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インドのトイレ事情

以下、2006年ぐらいにインドを約一ヶ月放浪した際の出来事です。

インドの路上は凄まじい。そんなことはインドに行ったことがない人でも知っているだろう。ゴミは散乱し、野良牛が徘徊しているから当然その糞尿も垂れ流しだ。

そんな路上には多くのホームレスが暮らしている。日本のように段ボールで寝床を作るわけでもなく、ただ全身に布を巻きつけて寝ている姿はまるで安置された死体のようだ。彼らは路上で食事をし、路上で排泄し、路上で体を洗う。

身体を路上のどこで洗うのか?というと、水道管が壊れているのか水があふれている場所がごく稀にあり、そこで洗う。日本では考えられない光景だ。何も男性だけではなく裸の老母が路上で体を洗い、別の女は路上で洗濯をしている。これがデリーやカルカッタという大都市での話である。


インドの中で最も貧しい州であるビハール州に行った時には長距離バスが通るような幹線道路沿いの路上で子供が脱糞していた。

少し路地に入ろうとか物陰に隠れようという気は一切ないらしく、日本でいうなれば道路のサイドライン上で悠々と脱糞している。それをバスの中から見て「やれやれ」と思いながら、同時に「これぐらいしてくれないと海外に来たという気がしないよな」と思っていた私だが、バスを降りた所で猛烈に便意を感じてしまった。もちろん大きな方である。


そこはバスターミナルではあったが、バスの乗り換え専用なのか広野の真ん中にただバスが集まっているだけのところで、インドにしては珍しく露天の一つもない。トイレがないのは一目瞭然である。

しかしそれでも一応、切符売りの兄さんにトイレはないかと聞いてみると、兄さんはニヤッっとして立ちションのジェスチャーで小便か?と聞いてきたが、私がそっちではないと答えると「じゃああっちだ」と言う様子で広野を指差した。


もう既に覚悟はできていたので必死にそこを目指す。何しろ便意が強く限界が近い。人生初の野グソということも全く気にならなかった。背の高い雑草の茂みがあるのでその陰ですればよいだろうと歩を進めていると異変に気づいた。

気づけばあたり一面に間隔をあけて人糞が転がっている。気温が高いためにすぐに乾燥するのか臭いは全くないために気づかなかったが、私は既に野グソ場のど真ん中にいたのだ。

これほどの人糞があると、ある意味壮観である。便意を忘れてしばし固まってしまった。しかしすぐにまたこみ上げてくる便意。急いで他のモノと等間隔になるような場所にしゃがみ、用を済ませた。大空の下、用を足すということはなかなか爽快であった。

残念ながらこれ以降、野外で用を足す機会には恵まれていないがチャンスがあればまたしてみたいものである。

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