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PUIPUIでストップモーションが気になった方へ。コララインとボタンの魔女

メ~メ~。

ストップモーションアニメは、「PUIPUI モルカー」によって、一気に興味が出てきた人も多いかと思います。

里見朝希監督による「PUIPUI モルカー」は、フェルト生地でつくられたモルモット型の車が活躍する世界が特徴の作品となっています。

少しずつ実際の人形等を動かして一コマずつ撮影していく手法であるストップモーションアニメは、とにかく手間と時間がかかります。

12話であるモルカーもまた、1年以上の時間をかけてつくられていることからも、その大変さがわかるというものです。

「コララインとボタンの魔女」は、そんな里見監督が影響を受け、ストップモーションアニメの分野へと踏み入れるきっかけとなった作品となっています。

CG技術が進んだ現代では、少し物足りないと感じる部分もあるかもしれませんが、里見監督の作品への理解を深めたい、という人の為に、ごくごく簡単な感想&解説を行っていきたいと思います。

どんな物語

「コララインとボタンの魔女」は、ヒューゴー賞も受賞した2002年出版の児童文学となっています。

児童文学の典型的なフォーマットを踏襲しつつ、目がボタンになっている魔女と、ピンクパレスに住む住人達とコララインとの交流など、非常にスタンダードな内容となっています。


いわゆる、行きて帰りし物語の典型ともいえるフォーマットです。

行きて帰りし物語というのは、ある程度有名な作品であれば、だいたいその流れを汲んでおりまして、主に、ファンタジーの世界にいって、帰ってくることで主人公が成長したり、変化があったりする、というものになっています。

このあたりについては、「千の顔を持つ英雄」といった書籍などで細かく書かれており、共通項を上げればキリがありませんので詳しく説明しません。

いずれにしても、「コララインとボタンの魔女」が正しく、その手のフォーマットを踏んでいることは異論のないところです。


ピンクパレスと呼ばれるアパートに引っ越ししてきたコラライン。

彼女は、不健康そうで、あまり構ってくれない父親と、料理が苦手で、園芸ライターなのに土をいじるのが嫌いな母親との間で、不満を持っている女の子です。


スタジオジブリ「千と千尋の神隠し」でも、主人公の千尋は、見知らぬ土地に引っ越しをして、拗ねたような態度をとっています。

そんな主人公が、神様の慰留地で働いて成長し、現代に戻るという点で、こちらも同様のフォーマットとなっています。


制作から完成まで7年


さて、物語的なスタンダードさはいいとして、本作品は、ストップモーションアニメによってつくられた作品であることを忘れてはいけません。


一見、CGにみえるところですが、一部を除いて基本的には実際の人形やセットを動かしてつくっている、という点が一番の見どころとなっています。


「PUI PUIモルカー」の里見監督が、3Dへの転向を決意したというほどの作品ですので、いかに細かいところまで作られているか、という点も含めてごらんいただきたいところです。


冒頭の、コララインに似せた人形にリメイクされているシーンなどは、その動きや、そののちに発生する物語を暗示させるようで、非常にわくわくさせられるところです。

実際の作業は、2年半ぐらいだそうですが、いずれにしても、高クオリティのストップモーションアニメがいかに時間を必要とするかは、よくわかるところです。

ちなみに、どんなところにCGをつかっているかといいますと、空中で固定したりするときの針金であるとか、人形を半透明にみせたりとか、必要最低限の演出にとどまっているとのことで、こだわりというのは大変なものとなっています。


魔女は不満に付け込む


本作品は、ダークファンタジーホラーを呼ばれるジャンルに属します。

いわゆるファンタジーといえば、「ロードオブザリング」に代表されるような世界でしょうし、「ナルニア国物語」なども有名な作品となっていますが、ダークファンタジーとは異なります。

どちらかというと、ギレルム・デルトロ「パンズ・ラビリンス」のほうが、ダークファンタジー的テイストが強い作品ですね。


「コララインとボタンの魔女」に戻りますが、当作品は11歳の少女が、両親に対して不満を抱いていることがすぐにわかるようになっています。

決して愛情がないわけではないのですが、自分の思った通りにいかないという当たり前の事柄に対して、コララインは不満を高めているのです。

そんな中、家の中にある小さな扉をくぐると、理想的な両親や友人がいて、自分を優しく出迎えてくれます。

ただし、その扉の向こうの世界では、人の目はボタンになっています。

違和感たっぷりではあるものの、自分のことを理解し、おいしいご飯をつくってくれる理想的な両親と、自分に対して冷たく(感じる)両親との間で、揺れ動きます。

ただし、この手の話には当然表と裏がありまして、理想的な両親のいる世界で暮らすためには、自分の目をボタンにしなければならない、というとんでもない通過儀礼が発生してしまうのです。

コララインは逃げようとするのですが、ゲーム好きな魔女をうまくのせつつ、なんとか困難を切り抜けようとする、というのが大きな流れとなっています。


キャラクターたち


話の流れ自体はよくある話ですが、でてくるキャラクターが魅力の作品となっています。

愛犬が死んだらはく製にする双子の魔法使いらしき占い師の老婆。

ネズミを操る老人。

コララインは、向こう側の世界を見て理想的なものをみたりはするのですが、現実の世界において、多くの人たちを見たり、助けてもらったりする中で、自分自身を成長させていきます。

コララインがもともとどこにいたのかはわかりませんが、本来出会うはずのなかった人たちと触れ合う中で、価値観を多様にしていく、という普遍的な成長の仕方をみせてくれています。

説教臭い話をすることなく、一人の少女の考え方が変わっていく姿と、それによって、魔女と対決できるようになっていく、というところを踏まえて、児童文学としての評価が高いこともうなずける作品となっています。


本作品は、ストップモーションアニメによる長編映画ということだけでも非常に注目するべきところではあります。

あまりに出来がいいので、CGですべてつくっているように思ってしまいがちですが、人間による手作業によって作られているというところを考えつつみると、いかに作りこまれているかがわかる作品となっています。

1コマ撮影するだけでも時間がかかるわけですから、その背景も含めて非常に作りこまれています。

以上、PUIPUIでストップモーションが気になった方へ。コララインとボタンの魔女でした!


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