家族の問題が具現化する。呪いの箱。映画「ポゼッション(2013)」
メ~メ~。
ホラー映画というのは、社会的な問題であったり、人間の根本的な恐怖なんかを、別のカタチで描くことで面白さをだしています。
自分の人生とまったく関係のないモンスターがでてきたとしても、なかなか恐怖しないものですが、そこに人間の誰しもが感じる恐怖と結びつくことで、ホラーはまさにホラーとなっていくのです。
さて、映画「ポゼッション」は、ホラーと家族の問題などを結び付けつつ、現実に存在する呪いの箱をモチーフにした作品となっています。
実際にあった出来事をもとに作成されている、という触れ込みの中でみると、よりぞっとするところもありますが、まずは、どのような面白さが隠されているのかを簡単に感想を交えて書いていきたいと思います。
思春期の娘
映画「ポゼッション」は、表面的な話だけ聞くとたいした物語ではありません。
ガレージセールで売られていたアンティークの箱、それを買った次女の様子がおかしくなり、かかわった人間が死んでいき、最後には、エクソシストの力を借りて、娘に取りついた悪魔を退治する、というのが大まかな流れとなっています。
呪いの〇〇というのが原因となって、それを回復する、といういたって単純なプロットです。
ですが、これはあくまで骨組みとなっておりまして、よくできたホラー映画であると、やはり、本質的な恐怖や問題と繋がっているように作られていることで、より作品に深みがでてくるところです。
まず、主人公であるクライドは、妻と離婚したばかりの男です。
週末には、二人の娘と会うことを楽しみにしていますが、なかなか前妻への未練も捨てきれない感じです。
長女のほうは両親の離婚については割り切っています。
ただ、次女であるエミリーは、姉と比べておとなしい性格であり、両親の離婚から始まる環境の変化にストレスを感じていることがわかります。
関連映画
映画「ポゼッション」を語る上で、他のホラー映画もちょこちょこと紹介していきたいと思います。
映画「エスター」は、孤児院から連れてきた子供が異常行動を起こす、という映画となっています。
最終的などんでん返しは別として、愛情不足に陥っている子供が、どんどん異常になって、まわりもその変化に対して対応しきれていない、っていう状況が描かれます。
また、映画「ポゼッション」をみたらすぐに思い出す映画として「エクソシスト」があるのではないでしょうか。
憑依ものの映画としての金字塔であり、ホラー系を語るにあたっては避けては通れない映画でしょう。
こちらは、社会情勢的に、若者が大人のいうことを聞かなくなってきたという時代背景がある中で、女の子が、汚い言葉を吐き、反抗的になっていくことへの恐怖が通底にある作品となっています。
公開当時は、身体の一部を傷つけるような行いをする姿に、気絶する観客もいたという話です。
実際に憑依されている、されていないは別として、幽霊やモンスターが存在しない世界という前提にたって、憑依された人物をみたとき、なんらかの精神疾患を疑ってしまうのはやむえないことでしょう。
憑依ものは、まず、まわりの人間が心霊現象が発生してしまっている、という事実をどこで理解するか、ということも、観客である我々がハラハラさせられるポイントだったりします。
主人公の問題
主人公の問題というのは、明らかだったりします。
彼は、バスケットボールのコーチをしており、実力もある為非常に仕事に熱心です。
仕事に熱心なのはいいことですが、それが原因で家族を蔑ろにしてしまい、妻からは「帰ってこない夫より、いつも一緒にいてくれる人のほうがいい」ということで、離婚の原因の一つとなってしまっています。
クライドという男からすれば、悪魔の箱を通じて、仕事第一の人間から、家族を第一にする男に変化(成長)した物語としてみることができるのです。
演出の妙
さて、製作にはサム・ライミが関わっている、ということも本作品の気になる点の一つでしょう。
サム・ライミといえば「死霊のはらわた」を監督し、ホラー映画界にこの人ありとうたわれる人物であると同時に、「スパイダーマン」シリーズでも有名な監督です。
そんなサム・ライミが関わっているホラー映画となれば、期待も高まるというものです。
監督はオーレ・ボールネダルであり、「ポゼッション」以外では「ナイトウォッチ」という、死体安置所でバイトをする大学生を主人公にしたサスペンス映画をつくっていたりします。
「ポゼッション」は、いわゆるよくあるホラー映画ではありますが、なかなか実態を見せない悪魔の演出は見事です。
物語の冒頭で、前の持ち主の老婆がひどい目に合うのですが、箱がどういう存在なのか。
次女であるエミリーが、自然と箱に惹かれていってしまう様などが、丁寧に描かれています。
悪魔が力を発揮したときの、ぶっ飛び具合なども見どころです。
閑話休題
呪いの箱が所有者を変えて、という物語でいえば、「ジュマンジ」を思い出してしまうのではないでしょうか。
ロビン・ウィリアムズ出演の名作もあれば、近年では、ロック様こと、ドゥエイン・ジョンソンが出演する「ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル」なんかも、面白いところでした。
特に、ロビン・ウィリアムズが出演するオリジナルでは、呪いのボードゲームが過去で捨てられ、現代で掘り当てられてしまうところなど、禍々しいものに惹かれてしまうキャラクターと、どのようにして発見されてしまうのかという流れも楽しくみてしまうところです。
ガレージセールといえば、海外では比較的メジャーなことらしいですが、日本において、庭先で不用品を売るっていうのは文化としてはしっくりこないところではないでしょうか。
曰くがありげな箱とか宝石とかそういうものを、買ってはいけない、という警告にも見えてしまうところが、ホラー映画っぽいてよいところです。
悪魔との戦い方
映画「エクソシスト」でもそうですが、やはり、悪魔との対決というのは憑依もののホラー映画において見逃せないポイントとなっています。
「エクソシスト」だと顕著ですが、信仰心というのが試されます。
悪魔というのは、そもそもが、人間などをそそのかしていくものでありまして、最終的には、人間の心によって戦うというのところがポイントとなっています。
平たくいいますと、誰かを信じているとして(この場合は神ですね)、誰かがそれを疑わせるようなことを言ったりしたりします。そこで、信仰対象への気持ちがゆらげば、悪魔の勝利。そうでなければ、悪魔はあきらめることになります。
まぁ、正確なところは間違っているかもしれませんが、悪魔という概念との精神対決だと思ってもらえれば、戦闘の良し悪しの判断がつけやすくなるのではないでしょうか。
ちなみに、エクソシストにおいては、十字架がキリスト教の悪魔祓いにとってはどのような存在であるか、といったところまで考えさせられる作品となっていますので、万が一「ポゼッション」をみて、「エクソシスト」をみていない方がいれば、ぜひ見てみてもらいたいところです。
ラビの存在
当然、主人公では悪魔と戦うだけの力はありません。
一応、寝ている娘の枕元で、聖書の一説を唱えると悪魔がめちゃくちゃ怒り出します。
ただし、ほかの家族からみれば、悪魔の存在すらわかっていないので、元父親が娘のところにきて、部屋をめちゃくちゃにしたようにしかみえないところが、ホラー映画的面白さといえるところです。
自分ではかなわないと思った主人公は、ユダヤ教のラビに助けを求めます。
キリスト教における司教みたいな人を、ユダヤ教ではラビというぐらいで覚えておいてもらえればいいかと思います。
ただ、その箱をみたユダヤ教の人々は、さっさといなくなっていきます。
自分たちが憑依されるかもしれないから、という理由で断ってくるのですが、それも仕方のないこととは思います。
ただ、ラビの息子が力を貸してくれて、いざ悪魔との対決となるところは、胸の熱くなる演出です。
悪魔との対決
箱の中を見た時に、指輪や、歯、鳥の亡骸などが入っていて、よくわからないけれど気持ち悪いな、と思った人も多いのではないでしょうか。
しかし、いざ対決する段階となると、これが、家族や一族の絆を高めるためのものだったことがわかるのは面白いところでした。
髪の毛を入れたり、家族の写真を入れたりと、自分の大切にしているものをいれる、という風に説明されます。
信仰心も大事でしょうが、「ポゼッション」の場合は家族の絆によって、悪魔を再び箱に封じ込めた、というところで、いい感じに物語が終了に向かっていきます。
物語のラストそのものについては、賛否があるでしょうし、これが、実際の出来事に基づいているという以上、ぞっとするラストとなるところではありますが、世界にはたしかに呪いの箱というのが存在しますので、最後にそれだけ簡単に紹介して終わりたいと思います。
ディビュークの箱
ディビュークの箱というものが存在します。
「ポゼッション」は、まさにこの箱をモチーフとして作られたものとなっており、実際の箱は、オークションで売られてみたり、除霊をされてみたりしながら、博物館に飾られているそうです。
元はポーランド系ユダヤ人の女性の持ち物であったとされる箱であり、所有者に次々と異変をもたらしたものであり、現代においても、呪いというものが決して、創作の中の出来事だけではないことを示唆しているものとなっています。
さて、ホラー映画というのは、その恐怖の源が現実と繋がっているからこそ恐ろしいものとなっていますが、「ポゼッション」では、家族の離婚問題や、思春期の子供たちへの影響、実際に存在する悪魔の箱や、他者に理解されない恐怖など、見てみぬふりのできない問題を、悪魔の箱を通じて描いた佳作となっています。
夏の暑いときに、たまに見てみるのも面白かと思いますので、たまには恐怖の蓋を開けてみてはいかがでしょうか。
以上、家族の問題が具現化する。呪いの箱。映画「ポゼッション(2013)」でした!
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