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『僕は猟師になった』

(監督:川原愛子 / 2020年) @ ユーロスペース


直径12cmの罠。そこにかかるのは、野生のイノシシやシカ。
猟師が棒を持ってかかった獲物に近づき、頭を殴打する。

獲物の悲鳴が上がる。

続いて猟師はナイフを取り出し、獲物の頸動脈あたりに差し込む。
断末魔の鳴き声。血が溢れ出し、獲物はやがて息絶える。

猟師は獲物を水できれいに洗う。
これが自分と家族の食べ物になるからだ。

家に持ち帰り、家族といっしょに獲物の皮を剥ぐ。部位ごとに解体する。
胆嚢は半年干すと二日酔いの特効薬になるのだとか。

それを見つめる猟師の子供たち。
今夜の食材が目の前で「できあがっていく」。

山奥にひっそり暮らす猟師一家の話…
…ではなく、京都市の中心部にほど近い、運送業で働きながら猟師もしている男性とその家族を追ったドキュメンタリーです。

ふだん僕らは当たり前のように肉を食べますけど、それが「生前」どこで誰に育てられ、殺されたかなんて、考えません。

それが悪いこととは思わないし、皆がこの猟師さんのように生きるべきとも思わないけれども、
何かこう、「5分10分歩いてコンビニに行けば、いつでもおいしいカラアゲが買える」環境にあって、自分が何を口にしているのか、もう少しだけ心の片隅にでも置いとかないとイケンのでは…


果ては、「いつでもカラアゲが買える」のと、「物心ついた時からイノシシを獲って解体する」のと、どちらが健全かなぁ、などと。
あまり意味のない天秤かけですね。


なお、これを書いている今も、僕はスーパーで安く買ってきた鶏胸肉をトースターでホイル焼きにしています。
つくづく業が深いと思います。

解体シーンが大丈夫な方は、ぜひ。
都内ではユーロスペースのみ。ほかに川崎市アートセンター、シネマ・ジャック&ベティで公開予定。


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