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2021.10.24大阪支部企画『親密さ』上映会@シネ・ヌーヴォ〈レポート〉

お久しぶりです。映画チア部京都支部のむらたです!前回の更新の時にはまだまだ半袖で過ごせていたのにすっかり肌寒くなってきましたね…!私はもうヒートテックを着込み始めました。

今回は10月24日に大阪・九条にあるミニシアターシネ・ヌーヴォで行われた、濱口竜介監督『親密さ』(2012)の上映会のレポート(感想!?)をお届けいたします〜

この上映会は映画チア部大阪支部の方々が企画したもので、本編上映後には主演の平野鈴さんと大阪支部タマさんによるトークショーもあり、昼下がりから夜にかけての濃密な映画体験でした。


15時40分からの本編上映を目掛け、地元の方達で賑わう商店街を曲がったところにある秘密基地のようなミニシアター、シネ・ヌーヴォに向かうとその前にはすでに多くの人の姿が。掲示板にはられた『親密さ』のポスターには満席の文字。

上映を今か今かと待ちわびる熱気の中に入ると、男女年齢様々なお客さんの姿。公開から約10年がたった今もなお公開されるたびに駆けつける人たちのいる、愛され続けている作品なのだなあと感じる。

今回の上映会の企画者である大阪支部タマさんの挨拶が終わると、いよいよ始まるぞと姿勢を正し、気合をいれる。(ヌーヴォの赤い椅子…いい)

前半部分のラスト、美しい夜明けの長いワンカットのあと、10分間の休憩が入った。映画と現実の境目からゆっくりと足元を確認するように座席を立つ。

トイレの長蛇の列に並んでいる時も、先ほどまでの時間を反芻したり、びっしりと壁に貼られてあるポスターを眺めるのも楽しい。劇場によって置いてある本やグッズにも個性があって、空間まるまるを楽しめるのもミニシアターの良い所だなあ、などと思いつつ座席に戻る。いよいよ後半が始まる。

上映が終わり、余韻と充実に満ちた劇場の明かりがつくと、周りの観客が255分の時間を共に体験した仲間たちのように感じる。その仲間たちの姿を見ていると、どこかに映画の中の彼らがいるのではないかと探してしまう。

そんなことを考えていると、拍手とともに入ってこられた方のなかに、いた。それもそうだ、上映後には令子役の平野鈴さんと大阪支部タマさんによるトークショーがあるのだった。

お洒落な洋服に身を包んだ平野さん。言葉を選びながらこちらに伝えようという真摯な気持ちが受け取れる、芯の強い佇まいがとても魅力的な方だ。

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平野さんは『親密さ』について「今までは当時のいろんな出来事や感覚が先に引きずりだされていたけど、ようやく画面の中で起きていることとして受け取れるようになった」と話されていた。

また、演出家として実際に劇中の演劇の演出を行なっていた(それも今までに全く舞台演出の経験がない状態で…!)というのも驚きだった。話題が劇が映画的なカメラワークの表現で切り取られていることに及ぶと、平野さんは「映画にとられた〜という感覚があった」とおっしゃっていた。役者の動作の肌感覚やディティールが、見る範囲を限定される映画のカメラワークによって、観客は受け取ることができるのだと。実際に演出する中でそのような細やかな感覚を伝えることを目指していたと話されていた。

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観客との質疑応答もあり、あたたかい空気に包まれたトークショーだった。


4時間以上にわたるボリュームのある作品だが、どんどん物語が進むにつれて映画の中の人物たちが立体的になっていくのがわかる。彼らの発する言葉がすっと入り込んできて、次、その次が聞きたいという気持ちになる。油断していると彼らの言葉にハッとさせられる。

演劇の場面では真正面から彼らを見つめることで、今までに切り取られていた時間と演劇の中の役者たちが溶け合っていく。作り物のはずなのにとてもリアル。様々な想いや言葉が紡がれていく感覚。そして迎えたラストシーンの躍動するふたりに感動した。

夜風に当たりながら駅までの道を歩き、電車に揺られる。すっかり暗くなった街の様子を眺めながら、「昼から夜にかけての上映時間にしたかった」とトークショーのタマさんの言葉にとても納得した。「いい時間を過ごしたなあ」という気持ちに満たされた。

この映画を映画館で見ることができて本当によかった。


とても素敵な上映会でした。大阪支部の皆さん、お疲れ様でした。そしてありがとうございました!

京都支部ではまだ上映会を開催したことがないのでぜひやってみたいという気持ちが高まりました…!


濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』はテアトル梅田、京都シネマにて上映続いております。また、第71回ベルリン国際映画祭にて銀熊賞を受賞された『偶然と想像』が12月17日よりシネ・ヌーヴォでも上映されます。

そして、令子役を演じられた平野鈴さんの最新主演作、上村奈帆監督の『僕の一番好きだった人』が11月29日名古屋シネマスコーレにて上映されます。 

ぜひ劇場にてご覧ください。

読んでいただきありがとうございました!ではまた。

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