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大根に闘魂込めて

めっぽうテレビを見なくなった。
というか、知りたいものも知りたくないものも一緒くたに情報が流れてくる媒体に気分が浮き沈むのが健康的ではないと思うことがあり、最近は取捨選択している。
きっと人と話すには、情報を入れておくためにニュースを見たほうが話題作りにいいのだろうけど、何しろ人と話すこと自体が少ないのだから、まあ、現状困ってはいない。

そんな私が、朝7時台のニュース番組をたまたま、寝ぼけ眼で見ていた。

全国の朝と夜の番組も、ラジオも完璧にこなすベテランキャスターの呼びかけで、地方局との中継に繋がると、そこは大根畑の真ん中。にこにこしながら女性アナウンサーが巨大な大根を顔の前に掲げていた。

「朝の柔らかな土でしか収穫できないんですっ!」と、農家さんと一緒に大根を引っこ抜きだす女性アナウンサー。

「急いで抜いて〜」の農家さんの声をうけて、数本抜いたあと、そそくさとその場を離れ、アナウンサーは大根についた土を落とすため、水を張った巨大バケツに大根をぶしゃんっ!と入れた。そして「この大根は、キメ細かいんですよ〜、見たいでしょ〜!?」と早口で言いながら、ブラシでゴシゴシ大根を洗い出した。

すると、洗った箇所がまるで絹のように艶やかに輝きだし、たしかに美しかった。

それを、「ねー!美しいでしょう!?」と言いながら、顔の前にもっていったかとおもうと、歯を剥き出しにして、そのまま丸かじりしたのだ。

数口で噛み、丸呑みしながら、ばっちぐーサインを視聴者にむけて決めたアナウンサー。
すると数秒後には、「生もいいですが、ほら、やっぱりこれですよねえ!!」と言いながら、数歩先の用意されたぐつぐつ煮えているおでん鍋を紹介していた。

そして、熱々おでんをほくほく顔で決めているところで中継は終わった。

ほんのこれが1分30秒か、2分くらいの中で起こっていた。

決められた枠内で完璧にこなし、丸かじり大根フェイスからホクホクおでん大根フェイスを決めるアナウンサーさんからは、全国区に向けた全力&気合いがメラメラと燃えているのが見えて、背景の大根畑が霞んで見えるほどだった。

はえ〜、、、情報量エグ〜!!!

朝の2分でもう1日の情報量満足度に達してしまった。

しかも、中継が光の速度過ぎて、私には中継終了後の農家さんへの「ありがとうございましたぁ!」からの、アナウンサーさんのスタッフへの「お疲れ様でしたあ!いやあ!!!やりきりましたね!!!」と、膝に手をつけながら、きらきら笑顔で語り合う姿まで見えました。

YouTubeを2倍速で観るより、倍速で進んでいく中継に、もう目と心が置いてきぼりになり、全てが終わった後に、すんげえものを朝から見れたなあと大変満足した。

世界は大変忙しくまわっているらしい。

飲もうとして忘れていた緑茶をグイと飲み干し、私も今日一日をスタートさせます。

              もうはっさん


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