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19 永遠の輝き、実は一瞬

 皆さんは人生の中で何か目標を持っていますか? もしくは過去に目標を設定した事がありますか? たぶんほとんどの方があると思います。大志を抱かないまでも将来は何かになりたいと考えた経験はあるのではないでしょうか? 仕事で昇進したいと考えた方もいるでしょうし、何かを開発したいと考えたかもしれません。いつも言いますが、私はそれを否定したいとは思いませんので、念のため。

 ただ、そうした目標は達成するまでは永遠の輝きを持つ素晴らしい星のように見えますが、実はそうでもないというお話です。

 先日、私は郊外から都心に向かう電車に乗りました。久しぶりでしたので窓の外をずっと眺めていました。電車は途中のある駅に停まりました。懐かしい駅です。もうずいぶんと以前、私はその駅で乗り降りしていた事を思い出しました。そうそう、いつも電車はこのあたりに乗って、ドアが開いてあちらの階段へ向かって歩いたのだったと懐かしく感じました。電車は再び動きだし駅舎を出ると日の当たる路線を走り始めます。少し行くといつも歩いていた線路沿いの道、そしてその先にはあの時に所属していた会社の建物が・・・まだそのままの状態でありました。

 ああ、あの時、こんな事があった、あんな仕事をした、そして懐かしい顔が思い浮かびました。ええっと、あれから何年経ったのだっけ? ○○年かあ。あの時に一緒にやっていた同僚たち、年齢的に・・・ああ、もう誰もいないなあ。この会社のロゴマークはそのままで建物もそのままだけれど、懐かしいといって仮に訪問したとしても中身は完全に変わってしまっていて見知っているものは何一つ無いだろう。一所懸命やった仕事も既に何度も上書きされていて片鱗すら残ってはいない。

 特にその会社だけではないはずです。銅像が建つほどなら別でしょうが、普通はこんなものです。会社や仕事に限らずスポーツでも何でも、自分が実績を残したつもりでもそれは必ず更新される運命にあるものです。一所懸命やったかどうかそんな事はまるで関係はないのです。過ぎてしまえば過去になり他人からは放っておかれます。そしてそれは私の思い出の中にしかありません。

 私たちはどうしたわけかより良いものを求めます。それは自分について、自分の周囲の環境について、作り出す何かについてなどいろいろです。諦めてしまわない限り求めます。そしてそれを求めている間、煌々と輝いて素晴らしく価値のあるものに見えます。ですが、過ぎ去ってしまうのもとても早いのです。後から振り返ってみればほんの一瞬です。ほんの一瞬のために人はかなりのエネルギーを注ぎ込みます。学校に通う、テキストを買う、訓練に励む、勉強する、誰かから教えてもらう、と信じられない努力と労力を注ぎ込むのです。一瞬のために。一瞬の事とは考えもせずに。

 無駄だからそんな生き方は止めておけ、というのではありません。それは人としてすべき事だからです。ただ、先に知っておくべきではあります。なぜならば、ほとんどの場合、それだけで人間の一生は終わらないからです。過ぎた後も人生は続きます。実績がいかに輝かしいものであったとしても思い出になり、他人からは忘れられ、上書きされた後にあなた自身、私自身はそこから得るものは無くなるのです。人生の終わりの時まで保証してくれはしません。

 下世話な話をしてしまえば、いかに人気があってもてはやされたいアイドルタレントでも、いつかは過去の人になり歌っていた曲はたまに誰かに聞かれるかもしれませんがコンサートは企画されませんし、CDやグッズは売れませんから本人には現在的恩恵を何ももたらさないのです。皆さんだって、懐かしいとは感じても昔好きだった芸能人に寄付し続けたりはしないはずです。芸能人でない自分にも同じ事が起こるのです。

 何事も、人生の終わりまでの保証にはならないものなのです。

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