつ分けることにしています。


ですが、その後のメンバーの集め方が面白く、あとになればなるほど、報酬が安くなっていきます

脱出用のヘリコプターを操縦するピーターズは、「200万ドル」でどうだ、といって二つ返事。

重要なところだからいいのですが、後の方になってくると「20万ドル」で、となり、一番最後には「2万ドル払うっていっただろ」などと、命をかけた作戦なのにもかかわらず、安くなっていきます

こんなところでも、下請けと元請けの関係がでていて、世の中の切なさがわかるところです。

ちなみに、あまり、脚本的には意味がないですが、主人公たちの受取額5000万ドルも、まぁ、そういう意味では安いかもな、という金額を他の人間が手に入れるということになっているのですが、命をかけるには、かなり少ない金額だよなぁ、と思ってしまうところです。


核攻撃でラスベガスの町が殲滅される前に、果たして、主人公たちは、現金を手に入れて無事脱出することができるのか、というところが、物語の始まる際の物語の収束点となっていきます。


隔離地区の人々


いまいちなぜラスベガスの町の外側にいる人たちが差別的な扱いを受けているのかはわかりませんが、現代の騒動の中にあっては、なんとなく察しがつくところではないでしょうか。


ゾンビ騒ぎがあった後、一定の人々は隔離地区に入れられて、難民のような生活を強いられています。

そこでは、体温をはかられてゾンビ化の兆しがないかを確認され、警備の人間からは、セクハラまがいのことが日常茶飯事に行われているような雰囲気が示されます。

このあたりは、映画「第9地区」のような、エイリアンが難民できてしまった時の話などを思い出してしまうところです。

難民たちが貧困などにあえぐ中、主人公であるスコットの娘が、お世話をしている親子の母親が、ラスベガスに侵入してしまう、というサブイベントも発生しているところです。


ラスベガスでコインなどを手に入れるとはいっていますが、火事場泥棒で手に入れられる金額などそれほど多くはないと思うので、このあたりから、脚本的な作り方に無理がみえる気がしますが、それは気にしないでもいいところです。

そんな、差別的な問題も匂わせつつ、主人公であるスコットはラスベガスへの侵入をはかります。

しかし、万全な人選に思われていたメンバーですが、娘を守るために5000万ドルのうち1500万ドルを渡そうと思っていたのに、その娘が、色々なことをいってついてきてしまうことになるのです。


完璧に思われる計画が、始まる前に破綻の兆しがみえる、というあたりも、心がざわついて、映画が面白くなりそうな予感がするところです。

今回のゾンビ


今まで述べたように、オープニングでまるで映画の一作分を一気に見終えた気分を味わい、且つ、ゾンビ映画を生き抜いた人たちのその後と、一攫千金を目指して、再びゾンビたちのいる町にいく、ところまでは、本当に胸が熱くなるところです。


「アーミーオブザデッド」というタイトルなだけあって、主人公たちは、一応傭兵あがりであったりして、アーミー(軍隊)といういってもさしつかえないかと思います。

多くのゾンビものの場合、だいたいが一般人や、それに毛が生えたような人物が、状況に巻き込まれながらも、生き抜く姿が描かれることが多い中、バリバリの元傭兵が主人公になったら、ゾンビ世界を生き抜くことができるのか、という点も、期待が膨らむところです。


ザック・スナイダー監督のゾンビ映画における偉業の一つとしては、「ドーンオブザデッド」において、のろのろ動くだけだったゾンビが、走る、というところに驚きが隠せないところでした。

近年では、走るのは当たり前で、合体したり、巨大だったりと、様々なゾンビがでているところです。


「アーミーオブザデッド」では、知性のもたないゾンビが、日光にあたって干からびている、という描写こそありますが、知性のあるゾンビ、というのがでてくるのが、ポイントです。

ゾンビたちもまた、王国を気づき、軍隊のようなゾンビと戦う、というのが今回のタイトルでもある「アーミーオブザデッド」ということなのだと思います。

統率がとれてしまったゾンビは、たんなる未開の好戦的な原住民にすぎないのではないか、というところが大きいところから、期待するイメージとはずれていくところです。

ネタバレ含む感想


さて、ここからはネタバレをして感想を述べていきますので、実に面白そうだ、と思った方については、作品をみてから戻ってきていただければと思います。

本作品の期待度があがっていくところは、ゾンビ化したホワイトタイガーがでてくるあたりが、最高潮といえます。

「そんなの、ありかよ」

と予告でもでてきますが、こんなゾンビタイガーがでてきて、どうやって対処するのか。

鍵開け師のいかにもギークボーイな人が、釘バットで戦おうとする姿は、予告編と、回想シーンだけで、これは何かがありそうだ、と思わせるのに十分な雰囲気を醸し出してます。


ここからは、さっくりと感想を述べていきます。


セクハラ警官が突然生贄になったあたりから、物語の緊張感は一段下がります。

ゾンビ映画の面白くも恐ろしいところは、ゾンビというものが一体どういう存在かがわからないところです。

突然襲ってくる。

仲間割れをすると食われる。

いわゆるお約束的な死に方があるのですが、今回は、知性のあるゾンビです。

ラスベガスに入ったらすぐに、生贄をささげると、ある程度見逃してもらえる、という説明がはいります。

もはや、それはゾンビではないな、というところ。

そこから、多少仲間の中で疑心暗鬼が起こりそうになったりしながらも、無事金庫を開けますが、ゾンビ軍団が襲ってきて、次々と仲間たちが死んでいく、というよくあるアドベンチャー的な話になっていきます。

登場人物の心の内が明かされたり、ギークボーイとイケイケの黒人キャラクターが友情めいたものをきずいてみたり、チャラいユーチューバー的な男が男気をみせてみたりと、なんとなく、わかりそうな内容が描かれます。

これはこれで、見ごたえがあって面白いです。


ゾンビ映画にかぎらず、アクション映画のありそうなシチュエーションが多様されており、壊れて煙がでているヘリコプターを尻目に「順調よ」といっているところがあって、どうなるんだろうか、と思わされたりしますし、眠っている大量のゾンビの間を通っているうちに、ゾンビとの戦いになってしまったり。

どこかでみたことがありそうな場面があって、ジョン・カーペンター監督的な脱出っぽいのがあったりしながら、親子の絆っぽいものも描かれます。


最後には、生き残ったと思っていた人物が、実は、ということもあり、なんだったらつぎの作品への伏線も貼られていたりするあたりも、実に、よくありがちな映画の内容と結末、となっています。


決して、面白くないわけではないのですが、ザック・スナイダー監督がNetflixオリジナルで、17年ぶりのゾンビ映画という点と、物語の初期に描かれる、今までにない雰囲気のゾンビ映画の出だしにわくわくしていた点から考えると、意外と普通な結末におさまっていたのは、少し残念なところです。

もちろん、決して面白くないわけではありませんので、一定の満足を得ることはできると思います。

気になる点


ただし、2時間半という長丁場なわりには、警察官がかまれるシーンが長々と入って伏線になりそうにも関わらず、あっさりと倒されてしまったり、意味深なセリフが多い割には、あまり活用されていなかったり、親子の葛藤も、主人公が思っていたような内容よりも、ずっと簡単なもので拍子抜けしてみたりと、物語全体のトーンや伏線と合致していないところがみられるので、ゾンビ映画をさっくりと楽しみたいという分はいいかと思います。

ただし、ザック・シュナイダー監督の、あのゾンビ映画、と思うと、少しイメージとずれると思いますので、その点だけは、お気を付けいただければと思います。

あと、ゾンビ映画といえば、ゾンビが何の象徴として描かれているのか、ということも気にするべき点となっています。

ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」であれば、誰が共産党であるか、ということがわからないという恐怖を描いたものでしたし、ザック・スナイダー監督「ドーンオブザデッド」においては、週末は用もないのにショッピングモールにいる人々をゾンビとしてみる、という社会的な不安や恐怖の象徴とすることで、よりゾンビというものが恐怖の対象になる点も、ゾンビ映画の楽しみ方といえるでしょう。


以上、1と2を同時に見せつけられる映画。評価の前に感想を。アーミーオブザデッドでした!


それでは、次回もめーめ~。

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