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ヨーソロおきゃくハチキンべくはい

今回は『追い風ヨーソロ!』に出てくる耳慣れない言葉をいくつかピックアップしてご紹介します。
 
【ヨーソロ】
 
まずはタイトルにもあるこの言葉。
これは航海用語のひとつで、船を直進させるときに用いられます。舵を右に取る「面舵」と左に取る「取舵」、そして直進の「ヨーソロ」。今進んでいる方角のままで行こうというときに「ヨーソロー!」と発します。
漢字で書くと「宜候」や「好候」となります。すなわち「宜く候(よくそうろう)」ですね。
 
 
【おきゃく】
 
お酒や宴会が大好きというのが高知の県民性。集まって酒を酌み交わす高知の宴会文化を「おきゃく」と言います。気心の知れた友人はもとより、初対面の人も巻き込む高知人の懐の深さでもてなされると距離が一気に縮まります。美味い地酒と郷土料理があれば、そりゃあ心も開くのが道理です。
献杯・返杯という簡単なしきたりはあるそうですが、招く側も招かれる側も共に楽しめばオッケー。土佐流のおもてなしを満喫しましょう。
 
実際におきゃくを体験してきました。カツオのタタキにはじまり、クジラの刺身にイノシシ肉のすき焼き。さらにはお母さん手作りの炊き込みごはん、自分の畑で採れたという実の詰まったトマト……それらを食べている横で金網の上でお肉がどんどん焼かれている。
我々の映画作りの話を興味を持って聞いてくださり、また高知のことをたくさん教えていただきました。
もてなす側がとにかく本気。こちらを楽しませてくれているのですが、それ以上に自分がしっかりちゃっかり楽しんでいる。嘘のない本当に心地良い時間を過ごしました。「接待」とは違う「おきゃく」のもてなし、高知へ行ったら是非とも味わっていただきたいものです。
 

酒も料理もおしゃべりも、これでもかと出てくる


 
【ハチキン】
 
「男勝りの女性」を意味する土佐弁。ですので男性に対して使われることはありません。
 
言葉の由来は諸説ありますが、最も広く伝わっているのが「8つのキン〇マ」。男が持つキ〇タマが2つであるのに対し、土佐の女はその4倍。それだけ気も強くて快活で行動力があるということですね。プラスの評価の言葉ではあるのですが、いかんせん語源がストレートな下ネタであるため、面と向かって言われるのを好まない女性もいるそうなので使う際は相手をよく見ましょう。
 
いっぽう土佐の男ぶりを表現する言葉としては「いごっそう」というのがあります。
 

劇中でハチキンと称される坂本鶴井(演=我妻美緒)


 
【べくはい】
 
最後は言葉ではなくアイテム。唯や梨香が使用しているシーンが見られます。
 
漢字で書くと「可杯」。漢文では「○○すべし、すべき」を「可○○」と表記し可の字が文末、すなわち下に置かれることはありません。そこから「下に置けない杯」を「可杯・べくはい」と呼びます。
 
いろいろなパターンがあるようですが、おかめ・ひょっとこ・天狗というのが最も見られる組み合わせ。お座敷遊びのひとつでコマを回して出た絵柄の杯で注がれた酒をいただく。下に置けませんから手にしたら最後、飲み干すしかないという楽しい・恐ろしいが人によって分かれる遊びとなります。

3つの杯とコマ


おかめは形のうえでは置けるのですが、土佐の男ともあろうもんが女の顔を床に着けるのか?という精神的な攻め方をしてきます。
残る2つはもう物理的に置けません。ひょっとこは口の部分に穴があるので、そこを指で押さえていないとこぼれてしまう。天狗は3つの中で最も酒の量が多くなるキツい(嬉しい?)もの。
酒処である土佐の色が面白く出た文化ですが、本当に飲めない人に持たせると今の時代は何かしらのハラスメントになるのでご注意を。
 

瀬沢唯(演=八洲承子)迫真の「飲め」。アルハラってなんですか?


 
これらの言葉や文化を知っていれば『追い風ヨーソロ!』を一歩深く楽しめることうけあいです。
 
◆◆◆

『追い風ヨーソロ!』

【出演者】
大野仁志 我妻美緒 山川竜也 八洲承子 愛海鏡馬 豆電球

【上映日時】
2023年6月24日(土)~6月30日(金) 毎日13時~・19時~
各回、出演者による舞台挨拶・トークショーあり。

【木戸銭】
大人/1,500円 中学生・高校生/1,300円 小学生/1,000円

【会場】
大心劇場
〒781-6427 高知県安芸郡安田町内京坊992-1
http://wwwc.pikara.ne.jp/mamedenkyu/

【あらすじ】
1889年、安田村。唐浜では通りすがったお遍路の男に看取られながら、ひとりの女が息を引きとった。そして安田川のほとりでは安田村を離れていた兄弟が偶然の再会を果たしていた。その前に父の仇だと刀をかまえる女が現れた……。

時は流れて現在、安田町。かつての安田村にいた面々と同じ顔をした者たちが集ってくる。他人の空似か、あるいは前世か。交錯する過去との因縁。時を超えて、彼らを包むように風が吹く。

全編高知・安田ロケ、上映は大心劇場による地産地消映画がここに誕生!


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