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人類はブラックな笑いで消えていく。ネタバレあり「ドントルックアップ」感想
め~め~。
人間というのは、とんでもない現実を目の前にすると、ついつい、現実逃避したくなる生き物だったりします。
特に、それが、自分の認識の範囲を超えたものだったりすると、その思いはますます強くなっていき、人類が協力すれば解決できるような問題も、ついついおろそかになってしまったりするのもやむを得ないところではないでしょうか。
さて、Netflexで配信されている「ドントルックアップ」は、まさにそんな映画となっています。
地球に巨大な彗星が衝突するとなったとき、今の人類はどういう反応をするのだろうか、そして、その中で人々は終末をどのように過ごすのか、ということがブラックコメディで描かれた作品となっています。
レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンスをメインにしつつ、わきを固める配役ですら名女優メリル・ストリープ以下大変豪華なキャストでつくられる作品で、背筋を寒くする笑いを感じてみていただきたいと思います。
ある日の大発見
本作の大まかなあらすじは、既に書きました通り、地球が彗星の衝突によって突然終わるとなったときに、人々がどのようにふるまうのかというところが、現代的に描かれているのが特徴となっています。
彗星をはじめに見つけるのは、ジェニファー・ローレンス演じるケイトです。
ジェニファー・ローレンスといえば、「世界で一つのプレイブック」や、「ウィンターボーン」といった作品で知名度を上げた人物であり、様々なジャンルの作品に出演している実力派です。
そんなジェニファー・ローレンス演じるケイトは、田舎の大学の天文学を学んでいる大学院生となっています。
本作品は、田舎の大学で、死んだ惑星(消滅してガス状になってしまったようなものと考えてください)を観察していたケイトと、同じく田舎の大学の教授だったレオナルド・ディカプリオ演じるミンディ博士を中心に描かれています。
ミンディ博士を中心にみますと、田舎の大学教授が、人類が崩壊する彗星について人類に危機を伝えようとしたら、マスコミに持ち上げられてしまって、気づいたら、本当の目的よりも、人生を踏み外していって、最後には、空ではなく、空の見えない家の中で、家族と過ごすことに生きがいを見出したという内容となっています。
本作品は、本当に皮肉にあふれた作品となっておりまして、二人が地球が滅亡するという事実を伝える過程でどのような反応が予想されるのか、というところがポイントとなっています。
地球が滅亡する日
地球が滅亡する云々という作品でいえば、「ディープ・インパクト」であったり、「アルマゲドン」であったりと、かなりのビックバジェット映画を思い出すのではないでしょうか。
「ドントルックアップ」は、人類が協力して地球を救う、なんていう勇ましいものではなく、どちらかというと、スタンリー・キューブリック監督「博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか 」のような、人類崩壊をブラックに描いた内容となっています。
そのため、ミンディ博士とケイトが、大統領にそのことを報告しにいっても、なかなか取り合ってもらえません。
誕生日のほうを優先され、ホワイトハウスで何時間も過ごす始末。
協力的にみえた軍の少将も、無料でおいてあるスナックと水を、「10ドル取られた」といって、要求してきます。
本作品においては、この手のつっこみたくなるような行動が度々発生します。
「中間選挙が近いから、静観するわ」
ようやく、大統領に話ができたと思ったら、メリル・ストリープ演じる大統領は、全然興味がありません。
レオナルド・ディカプリオ演じるミンディ博士も、初期の段階ではオドオドとしている上、要領よく物事伝えることができなかったりします。
真実を伝えて、相手がその事実を理解するというのが、今の時代にどれほど難しいことなのかがわかってきます。
現実は知りたくない
「みんな死ぬのよ!!」
お昼の楽しい番組になんとか出演することができたミンディと、ケイトでしたが、彗星が衝突するという事実を、なんとか面白おかしくしようとしてしまう司会者や、そんな事実よりも、有名歌手の恋愛騒動のほうに気を取られてしまって、無かったことみたいにされてしまったことで、イライラを募らせたケイトが叫びます。
ただ、なんとなく感覚としてわかるところですが、どんなに正しい事実であっても、今の時代は、丁寧に、冷静に、伝えないと簡単に足元をすくわれてしまいます。
怒ったケイトは、あっという間に、ネットミームになってしまい、ちょうど気持ち悪く見える瞬間の映像を切り取られて、遊びの道具にされてしまいます。
今の時代は、ちょっとしたニュースの映像や事件なども、簡単にネットミームとなって簡単にあしらわれてしまう時代を、よく現しています。
たんに、緊張して何もいえないでいたミンディ博士は、逆に、可愛いと言われて、人気になってしまいます。
そのうち、妻子ある身にも関わらず、ケイト・ブランシェット演じるニュースキャスターと不適切な関係になってしまったりと、どんどんずれていってしまいます。
彗星が迫ってきているんだぞ、というのにどうも緊張感に欠けるあたりのブラックコメディ具合が、絶妙だったりします。
ちなみに、危機感を訴えようとしているケイトが、彗星衝突までの時間を、ダイエットアプリで管理しているところなども、気の抜けた笑いがでてくるところです。
団結できない人たち
「ドント・ルックアップ!」
空を見上げて彗星が来るという事実を受け止めろ、という人たちと、彗星なんて落ちてこない、と言い張る人たちがでてきます。
視聴者である我々は、ミンディ博士寄りになっているので、彗星がおちてくる事実を知っているわけですが、そんなことに対して実感が持てない人や、そんなことがあると困る人たちの中で、争いが起きてきます。
その前には、アメリカ大統領の主導のもと、彗星を爆発させるためのプロジェクトが動いていました。
しかも、奇跡的にうまくいきそうになるのですが、とある理由で、中止になります。
利益最優先と、エーアイ。
BASHという企業が本作では重要な役割と、強烈な皮肉をだしてきます。
どう見ても、アップルであるとか、アマゾンであるとかのいわゆるGAFA的なCEOが出てきます。
実は、我々が思っているよりもはるかにAIによる判断というのは的確になってきておりまして、今我々が生きている現代においてすら、恋人や家族よりも、下手をすればAIのほうが、その人物のことがよくわかってしまっていることは、ご存じではないでしょうか。
いわゆるビックデータとAIによる演算は、すでに我々の意識のさらなる先にいこうとしてしまっているのです。
「ドントルックアップ」では、そんな、AIによって死に方までわかってしまっている未来というところも皮肉が聞いています。
「ブロンテックに食われて死ぬ。意味はわからないがね」
また、利益優先の為に、彗星の中にレアアースがあることがわかって、人類の命よりも、利益を優先したり、人々の命が経済と簡単に天秤にかけられるなど、非常にありそうな感じがたまらないところです。
あなたは見上げるか。
本作品は、ブラックコメディという性質もあって、かなりみる人を選ぶ作品となっています。
先ほども紹介した「ディープインパクト」のような、人類による協力や、崩壊後の世界でもたくましく生きていく、なんていう希望はありません。
人類は、結局団結できないままに滅亡して、自分のことしか考えられない愚かな存在としかみえません。
最後に、家族や大切な人と死の瞬間まで一緒にいたい、という温かい展開もありはしますが、救いのなさがブラックコメディとなっています。
一番の皮肉は、今の人類であれば十分に回避できたはずだったにも関わらず、しょうもない理由のせいで、人類が滅亡してしまうというところでしょうか。
笑えてしまうのだけれど、笑えないというところが「ドントルックアップ」という映画となっておりますので、ブラックな笑いに飢えている人はいかがでしょうか。
以上、人類はブラックな笑いで消えていく。ネタバレあり「ドントルックアップ」感想でした!
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