『超能力de読む時間!』(シロクマ文芸部)
『特別生放送!!超能力de読む時間!!~証明されるまで終わりま1000時間~』
眠りこける観覧席、静まり返るスタジオ、カメラは二人の中年男性を切り取る。
裏では番組スタッフが数々のテロップや装飾を施し、プロデューサーは手もみしながら彼らを眺めている。
中年男性はそれぞれ、間隔の近い別なテーブルの前に立っていた。
テーブル上には人の顔程の大きさがある、黒い正方形の箱が一つずつ。
これが銀の楕円形であれば、5つ星ホテルのディナーともとれたかもしれない。
中年男性二人の後ろ、やや上方には赤い横断幕が貼り付けられている。
四方は金のドラゴンが装飾され、番組側の気合がうかがえた。
『時代を象徴する世界屈指の超能力者バトル、どちらが先に箱の中身を透視できるか!?』
こう記された横断幕の下にいる中年男性2人は、引いて行った波のような生え際を光らせながら、汗をかいていた。
汗はそのまま彼らの心臓と結びついているように、噴き出ては冷えを繰り返している。
二人は世界を代表する透視型超能力の持ち主でどちらとも、日本出身だった。
一人は、カゲイモノタロウヤヤウマノリといい、
もう一人は、ハヤギユーダイスケノサンジョウという。
どちらも本名だ。
数ある超能力のなかでも、透視型超能力はあらゆる能力の中でも頂点に立ち、今や世界中でブームとなっている。
透視型超能力のパイオニアとうたわれる
インディーノ・インドインドナマステインドというアメリカ出身の大男は196歳で亡くなった。
インディーノが死の淵に23歳の娘
クツシタカタアシナクシテクサ・インドインドナマステインドにこう言った。
「透視能力は見ることではない、その先の空間を読むということだ、読む人なんだ、私の人生は読む時間であった、ああ、私の大事な娘、32人子供がいるがお前を一番愛しているよクツシタカタアシナクシテクサ、ああ、寒いな靴下をはかせてくれないか」
生放送開始から56時間が経過していた。
この間、いつもはチャンネルの主導権を握り、他のドラマやアニメなどを圧迫してまで中継される野球すら蹴散らして、『特別生放送!!超能力de読む時間!!~証明されるまで終わりま1000時間~』がぶっ通しで放送されている。
カメラの前にいる男たちの頭のなかでは同じことを考えていた。
「まじ意味わからなくて大草原」
彼らが別の番組に出て透視を行う際には、必ず念入りに打ち合わせをした。
超能力者たちは、きまってマネージャーを外して、食事へ行きそこで打ち合わせをする。
もちろん番組を盛り上げるための演出の確認だ。
ーーどれくらいの時間で箱の中身を読むのが一番盛り上がるか。
ーーアナウンサーがなんて言ったら読み上げようか。
ーーどういった箱に包まれてくるのか。
ーー出演する芸能人は誰か。
ーーカメラはどのくらいの距離か。
ーー全体の持ち時間はどれくらいか。
「いやぁ、お疲れ様でした、また番組でお願いします!ああそうだ、帰る前に聞かないと、ハハ、一番大事なことを伺いそびれてましたよ……
ーー箱の中身はなんじゃらほい」
ところが今回は打ち合わせがなかった。
というか、この企画を知らされていなかった。
二人は横断幕を見る、その端っこには小さく
『超能力者ドッキリ、二人は本物!」と書かれている。
二人はそれぞれライバルとして互いを忌み嫌い、早く不祥事か何か出て人気の地位を失墜することを願っていたが、こうなると二人は、絶えず目配りをし、お互いの腹を探りあっていた。
どちらかが騙して、ドッキリを仕掛けてきたのではないか、つまり相手は仕掛け人なのではないか、いや、それにしてもだとしたら、なぜあんなに余裕のない表情をしているのか、そもそも仕掛け人だとしたら56時間経過する前に箱の中身を当てないだろうか、俺がギブアップするのを待っているのか?56時間も?
二人のマネージャーが首を傾げて、二人を見ている。
マネージャーは彼らが本物の超能力者と信じていたが、何やら旗色がおかしい。
二人は両手を箱に向けて叫ぶ
「ぐぬぬぬ、ぐあああああああ」
「ひょおおおおおお!」
眠りかけたアナウンサーが急いで飛び上がり、
「これは、何か見えたのか、いや読んでいるのかぁ」
とカラカラな声で叫ぶ。
「何が見えるのでしょう、お二方、答えをどうぞ!」
観覧席の客は全員が起きた。上から見ていたプロデューサが走ってきた。
二人のマネージャーの手が祈っている。
カメラが二人にズーム。
誰も音を立てない、スタジオの電球がジーっという焦げ付く音がする。
カゲイモノタロウヤヤウマノリと、ハヤギユーダイスケノサンジョウは覚悟を決めた。
二人の頭のなかにいる196歳で亡くなったインディーノ・インドインドナマステインドはルート66の看板の前に立って親指を立てている。
「さぁ、スペシャリスト、読む時間だ」と二人に優しく囁きかけた。
「お二方答えをどうぞ!!」
アナウンサーが急かす。
会場は今までにない熱気が静かに立ち込めている。
彼らから一秒たりとも目を離さない。
両者が揃って口開く。
「ききききききつねの尻尾ぉぉっ!!」
「むむむむ麦茶の残りかすぅっ!!」
「おっと答えが分かれました、これはどういうことでしょう!
両者箱を開けてみてください!!」
二人は箱を開けた。
もう何も話すことはなかった。
アナウンサーが叫ぶ。
「これはなんと、女性スタッフが小腹を満たすために少しずつ食べるじゃがりこのチーズ味一本だ!!」
会場は静まり返った。
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今回もシロクマ文芸部の企画に参加させて頂きました、森です。
実は最初の名前はmouriだったのですが、なんだか味気なくて森をつけて、
森毛利となりました。
ただ、暫くしてみると今度は苗字と苗字が無理にくっついているような違和感を覚えまた名前を変えたくなっています。
でも、この作品を読んでくださった方なら、もう勘付いているとは思いますが、僕のネーミングセンスは地球には合わないので困っています。
(火星では結構いい線言っていて、僕が火星人の9割の名前をつけている)
候補は一つだけあって、おそらくその名前に改名したら、当分変えることな内容に思います。
森はるひにしようかなと、
森はるひ
森葉留日
あとがきって書くの楽しいなぁ、
はまった。
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