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Age well Japan Day1 セッション報告|シニア世代のこれからのキャリアとは

9月30日〜10月1日の2日間にわたり開催したAge Well Japan 2022 Day1の各セッションについて、もっと詳しくお伝えして参ります。

現在の日本では、人口減少により国内経済規模の縮小が強く懸念されています。この課題の解決策の一つになるのが、シニア層の働き手としての活躍です。本noteでは、実際のシニア層活躍事例や、企業が抱える課題や社会構造、社会システムの問題について等、「シニア✕キャリア」という切り口で幅広く行われたディスカッションについてのレポートです。

セッション登壇者の方々

シニアの雇用についてご興味をお持ちの方、実際にシニア世代の雇用に力を入れている会社の取り組み内容を知りたい方におすすめの記事です。

Age Well Japanの全貌について知りたい方はこちら↓


自己紹介

小日向えりさん

小日向)株式会社ぴんぴんころり代表取締役の小日向えりです。シニアの寝たきりの方を減らしたいという思いで、社名をつけました。現在5年目をむかえ、「東京かあさん」と呼ばれる「第2のお母さんが持てる」サービスを展開しています。

栗田美和子さん

栗田)株式会社デリモ代表取締役の栗田美和子です。食品製造工場の3代目社長です。「シェアダイニングサルーテ」という事業で高齢者が働く場を提供しております。

小出孝雄さん

小出)株式会社エイジレス代表取締役の小出孝雄です。今年、エイジレス社会の実現をビジョンに掲げて「エイジレス」を立ち上げました。50~70代のミドルシニアがより経済参加をすることを社会価値として、ミドルシニア向けのキャリア支援を行っています。また、50~70代が、オンラインでより買いたい、使いたいと思うようなミドルシニア向けのサブブランド展開を支援しています。

斎藤真帆さん(司会進行)

斎藤)Vivid Creations Pte Ltd CEOの斎藤真帆です。日本から海外に進出する際のマーケティングサポートを行っております。

シニア世代のキャリア支援を行う理由

斎藤)早速、皆様がシニア世代のキャリア支援に関するビジネスをされている理由をお聞かせください。

小出)私は父が社長であることから、金持ちのレッテルを貼られるということを子供の頃からコンプレックスに感じていました。その経験から、「人に貼られているレッテルをなくしたい」ということが自分の中のテーマになりました。近年、性別や国籍の差別をなくそうという動きは浸透してきていますが、年齢差別をなくそうという動きは日本ではまだ浸透していません。これからシニアの方が増えていく中で、シニアの方を社会にどう融和させるかを考えないと、日本社会のサステナビリティは実現しないと思います。その点から「エイジレス」という概念を広めていきたいと思っています。

栗田)私は三代目嫁さん社長です。ずっと「人をどう確保するか」、ということに取り組んできました。自分の会社の社員が60歳になって辞めていくとき、高齢者会社の代表に「産業廃棄物として高齢者をだすのですか?それは違うでしょう?捨てるのではなく、雇用することを考えられませんか?」と言われたのです。最初は農業を考えましたが、腰を悪くするので続きませんでした。それではカフェであれば立ち仕事なのでどうかなと。自分の会社の周りで年老いた人に徘徊してほしくない、そうならないようにするには仕事をし続ける環境が良いと。実際のところ赤字事業なので、力不足を感じながらやっていますが、地域と関わるということに今は意義を感じています。

斎藤)新規事業を始めるにあたり、社内の反応はどうでしたか?

栗田)また何か始めたね、という風に言われました。最初から赤字事業ですと宣言してはじめています。そのためには本体に事業の利益を上げなければいけないと思っています。

小日向)私はもともとおばあちゃん子でした。祖母は80歳位まで楽しそうに働いていたのですが続けられる仕事がなくなり、辞めてからは元気がなくなって、心配をしていた矢先に怪我をして入院になってしまったのです。続けられる仕事があれば、元気でいられたのかなと思います。その経験から、「シニア世代の知識や経験を活かした何かをしたい」という思いが強くなり、「ぴんぴんころり」を起業した次第です。働くことで社会とのつながりをもてて、それが一番の健康の源になる、そのようなシニア世代の生きがいを創出したい、そう思ったのがきっかけです。

シニア世代に対するキャリア支援事業の実体

斎藤)では次に、現在の事業の状況をお伺いしたいと思います。

栗田)赤字PLで動かしていますが、食品製造工場という本体がある中で、公共性がある、社会的である部分を持つことに賛同している従業員が多いです。子ども食堂、地域の中で集まる場を提供しているということを、赤字会社だけど認めてくれていますが、早めに黒字化をがんばらなくてはいけないのが現状です。私が本体を降りて3年経ったら黒字化したいですし、保育園事業と高齢者事業2つを展開していきたいと思っています。

小出)私が経営で大切にしていることは「社会性とビジネスの両立」です。両立のためには働き手側と雇用側のニーズがマッチしなければならないので、まずはエンジニア、システム開発に領域を絞っています。今働いている方が30人くらいいて、70万円、130万円稼いでる方もいます。この領域に関しては需要と供給はどちらも多いです。どれだけ人を増やしていけるかが事業のキーファクターです。

小日向)私も小出さんと同じように経済合理性と社会意義の両立を目指しています。需要が高くてかつシニアの方が得意な領域を探したときに、家事代行やベビーシッターの領域が70代&80代の方でも現役で働いている方が多く、かつすごく需要があるということで目を向けました。最初は「おせっかいな家事代行」というコンセプトで実証実験をはじめて、今は「第二のお母さんがもてる体験を提供するサービス」として展開しています。

斎藤)すごい発想ですね。シンガポールでは家事代行があたりまえで日本を外から見ていると、働くママはとても大変だと思っています。「おせっかいなお母さん」というのはハートフルで良いなと思います。「東京かあさん」はどうやって集めているのでしょうか?

小日向)需要はとても高いので、いかにサプライヤーを集めるかが肝でトライアンドエラーを繰り返しながら集めています。リスティング・フィード広告、デジタルマーケティングを利用しています。最近のシニア世代はスマホ率が増えていますし、広告だと気にせずクリックされる方が多いです。

小出)デジタル広告がメインです。コロナ禍でシニアの方がスマホを使っているのがとても多いのです。シニア世代はスマホを使わないと思われますが全然そんなことありません。だからこそチャンスがあると思います。

事業展開における課題や工夫

斎藤)シニア世代に対するキャリア支援の壁、事業展開の課題や工夫を教えて下さい。

小日向)そうですね。やっぱりシニアのインターネットブレイクが起きている点でチャンスがあります。しかし、若い人と同じようなITリテラシーを皆さんが持っているわけではありません。シニアの方のITリテラシーがあがっていくのにあわせて、UIUXを工夫する、というのが課題です。
 例えば、お仕事の報告もオンライン化することに問題はなかったのですが、プルダウンは難しいけどラジオボタンはできる、文字を大きくしたらできる、など日々研究して、シニアの方に寄り添っていっています。工夫をすれば私たちもびっくりするくらいできることがあります。オンライン面談はZoomは難しい方が多いのですが、LINEビデオ通話だったらほとんどの方ができる、ウェアバイだとできるなど、日々トライアンドエラーをしながらやっています。

小出)エンジニア領域だと2、3年ごとに新しいツールが出てくるので、よりキャッチアップ力が求められています。50、60代になるとキャッチアップ力は差が出てきます。クライアントさんから厳しいと言われることも現実としてはあります。

斎藤)そういう場合は能力に合わせてクライアントをアサインするのでしょうか?

小出)目や耳が悪くなるなどの身体能力の衰えや、誤字脱字、コードを書いたときのミスが増えてきます。なので、60代になったときにこういう傾向があります、というのをご本人に認識していただくことが大事だと思います。また雇用側にも説明して期待値調整をするのがとても大事になります。

斎藤)栗田さんはまた違った課題があるのではないでしょうか?

栗田)足腰が動かなくなるという課題があります。また、スタートした時は、本体の会社から高齢者がでてくるだろうと淡い期待をしていたのですが、本体の方が高齢者雇用に前向きになって、高齢者が残ってしまい、カフェにまわってくるひとが減ってしまいました。外から取り込んでいたらいいなと思っています。

斎藤)みなさんはお客様と高齢者を繋ぐ役目なのかなと思います。小日向さんに質問なのですが、ユーザーの方と東京母さんがいたとき、シニアの方だからこそお客様に説明されていることはありますか?

小日向)出会いの場を作っている意図もあるので、必ず「お見合い」をしています。双方1時間おはなしをしたり、東京かあさんを体験してもらい、相性を確かめる時間をとっています。スタッフが家事代行との違いやシニアが元気でいられる会社ですよということを説明しています。
 また、てきぱきうごけないですよ、ということをご了承をいただいています。コンセプトとネーミングから期待値調整をしているのですが、更にユーザーとサービスを利用する側できちんと合意をとっています。

 斎藤)「東京かあさん」は、今回この「Age well Japan」のテーマである世代間交流のひとつでもある新しいサービスなのかなと思います。

小日向)私自身も東京かあさんにきてもらっているのですが、結婚式で家族とともに第二のかあさんにも花束を渡していただきました。お客様の中でも第二のかあさんが出産に立ち会ったり、一緒に動物園にいったりなど見ていてほっこりします。

 斎藤)栗田さんにご質問なのですが、「シニアの方が働いているからカフェに遊びにいらっしゃっている」という高齢者の方はいらっしゃるのでしょうか?

栗田)お客様は高齢者の方が多いです。ガチャガチャしてないカフェなので、ゆったり時間を使いたい方がいらしています。働いている方も「もう時間です」と言わないようにしています。だから利益が上がらないのかな、という部分はあるので朝食など、何か工夫をすれば利益が上がるのかな、と思っています。お客様は同世代の方かあるいは、ベビーカーをひいている方がおばあちゃんに会いにきています。両極端な形です。

小日向)東京かあさんでも高齢者の方が働くカフェのイベントをやったことがあります。自分のスキルを販売するという喫茶店をイベントとしてやりました。お料理の提供よりも、スキルの販売がメインで、世代間交流が最大の魅力です。

斎藤)雇用側のメンタリティ、企業側がもっとシニアを雇用することにどんなメンタリティが必要でしょうか?

小出)本質的には、何歳がどのポジションでも良いという会社構造にしなければいけないと思っています。年齢に関わらず、どの人をどのポジションに、が重要であると考えています。若い人の下にシニアの方をつけるのを怖がってはいけないと思います。

シニア世代のキャリア支援にかける夢

斎藤)最後にキャリア支援にかける夢、今後仕掛けていきたいことをお願いします。

小日向)ぴんぴんころりという社名のとおり、生涯現役社会をつくっていきたいです。まず働いて収入を得てもらうのが第一歩。シニア向けの事業も手がけていきたいです。シニア向けの経済圏、シニアの楽園を作っていきたいです。

栗田)私自身がシニアなので、自分自身が「ここで仕事をしていてよかった」と思える仲間や場所を提供していきたいです。

小出)私はシニアだけのコミュニティを作る側ではなく、シニア世代をエイジレスとして、どうやって何歳でも変わらずいきいきと働いていけるかについてこれから取り組んでいきたいと思っています。ここに並んでいる皆さん、同じ志だと思うので、これから一緒に頑張っていきたいと思います。

斎藤)シニア世代のキャリア支援について「やらなきゃ」と思いつつ、行動に起こせない中、皆さん色んな課題にむきあって動いていらっしゃって、本当に勇気をもらえました。私自身も、歳を重ねることが怖くないなと思うようになりました。本日はありがとうございました。


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