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映画感想文「かがみの孤城」 物語が傷を癒す

配信で「かがみの孤城」を鑑賞しました。
夏だから何なのかアニメーションが無性に観たくなって、前回の「AKIRA」に続いてアニメ作品を選びました。
感想を書いてみようと思います。

2022年 日本
監督 原恵一
中学生のこころは学校に居場所をなくし、部屋に閉じこもる日々を送っていた。そんなある日、部屋の鏡が突如として光を放ち始める。鏡の中に吸い込まれるように入っていくと、そこにはおとぎ話に出てくる城のような建物と、6人の見知らぬ中学生がいた。そこへ狼のお面をかぶった少女「オオカミさま」が姿を現し、ここにいる7人は選ばれた存在であること、そして城のどこかに秘密の鍵が1つだけ隠されており、見つけた者はどんな願いでもかなえてもらえると話す。

映画.comより


はい、昨年の公開から気になっていた「かがみの孤城」を観ました。
原作小説(辻村深月さん著。未読です)が本屋大賞を受賞してることもあって、どんな話なのだろうと興味を持ってました。

で、観てみたところ、大賞作品にたがわぬとてもよく出来たストーリー。
ファンタジーでありライトなSFでありミステリー要素あり。
なので、ネタバレしてしまうとその面白さが失われてしまうと思うので、それは控えます。すみません。。。

じゃあ一体何を書くんじゃという話なのだけど、自分がこの映画を観て心動かされたところは何かと問われると、もちろんストーリー展開のうまさもあるのだけど、今悩んでいる・苦しんでいる人に届けたい、という気持ちが伝わってきたところ。
このお話を物語ることによって、少しでもその傷を癒すことができれば、という想い。

まあそんなの月並みな美辞麗句じゃないかと言う向きもあるかもしれないけど、自分がどうしてこのnoteにせこせこ文章を書いているかというと、もちろん言語化することによって自分が考えていたことがはっきりするっていう実際的なメリットもあるけど、それだけじゃない気がする。

自分の思い(想い)を語ることで、どこか自分を励ましたり温めたりしているのだと思う。
そしてそれがひょんなことでうまくいけば、他の誰かを励ましたり温めたりするかもしれないと、心のどこかで信じているのだと思う。
まあお気楽なつぶやきもしちゃう(させてください)けど、真面目に書くとそういうことだと思う。

少しだけ内容の話をすると、主人公・こころは自分の身に起きたことをなかなか周りに伝えられなかった。(あんな酷いことをされたら当然だ)
でも城で過ごすうちに少しずつ話すことができるようになる。
そしてそれを周りがちゃんと受け止めてくれる。
その反応をみて、またこころの気持ちが動く。

この作品は「自分のことを語っていいんだよ」とそっと背中を押してくれる。
さらに「あなたの話を聞かせて」と。

『こちらあみ子』を観た時も感じたけど、映画が終わっておしまいじゃなくて、こちらの想いまで言葉にしてはじめて完結する映画なのかなと。(気持ちの)射程が長い作品というか。

一方でエンドロールが流れた瞬間「あ~面白かった。(家で配信だと)寝よ寝よ」っていう映画もあって、どちらが作品として優れているとかではありません。
それぞれ良さがある。

「あなたの話を聞かせて」。
この物語の主人公は中学生だけど、大人だって実はこう言われたいですよね。
人間同士の交流に大人も子どももないのだ。
相手の目を見て、ただ話をすればいい。
自分のことを物語ることによって、また相手の話に耳を傾けることによって、傷は癒され、内側から温まるものがきっとある。
作り手たちの「物語」への信頼が伝わってくる作品でございました。

話途中にスマホを見たい!という欲望に負けてはいけないのだ!(でも負ける。。。)

あ最後に、声優で出演されてる麻生久美子さんの声が好きなので、うっとりしてました。
あの声で「あなたの話を聞かせて」って耳元で囁かれたら、どぎまぎして「カレーライスが好きです」とか「ざるそばよりざるうどん派です」とかどうでもいいこと話しちゃうんだろうな、きっと。。。

総合評価 ☆☆☆

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

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