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そもそもいい写真って誰が決めたの?  エクストリーム写真史! 笑

写真の価値の話

そもそもいい写真って誰が決めたの?  エクストリーム写真史!笑

僕の考察を話します。
写真は複製できるため美術品としての価値が、絵画に劣ると考えられていた頃がありました。
ある人がそこに版画の価値づけ、つまり一枚のイメージを10なり25で割り、その合計が絵画と同じ価値になる方法を考えました。

そこでマーケットができてきたのです。
安い写真なら買ってもいい、どうせなら投資にもなる価値の上がるものが良い。
ギャラリーや、サザビーズやクリスティーズなどに代表されるオークションなどによって作品の人気の有無が出てきました。

美術が存続していくためには美術館の管理などでお金もかかるため、ある特定のルールを作品群に整理して、価値をつけることを考えられていきました。
美術館のキュレーターは歴史的価値とは別に作品の価値をクリエイトして運営費や美術の価値向上にもっていく必要があったのです。そこで作家への感情や気分の振り幅で変わることのない作品の価値作りというものを考えたのです。


多くは一般の人が、安易に感動しない写真です。アンチクライマックスとも言われています。視点の珍しさに趣をおてています。報道写真にみられる瞬間とか感情とは一線を引いた考えで、絵画のように写真を考えたのです。


有名なのがジョン・シャーコフスキーJohn Szarkowskiというキュレーターです。
彼はMoMAの写真部門に就任するとフォトグラファーズアイ(64)ニュードキュメンツ展(67)鏡と窓(78)
それまでの絵にかわる新しい写真家を発見し、その新しい視点を解説、彼の作るテキストによって写真は人々に広がっていきました。
以降、写真ギャラリーが世界至る所で作られ、報道に強かった写真というメディアを美術として広まっていくきっかけを作りました。
前任のエドワードスタイケンが写真部門を担当していたときの代表的な写真展”ファミリーオブマン”(55)が戦争後の報道を基本にしているのに対し
シャーコフスキーは写真に美術的見地、絵画と同じような価値の創造を目指していたと言えます。

いい写真とはエドワードスタイケンの報道的な見方がファミリーオブマンで人間愛につながり、
シャーコフスキーの写真家の視線(多くはアジェなどのモノクロ写真)の提示が写真を絵画と同じ美術であるという共通認識を作りました、写真家の視点の存在です。

次に大きな流れはニューカラーです。
ニューカラーはやはりシャーコフスキーが開催したウィリアムエグルストンの展覧会に事を発します。
僕的にはこのときの展示Eggleston’s guide(76)はもうロバートフランクアメリカンズの焼き直し!とも思っています。
スイス生まれの異邦人として黒人運動が盛んな時代のアメリカを横断したロバートフランク、対するエグルストンはそのエッセンスともいうべき南部ニューオーリーンズでその多くをカラー写真で撮影しました。図録を見ても類似カットが多く、シャーコフスキーはフランクのカラー版と捉えていたと思います。
その後、サリーオークレアがキュレーションの The New Color Photograpy” (81)で、エグルストンからスティーブンショア、ジョエルメイロウィッツ,ジョエルスタンフィルドらが特集され大型カメラを中心にしたニューカラームーブメントが起きる、その後の New color new works (84)で評価は決定的となる。僕のオススメはその後の展覧会American independence  (87)の図録写真集。見ごたえあります。

カラー写真も芸術になるとそんな発想が出てきたのは1980年代中盤でした。
実は僕が写真学校を卒業したのが83年でしたからまだまだニューカラーの定義は浸透していなかった時代でした。
広告にこの手法が続々使われだしてから日本にも広告写真家によって広く浸透していきました。
そのもとを作ったキュレーターはサリーオークレアというキュレーターの力であったといえます。

その前に、もうひとり紹介したいキュレーターがいます。
ネイサンライアンズです。
彼はジョージイーストマンハウス(KODAKの美術館)で Towerd Social Landscape 社会的風景に向かってという写真展を企画します。
コンテンポラリー写真と言われていますが、日常的視点、個人的主観で撮られた写真です。
これは今の日本人の共通概念ではないでしょうか。
コンテンポラリーとニューカラーを合わせたのが今の日本人の写真の意識に一番近いと思います。
コンテンポラリーの定義はいろいろあるのでみなさん独自で調べてください。
ネイサンライアンズの提案は写真を身近にしたこととも言えます。

ちょっとまえ、ハービー・山口さんに”コバヤシさんはアメリカの写真が好きなんだね”、といわれてハッとしました。
僕と少し違い、ハービーさんはマグナムに発する報道、人間愛を根本とした作品をルーツとし、好きなのです。それはヨーロッパの写真文化です。
映画 東京シャッターガールで僕が、ハービーさん演じる細井先生に話してもらうセリフがありました。
写真を撮る目標を失ってしまった主人公に”なんのことはない日常でも、見る人にとって大事になってくることってあるんじゃないかな”
”どこかで見た、って思う写真がある、見たことのない記憶っていうか”というシーンです。
これが僕の好きな写真の世界です。
ハービーさんは写真をよく知っておられるのでセリフを練習なしで言い切ることができました。
自分の世界でなくても全ては頭に入っているんです。これはすごいことだと感動しました。


だんだんみなさんには分かって来られたとおもいます。
僕にとってジョンシャーコフスキー、サリーオークレア、ネイサンライアンズは巨匠の写真家と同じヒーローなのです。

だって高校生の時、埼玉県の作文コンクールで賞をとった文章はジョンシャーカフスキーについてですよ。笑
図書館にあったカメラ毎日を読み漁り、ジョーシャーコフスキーのやったラルティーグの展示をみて高校生の僕は夢みていました。
変な高校生だったと思います。

いま、トーキョーモデルズ やギャラリーキュレーションをやるのも先の3人の影響だからでもあります。
いつかは、SNS時代の日本のオリジナルな作品文化を世界発信していきたいと考えています。


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