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読書の記録(18)『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』 安房直子作 いせひでこ絵 小峰書店

手にしたきっかけ

4年生が本を探しに来ました。「おばあさんが毎日シチューを食べる話しやねん。鳥?なんか動物も出てきた気がする。外国の物語やったと思う。」という手がかりをもとに、外国の物語の棚を一緒に探したけれと見つからず…。シチューで検索しても、それらしきものはヒットせず。私が児童書に詳しくないのもあって、『小さなスプーンおばさん』『スプーンおばさんのぼうけん』ぐらいしか思い当たらず…。

よくよく話を聞いてみると前任の司書さんに薦めてもらったということがわかり、連絡をとったらすぐにわかりました!

シチューじゃなくてグラタン。外国のお話じゃなくて安房直子さんのお話。ちょっとずつ違っていたけれど、無事に本にたどり着けました。

心に残ったところ

『小さなレンガの家』『ししゅうをするおくさん』『男の子といっしょに』『アヒルはどこへ』の4編からなります。

表紙の絵も外国をイメージさせます。ラグを引いて、ロッキングチェアで本を読むおばあさん。たたみ、ざぶとん、こたつ、縁側といった日本的な家のイメージではありません。おばあさんが住んでいるというレンガの家も、毎日グラタンを食べているとう設定も、たしかに外国っぽい。小さめのおしゃれな洋館をイメージしました。

おばあさんと児童文学って相性がいい。お父さん、お母さんは仕事や家のことで忙しいイメージがあります。子どもに近いところで子育てをしてくれているんだけど、ゆっくりのんびり話せるかというと、そうでもない気がします。私自身のことを振り返っても、帰宅後の夕食、お風呂、寝かしつけの時間帯は「ちょっと待って」「あとで」ばっかり言っていたなあ。

おじいさんやおばあさんが持つゆったりしたテンポは、「あのな〜、今日な〜、学校でな〜」というように、思い出しながら話す子どものテンポにあっている気がします。

『ししゅうをするおくさん』に出てくるホーローのやかん、かわいいだろうなあと想像しました。ホーローの白と、たんぽぽの黄色、アヒルの黄色が鮮やかに目に浮かびます。今どきのおしゃれなキッチンにあってもかわいいし、昭和な感じのレトロなキッチンにも似合ってかわいいだろうなあ。

アヒルのうたもリズミカルで、変化のある繰り返しが楽しい。歌ったら何かが起きるんだろなあと予想させて、読み手をわくわくさせてくれる。「きっとこうなるんじゃない?」と予想させて、「やっぱりそうだよね。」と安心させてくれる。

予想もつかないどんでん返しや、そうくるか?といった刺激を大人は求めてしまうけれど、子どもは予想できる変化のある繰り返しを好む。同じことの繰り返しや、きっとこうなるよね、という先が読めるお約束の展開も大好き。

テンポの良い変化のある繰り返しがこの本の魅力だと思う。何回でも読み返したくなる。この楽しさを知ってほしくて、薦めたくなる。

まとめ

私はここ20年ほど、小学生向けのお話を読んできませんでした。自分の子どもに読み聞かせていたのは絵本だし、自分の楽しみのために読む本は大人向けの本。

小学校の図書館司書になり、小学生に薦められるように、小学生と本の話ができるように、と勤務先の小学校の図書館の本を少しずつ読んでいます。

前任の司書さんがおすすめしてくださった本が、その子にとって印象深い1冊になった。その司書さんは異動されたけれど、その子はその本をふと思い出して図書館へ足を運んでくれた。新しく来た私にこの本のことをたずねて、この本の存在を教えてくれた。

前任の司書さんが本とその子をつないでくれて、その子が本と私をつないでくれた。図書館は時間をこえて素敵なつながりが生まれる場所なんだ、と図書館で働くことの楽しさをかみしめています。



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