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「いとみち」横浜聡子監督と主演の駒井蓮さんへのインタビュー:とらわれない二人がつくる”相馬いと”

こんにちは。(かず)です。
今回は、横浜聡子監督と女優の駒井蓮さんに、映画「いとみち」について取材して来ました!

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映画「いとみち」は、越谷オサムの原作「いとみち」を映画化したもので、原作同様、青森と津軽三味線にメイドカフェを組み合わせた異色な設定です。原作は、主人公の相馬いとが、周りの個性が強いキャラクターと関わる中で成長する様子を描いており、人と人の関係に焦点を当てている印象でした。映画でもいとを取り巻く人間関係が描かれていたのですが、その関係を描く中に、横浜監督からのメッセージが詰め込まれている印象でした。例えば、青森の空襲を語るシーンや、女性差別を扱っているシーンなど、メッセージ性を感じる作品です。

・ストーリー
主人公の相馬いとは、津軽弁訛りが強い高校生で、祖母のハツヱに教わった津軽三味線は賞をもらうほどの腕前です。しかし、受賞して以降やる気が起きず、1年間、三味線を弾くことはありませんでした。また、学校での友達との関わりにも不満を感じており、何もやりたいことがなかったいとでしたが、スマホで偶然メイドカフェの求人を見つけ働くことにしました。メイドカフェでは、オーナーの成田、店長の工藤、シングルマザーの幸子、漫画家志望の智美と共に働くことになります。しかし、そんなある日仕事に慣れてきた頃、突然メイドカフェが閉店の危機を迎えることになります・・・

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―大阪アジアン映画祭でのグランプリおめでとうございます。
(横浜監督)
賞があるのは知っていたんですけど、受賞するとかしないとか全く考えてなくて、「あ、そういえば賞あったんだ」ってなって、嬉しいけど予想ゼロだったんで、びっくりしました。
ただ、お客さんからの「観客賞」は素直に嬉しかったですし、俳優陣やスタッフと早く喜びを共有したいなと思いました。
(駒井さん)
私も大阪アジアン映画祭は、賞があるイメージよりも映画が集まるイメージが強くて、確かに、受賞は監督と同じ印象でした。ただ、グランプリに加えて「観客賞」をいただけたことは、本当にびっくりしました。私たちが撮った時に伝えたいなっていうことは一杯あるんですけど、それが必ずイコールで伝わるわけではないので、色濃い青森の印象が「観客賞」によって伝わったのかなと実感があって嬉しかったです。

―ふるさとの青森での撮影はいかがでしたか?
(駒井さん)
地元の安心感が心の支えとなって心強かったです。でも、仕事のために青森を6年間離れていたので、青森に戻って来るというのが不思議な気持ちでしたし、津軽の人間を演じるということは、津軽で生き直すという感覚だったので、どうしたらもう一度、津軽の人間になれるのかと思いつつ、津軽の人に見られる緊張感はありました。また、撮影時には小学校の担任の先生が通りかかっったり、地元ならではの楽しみがありました。

―原作のいととは違う、映画でのいとをどのように作り上げましたか。
(横浜監督)
最初、駒井さんの喋り方を確認して、どうやっていとを作り上げようか考えました。駒井蓮という人間から、どういう風に広げていけるのか探りながらでした。
(駒井さん)
色々試しつつ、断片を掴んでいく感じですね。中心を決めてないけど、「喋り方はこうなのかな?」や、「家族観はこうなのかな?」と少しずつ色々やっていました。
(横浜監督)
学校ではこういう風な存在だけど、家庭ではこういう風な存在というのは、駒井さんとお話したりして、場所によって表情などが変わる人だろうと、今考えれば誰でもそうなんですけど、いとに正解はなかったです。駒井さんには「いとはこういう人物です」と頑なに信じ込まなくても大丈夫ですと話しました。

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―いとには自分のことを知ってもらおうとすら思ってない、自意識過剰的な側面が思春期にはありますけど、そういう状態のいとを想像するのはどうでしたか?
(駒井さん)
自分が思春期のことを思い出すことは恥ずかしいですけど、撮影の最後までいとについては定まらなくて、シーンのその瞬間、その場で姿が違って筋を定めるのに大変でした。
(横浜監督)
蓮さんって内気じゃないじゃないですか?内気なとこもあると思うんだけど、クラスで言ったら元気な方ですよね。そういう人って、クラスの内気な人をどう思ってるんですか?
(駒井さん)
私はあまり同じ人とは一緒にいないんですよ。友達にはすごい仲がいい人もいるんですけど、その日によって一緒にいる人が違うんですよ。だから、基本クラスの人と仲がいいのはそういうことで、結構浮遊してます(笑)。だから、その中であの子こんなんだったなって思ってますね。
(横浜監督)
駒井さんって、いとを演じるって難しかったですか?私はいとを自分自身だと思ってシナリオ書いたんですけど、俳優って全然違うじゃないですか。
(駒井さん)
自分の中にある、どっかの要素を拡大していく感じでした。クラスにいる内気な子って、目立つ訳じゃないんですけど、急にクラスの中心になったり、よくわからない立ち位置の子がいるんですよ、そういう子を思い出しながらやってました。いとってそういうイメージでした。

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―津軽三味線のシーンでは、西川さんとの共演もあり、やる方としてはプレッシャーもあったと思うんですけど、実際練習して弾けるようになると、津軽三味線は面白いですか?
(駒井さん)
面白いです。ギターとかピアノみたいな楽器だと思うんですけど、なんかもっと孤独な楽器だと思ってて、指の痛さとか、撥で叩いてる時の力とか全部自分の世界なんですよ。イトも劇中で目を閉じてたんですけど、それこそ一人の世界で闘うって感じですね。私もそういう意味では闘った期間だと思いました。

―西川さんとお部屋でセッションしてましたが、あの時はどうでしたか?
(駒井さん)
西川さんは、映画でのお芝居や、津軽三味線でセッションする機会も中々なかったですし、二人でひたすら練習してました。二人の呼吸や表情や動きなどを視界に入れる必要がありますし、二人で手を握りながらドキドキしてました。

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―実際にメイドカフェに行かれたそうですね。
(横浜監督)
はい、2回くらい。メイドさんが萌え萌えキュンを目の前でやってくれるのですが、恥ずかしくて、凄い低いテンションで「萌え萌えキュン」と一緒に言ってました(笑)。だめですね(笑)。でも、本当にメイドさんたちがお客さんたちを楽しませようという心意気を感じて、落ち着くって言えば落ち着きますね。お客さん達が、みんながそれぞれの時間を過ごして、たまにわいわいする、思いのほか居心地がいい場所でした。

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―学生団体としては、お二人が学生の頃に抱いていた夢をお聞きしたいです。
(横浜監督)
私、小学校から中学校では歌手になりたかったんですけど、そう思ったら叶ってないです。表舞台に立つのが向いていないと思ったので、映画を作る方に進みました。駒井さんは子供の頃から女優になりたかったの?
(駒井さん)
いや、そんなことないですよ。ファッションデザイナーや学校の先生にもなりたかったですし、画家もやりたかったですし、書道の先生にもなりたかったです。
(横浜監督)
すごい夢がいっぱい。
(駒井さん)
興味があったら何でもしようと思ってたんですよ。大学に入って知ったのは色んな職業があって向いてる向いてないとかじゃなくて、自分がだめだと思わずにこれからも色々試してみようと思いますね。こだわり過ぎない人間になりたいですね。決めつけちゃうと新しいものを手に入れられないのでフラットにいたいです。

※今回の合同取材は、cinereflet(シネルフレ)さんと行いました。

『いとみち』
6月25日(金)より、テアトル梅田、イオンシネマシアタス心斎橋、京都シネマにて公開
26日(土)~元町映画館にて
(C)2021「いとみち」製作委員会


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