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映画感想文「ドミノ」 うーむ🤔嘘のつき方が正直な作品

映画館で現在公開中の「ドミノ」を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

最初にこの記事のトーンをお知らせすると、タイトルにあるように「うーむ…」という感じです。
※ネタバレなしで感想を書くのが難しい作品なので、ネタバレあり。
これから観に行くよって方は退避してくださいませ。

2023年 アメリカ
監督 ロバート・ロドリゲス

刑事:ダニー・ロークは、最愛の娘の行方不明に、心身のバランスを崩しているが、正気を保つために仕事に復帰。
そんな彼のもとに、銀行強盗の予告のタレコミが入る。現場で不可解な動きをする容疑者が、娘の行方に関与している手がかりを見つけたロークは、ふたりの警官を伴って屋上まで男を追い詰めるも、警官は突然暗示をかけられたようになってお互いを撃ち殺し、男は屋上から飛び降り姿を消す。
決して捕まえられない男を追い、現実と見紛う〈世界〉に踏み込み追い詰められていくロークはやがて─。

公式サイトより


はい、ロバート・ロドリゲス監督作品。
ロドリゲスさんはタランティーノさんとよく一緒に作品をつくられているので名前は知っていたのだけど、監督作をちゃんと観るのは初めてかも。

予告編の映像だったり上記のあらすじにひかれながら、一方で(失礼な言い方だけど)何だか微妙な予感もしていた今作。
どっちなんだとなかなか見極めがつかなかったのだけど、自分の目で確かめねばと思い劇場に足を運びました。

結論は後者でした。。。

今作はいわゆる超能力者たちの駆け引きを描いています。
能力としては、相手を意のままに操ることができる、相手の見ている世界(簡単にいうと幻です)を自由に構築することができる。
つまり、今自分が生きている世界は超能力者が作ったもの、ということ。

ここを読むと「マトリックス」や「インセプション」と似た印象を持つ方もいるでしょう。
ただこの作品がその2作のレベルまで達してないのは、その虚構世界がただの設定に終わっていること。
「マトリックス」は実は生きている世界がデジタルなんだという価値観の反転があったし、「インセプション」は夢の世界に入っていくことができ、なおかつ夢の出来事が現実にも影響を与えるという、アイデアをテーマまで昇華させ最後まで貫き通せる力強い作家性がありました。

でも今作の虚構世界はラスボス超能力者が主人公から秘密を探り出すために現実っぽい設定をこしらえましたっていうだけ。新しい世界観はなし。

むしろ、中盤でそのネタばらしがあって、実は主人公が素舞台(美術や背景がない状態)でシナリオ通り動いていたなんてところは、映画製作を題材にした映画っぽい。
ロドリゲスさんの映画(づくり)愛みたいなのは感じたのだけど、映画内映画って自分はレトロな印象を受けました。

今作品のジャンルをいうと、ミステリーでいうところの叙述トリックのような、叙述SFといったところ(超能力者が出てきて、幻想世界を作りだすため)。
叙述ミステリーはミステリーの立派な一分野だけど、この叙述SFに「うーむ」と疑問を持ってしまったのは、その設定を生かしきれてないから。

中盤でそのネタばらしをした時に、ボス超能力者が「これは12回目」だという。
つまり12回シナリオを試してきたけど主人公が口を割らない、ってことなんだけど、13回目でまた同じシーンから始める。なぜ?
口を割らないのなら違うシナリオにすればいいのでは?
もしくはスタートは同じだとしても、その次の展開は違うものにしないといけないのでは?
さらに「シナリオ」という単語を出したのなら、ここはいっそボス超能力者を監督に見立てて、シナリオライターを10人ぐらい用意して、次はこのシナリオで生きます!ぐらい振り切ってほしかった。
「アクション!」ぐらい言ってほしかった。
もっと映画内映画にしちゃえば良かったのに。

もうそのネタばらしからは何でもアリなのだから、何度違うシナリオを試しても妻(主人公を助けるパートナー役)を無意識的にどうしても殺せない、っていう描写が数回あった方が切なく盛り上がるし、なんなら主人公は自分を男だと思っていたけど実は女性でもいい。妻が実は夫でもいい。
ここまでやれば「物語におけるジェンダー論」的にも面白い話になると思う。

でも今作は終始男性ノワール的な雰囲気で進み、中盤でネタバラシしてるからオチにも驚きがない。
ラストで映画的カタルシスが感じられない。敵同士で銃撃つだけじゃん。

さらに、これは邦題の問題であってロドリゲスさんは関係ないのだけど、タイトルになっているドミノが印象的に描かれていない。
ただドミノが全くストーリーに関係ないかというと、そうでもない。
ドミノをもっと印象付けられる工夫ができるのでは。
例えば、無限に続くドミノをボス超能力者が倒してるつもりだったのが、最後主人公がやり返すシーンでドミノが途切れて、逆に主人公側からのドミノが水面下で倒れていた、なんてシーンはすぐにでも思いつく。
映画なのだから映像で切り返してほしかったです。

ロドリゲスさんはきっと自分の感性を大事にしている方なのだと思う。
ただ映画という虚構の世界の作り方、言い替えれば嘘のつきかたが正直すぎる。
手札を全部見せて丁寧に説明してくれる。
そして披露したものが大したことじゃない。。。
観客に「よく分からないけど、すごいもん見たな」と思わせる幻惑力が欲しかった。
映画が持ってる「嘘の力」をゴリゴリに追求してほしかったです。
だって「マトリックス」や「インセプション」は「嘘の力」が隅々まで行き渡ってたもんね。

総合評価 ☆☆+☆半分(☆5つが最高)

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