バンクーバー:迷い
様々な迷いに取り憑かれている。
ふらっと、スーパーへ立ち寄って、どのリンゴにしようか選べるほど、安価な買い物じゃないんだってことだ、人生ってやつは。
艶光沢、傷、色味、重さ、匂い。
12分経って選んだリンゴは1.69ドル。
今日はセール日だ。
いつもは1.99だから、約30セントもお安く買い求めることができます。
家に帰ってそのリンゴを切って見て、果肉の断面をついでに切られた虫が這い回っていても、その瞬間の不快感で終わる。
壁時計を見て、スーパーはまだ閉まっていないかを考え、1.69ドルのリンゴは侘しい本日の食卓の彩りに必要か、その労力を概算。
スーパーまでは0.5マイルの距離。
結局、虫が食った場所をカットして、他の部分を暗いオレンジ色の読書灯で際だたせられたテーブルに並べる。
たまにはダウンタウンの夜景を眺めたくなる。
上げたらタダでは降りてこないブラインドを巡って、窓枠に腰をかけて、リンゴをひと齧り。
そこには明日も明後日もなさそうな景色。
グッバイ、レインクーバー。
天気予報が人の心を軽くする。
外では陽気な金髪の女がサンシャインと歌っていた。
僕は眠りにつき、今日と同じようにリンゴだけを選んで生きたいと思う。
なんてことは出来ない。きっとあの世だってそれよりも忙しい。
残酷にも人生は選択の連続で、僕の場合は行き当たりばったり。
都度、被害を最小限に止めようとする選択ばかりで、何か前進したような手応えもなく、トントンと人生はこ気味良い音を立てて次のカットへ。
全くどうしたものか。
カナダに残るのか、帰国までの期限ギリギリに までわからないときた。
ビザ申請の金だってままならない。
心労だ。
もう少し安定したいところだけれど、
それはあと数ヶ月後のことかもしれない。
たまにはバンクーバーのエッセイ。
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