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ボウキョウによせて5

南葦ミトさんの小説「ボウキョウ」の感想です。これが最後になります。

 1話・2話の感想はこちら⇨ボウキョウによせて

 3話・4話の感想はこちら⇨ボウキョウによせて2

 5話・6話・7話・8話の感想はこちら⇨ボウキョウによせて3

 9話・10話の感想はこちら⇨ボウキョウによせて4

 ☆☆

  11話の感想を書こうと何度もパソコンを開き、書き出しては先に進むことができずにやめる。仕方なくノートにまとめて振り返ってみたりしているうちに何日も経ってしまいました。実は、後半に行くにつれて南葦ミトさんがこの作品に込める想いに圧倒されて私は身動き取れなくなっていたのです。テーマとして重く、何も考えずに生きてきた私が軽々しく書いていいのだろうかと尻込みしていたのです。

 それでも、感想を書くという企画を立ててらっしゃる真意を考えると当事者ではない私たちに「知って欲しい」「忘れないで欲しい」そんな思いが込められているのだろうと推測しました。そしたら、やっぱり私は最後まで書くべきなんだと今パソコンに向かっています。

ボウキョウ11話の感想

 正直、11話の感想必要なのか?と思っています。

 10話で充希の思いを父親に伝えられ、父親の充希に対して思っている深い後悔の気持ちを聞くことができました。更に、充希を支え続けてきた恋人真司の熱い熱い想いのこもったプロポーズ。もう10話だけで胸がいっぱいでした。

 11話は、これからの未来に向かって歩もうとしている充希たちの希望にあふれる最終話です。

 充希が真司に会えたこと、充希と父親が胸の内を語れたことは震災がきっかけです。震災が無ければ充希は真司と出会うことはなかったかもしれないし、父親とこんな素敵な心の交流をすることもなかったかもしれません。震災によって故郷を失い仕事を失い友や家族を失い、悲しくて辛くて乗り越えるにはあまりにも苦しい出来事ではあったけれども、それでもたくましく未来に向かって生きていく。そんな姿に私が励まされました。

 そして、主人公充希の好きな作家さんとして出てくる西山実里は実在している人かと何度も検索をかけました。ボウキョウの中に出てくる架空の作家さんのようです。ボウキョウの各話の冒頭に西山実里の小説が引用されています。

 11話の冒頭では

世界は恐ろしく残酷で、凄惨、かつ無慈悲だ。
それでも、見つめる角度さえ変えればきっと、
数多の希望に充ちていると、私は信じている。
西山実里〈VOICE〉より

見つめる角度さえ変えればきっと、数多の希望に充ちている

 本当に本当にその通りです。角度さえ変えれば実は幸せがそこにあるんですよね。素敵な一文です。もう額に入れて飾りたいぐらいに胸にグッときました。充希の漢字で”充ちている”というのにもグッときました。


 ここからは、私が書く「ボウキョウによせて」で恒例になっている作品に出てくる地名を調べるコーナー来ましたよ。

 11話では退院した充希が病院から見た阿武隈高地という地名が気になったので調べてみました。

 宮城県から茨城県に広がる高地のことのようです。わかりやすい画像をさがしてみたんですけどうまく見つからないのでふくしま教育旅行さんより福島県ってどんなとこ?から画像を拝借してきました。

ボウキョウ11-1

充希のいるいわき市ってどこ!?となるので別の画像を探してみました。ふくしまの旅より浜通りはじめての福島より画像をお借りしてきました。

ボウキョウ11-2

 いわき市から双葉、南相馬などの太平洋沿岸を浜通りという表現するみたいですね。それに沿うように阿武隈高地が北から南に走っているようです。

 これで作品中に出てくる高村光太郎の妻が言った中の通りの位置も把握できました。そうすると高村光太郎の妻が言った”安達太良”とは何だろう…?という疑問だけになります。

 安達太良という山でした。人の名前の店だと思っていたので結構衝撃でした。安達太良は奥羽山脈のようです。だから「いわきから見える空と比べられない」と充希が回想してるんですね。納得しました。

 最後に充希の出した結論を引用して終わりにします。

「あの家で過ごした十八年間はとっても幸せだった。だから、感謝をこめてサヨナラする。そしてこれからは、自分で選んだ場所で生きる。父さんと母さんみたいに、自分の生き方は、自分で決める」

 原発事故は無かったことにならない。故郷を亡くした悔しさも消えない。消える訳がない。それでも、過去に囚われて塞ぎこむより、自分で自分を幸せにすることが、今は必要だと思う。

<引用:ボウキョウ11話

 とても共感させられました。辛かった過去はどんな人にあると思います。過去に囚われてふさぎ込むよりも、これから幸せになるために前向きに生きていくこと。そして、自分で選んだ場所で生きること。小さなことでもそうです。結婚、仕事、友達関係、何もかも自分で選んでそこにいます。自分で選んだその場所で綺麗に咲く花になりたいです。


私ができること

 ボウキョウを読み始めてから、久しぶりに東日本大震災の動画やドキュメンタリーなど見ました。9年前なので分析されたデータなども出てきてとても考えさせられました。

 津波の映像では気分が悪くなる方もいらっしゃると思うのでデータとして見れるものを貼らせていただきます。とても強く、そして長い時間揺れている地震だったということがわかります。

 それと共に、災害は東日本大震災だけではないじゃないかと思ったのです。東日本大震災の時は専業主婦だったので被害の状況はたくさんニュースに流れてきて知っていました。それ以降に起こった地震と言えば私の記憶の中では熊本地震です。熊本地震の被害について全く覚えていませんでした。フルタイムで働きテレビを見ている時間がなかったことが大きかったです。

熊本地震についても調べました。震度7の揺れを観測し、動画には崩れた家や道路が映し出されていました。

 衝撃でした。私は全く知らなかったいう事実に。

 そして、ここ数年ある水害も回数が多すぎて忘れ去られている地域も多いんじゃないでしょうか。

 過去にしてしまっていた東日本大震災をボウキョウによって今も尚苦しんでいる人がいて終わっていないということに気づいたことで、私の記憶の片隅に押しやっていた熊本地震やここ数年の水害被害についても思い起こされてきたのです。

 途方に暮れました。どうしよう。流石に全部に何かをするって今の私には難しい。と。

 去年も千葉県の台風被害にふるさと納税をしようとしてあまりにも自治体が多すぎて選べなくなったことを思い出しました。どこの自治体も困っている。どこの地域も困っているのにそこから選んでしまうということへの罪悪感で身動きが取れなくなったのです。

 今年こそはそんなことになりたくない!

 ふるさと納税に関して、私は自分の自治体に入る税金を他の自治体に収めることに抵抗がありました。節約だからと家計のためにしていることが、実は自分たちの首を絞めていることに気づいていないのかな?と思っているのです。ふるさと納税した分自治体の税収が落ちるのです。税収が落ちたら自治体のインフラ、子どもたちへの教育、私たちへの医療が削られてしまうかもしれないという不安があったからです。そのため、ふるさと納税はしたことありませんでした。


 しかし、災害支援という形であればアリかなと考えています。



 ということで、ふるさと納税で災害支援できるサイトをここで紹介しておきます。残念ながら東日本大震災ことに関しては載っていませんでした。それでも、ここ数年の災害から選択できるので皆さんにおすすめしておきますね。

 今回、南葦ミトさんにサポート頂いた金額も福島へのふるさと納税に当てさせていただきます。とても楽しく考えさせられる時間を過ごさせていただきました。

 本当に本当にありがとうございました。


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