見出し画像

“国内だけでは無理”を覆した!海外経験ゼロ、全くの独学で英語スピーキング力を極めた日本人

今日は、どのようにしたら海外に一歩も出ることなく、日本国内だけで高度な英語運用力を身につけられるのか、という誰もが知りたいテーマを扱います。

英語教育の世界では、自ら工夫して国内だけ、かつ独学で高い英語の運用力を身につけた人たちのことを「成功した学習者」と呼んでいます。

一体どんな人たちなのか、興味がある人は以下の書籍がお薦めです。一般の読者にも読みやすいように専門用語は使わず、やわらかいタッチで短時間でスッと読めるような作りになっています。

要点だけ言うと、成功した学習者は皆例外なく英語は「学校で先生から学ぶもの」「他人から教えてもらうもの」ではなく、「自分で伸ばすもの」というマインドセットができた自律した学習者であったとのこと。日本国内だけで、高い英語力を身につけた人に共通する特徴だとか。

皆さんはいかがでしょう?

ちょっと話がそれました。で、今の日本には、海外経験がゼロ、かつ自らの工夫と努力だけで高い英語レベルに到達した人は数多くいますが、私の目から見て、中でも完成度が高く、最高峰に位置すると考えられる二人をここでは紹介したいと思います。そして、その成功の理由を私なりに分析してみようと思います。なお、ここでは主に「話す(聞く)力」に特化します。

まず一人目が、若い世代代表ということで、ベルちゃんこと、

          マジック・ベルさん

です。

まずは以下の動画をご覧ください。映画を使ってどのように勉強すればいいか具体的な学習法を提示してくれています。彼女が勉強を開始した高校生の頃の映像もあるので、どれくらいのレベルから始め、どう変わったか学習前と後の比較もでき、効果の具合が目に見えて理解できます。

音声面を聞く限り、個々の音、リズム、ストレス、テンポ、イントネーションなど見事に英語という言語のルールを正確に身につけています。また、学習法も第二言語習得の理論にかなったやり方をしていて、外国語習得の科学的な知見を忠実に体現しています。

そして何より、強い動機づけがあることがわかります。完璧になるまで英語ネィテイヴとそっくり話せるようになりたい、という強い欲求・意欲です。それを実現するための大好きな素材を見つけ、暇があったら英語に触れ、それを繰り返すことが苦にならない。なんなら1分1秒でも常に触れていたい。

朝起きてから寝るまで、日々英語を身近に置いていて、目、耳、口がフル稼働しています。こうして能動的かつ積極的に英語とかかわりながら、外国語習得に不可欠な「十分な接触量」の確保ができた。

このように「どうしてもそうなりたい」という「強い動機づけ」と、見たり、触れたりすることでワクワクする大好きな素材の発見。そして、将来はミュジーカル女優になって世界の舞台に立ちたい、あるいはディズニーに携わる仕事がしたいという長期的な目標も背後にあったのではと推察されます。これがdriving forceとなって英語習得の完成度を高めていったのではないでしょうか。

先ほど、音声習得の精度の高さについて触れました。それについてもどうやって発音のトレーニングをしたのか解説してくれている動画があります。

見ていて、楽しくてしょうがない様子が伺えます。ディズニー映画に
触れるだけで、快感物質のドーパミンが出まくっているようです。止められない止まらない、という感じがよく伝わってきます。こうなるともう手がつけられませんね。「英語」という言葉を聞いただけで幸せな気持ちになるのでは。

ここでは、映画のシナリオを使ってわかりやすく解説してくれているので、これをそのままそっくり真似してみるのも手です。ディズニー以外に、今はスクリーンプレイ社からたくさん映画のシナリオ本が出ているので何回見ても飽きない、大好きな作品を見つけて、ベルちゃんのやり方で1冊本ごとマルマル覚えてしまうのもお勧めです。

映画には日常遭遇するであろうかなりの場面・状況が含まれているため、現地にいる疑似体験が積めます。外国語習得に必要な「形・意味・場面」の3点セットで学習できるのも魅力ですね。

というわけで、若者代表としてマジック・ベルさんをご紹介しました。

そしてもう一人。

今度は年齢層の高い方の代表です。

戦後間もない時代に育ち、ラジオだけを聞いて独学でネイティヴも舌を巻くほどの流暢な英語力を身につけた日本人といえば、         

        Mr. DJこと小林克也さん

です。私がお手本にした人です。

では、何はともあれ小林さんの英語を聞いてみましょう。

いかにして、ラジオから流れてくる進駐軍の英語放送だけを聞いて、これほどの英語力を身につけたのでしょうか。外国人とまともに話をしたのは20歳、初めて海外(アメリカ)へ行ったのが29歳の時だと言うのですから、驚きです。

この秘密については、7月に発売された以下の書籍に詳しく書かれています。幼少期の生い立ちから今日まで、英語とのつきあいをインタビュー形式でまとめてあります。興味のある方は、本人の映像動画付きですので、こちらが参考になるかと。

ここでは、私なりの分析を通して、先ほどのベルちゃんのケースとの共通点を探りながら、英語の高度なスピーキング(リスニング)力をどうやって獲得していったらいいのかを考えてみたいと思います。

小林克也さんの英語、とりわけ発音を含むスピーキングが高いレベルに達した具体的な要因について、過去の著作や上掲の新刊、そして新聞、雑誌、ネットなどにある本人へのインタビュー記事を参考にまとめてみました。

1. 幼少期の学習経験

  • 英語との接触: 小林さんの最初の英語との遭遇は小学校の2,3年生。主にラジオから流れる米軍放送(FEN)であり、毎日1,2時間耳を傾けていた。これにより、ネイティヴ・スピーカーの発音やリズム、イントネーションに自然に慣れることができたと考えられます。特にラジオドラマの「ターザン」が好きでよくマネしていたとか。この時期に英語の音声に長期間触れることで、母語との違いを敏感に感じ取る能力が育まれ、ネイティヴの発音を模倣することで、より正確な音声の再現が可能になったと言えるでしょう。

 年齢的にも「敏感期」と言われる時期に、こういった体験ができたのも音
 声習得には大きかったと思います。しかも誰かに言われてやらされていた
 のではなく自ら進んでやっていた。先ほど「成功した学習者」のところ
 でも話したように、ここが重要です。

 高校時代には、目に入るものや、友達との会話もすべてを英語にしないと
 気が済まなかったと述べ、「瞬間英作文」を毎日のようにやっていたこと
 がわかります。こうして頭に浮かんだ「言いたいこと」から「言えるこ
 と」への変換練習
を大量にこなすことで、表現の持ち駒を増やしていきま
 した。ベルちゃんもそうですが、小林さんも一時期、集中的に明けても
 暮れても英語漬けだった時期を経験しています。二人の場合は、それが
 高校時代だったわけです。

2. 発音に対する意識と努力

・発音矯正のための専用のトレーニング:イギリスの俳優学校で実践されていた訛りを取るための音声訓練方法(ボイス・エアロビックス)に出会い、独自に改良して練習を行った。後に自身が開発した「English My Way」や「アメリ缶」という学習教材にてその一端を披露。詳しくは👇を。

この訓練法の繰り返しにより、発音の精度が高まり、自分の発音とネイティヴの発音の違いを意識し、それに合わせた調整を随時行っていました。

特に発音の基本として「数字の1-100」と「アルファベット」の重要性に着目している点はすごいです。その具体的な方法は👇を。

ネイティヴとの交流:外国人向けナイトクラブで司会を務めていた20代後半に、ゲストの海外アーティストと交流することで、実践的な発音やスピーキング練習ができる機会が増えていきました。実際のコミュニケーションの中で発音の微細な違いを学び、それに適応することでより自然な発話力が身についたのでした。また自分の英語が通じることで、自信を持ちさらに頑張ろうと強い動機づけに繋がったと言えます。

・ラジオの仕事:同時期、ラジオDJの仕事もするようになり、日・英とも言葉を正確に発音し、端的にわかりやすくリスナーに伝える意識が高まり、人一倍その感覚も鋭くなっていった。

3. リスニング能力の向上

  • 音声模倣: 話すことと聞くことは表裏一体。研究でも相関があると言われています。発音がよくなればリスニング力も高まると。ネイティヴ・スピーカーの発音を聞き、そのまま正確に模倣することで、より細かい音声の違いを聞き取る能力が向上し、またそれを自分の発音に反映させることができた。正の循環が出来上がっていったのでした。

4. プロフェッショナルな体験

英語DJとして、山下達郎、角松敏生、アン・ルイスなどのアーティストのレコード/CDナレーションを数多く担当。さらにトヨタをはじめとする日本企業の海外向けプロモーションビデオの英語ナレーションもほとんど小林さんが務めた。ハワイNo.1のアメリカ人DJ(カマサミ・コングさんなど)との交流を通じ、本場のトップのしゃべりやノリを体得。こうして30代のこの時期に、高いレベルで何度も発声、練習を繰り返すことで、自分の発音の弱点を克服し、発音の精度がさらに向上していった。

以前、カマサミ・コングさんにお会いする機会がありましたが、小林さんの英語はアメリカ人DJと比べても全く引けをとらずラジオ界では別格とのこと。ちなみにカマサミ・コングさんのDJです。

※なお、カマサミ・コングさんは、小林さんがナレーションを務める山下達郎の『Come Along II』にもゲストで登場しています。

また、プロとして聞かせる発音とは何かを模索し、英語は[r]や[l]よりもむしろ[m]と[n]の音がカギを握っていることを発見。流れのあるドライブ感を作り出すのはこの二つの音だと言う結論に達したそうです。

さらにsisterやteacherなどの単語の語末の[r]を落とすほうが、カッコよく聞こえるとも言っています。これは、[r]を一般的にしっかり出すアメリカなどでも、アナウンサーなどしゃべりのプロは落として響かせない事に、自らの発音体験から気づいたそうです。それについて語っている映像があります。11:34~です。survivortigerの発音に注目です。

映像では、survivorの語末の[r]の発音に関して、小林さん独自の発音のこだわりについて言及しています。私もこれを真似て、普段英語を話す時は、語末の[r]は響かせないようにしています(ブリティッシュ・イングリッシュもこれに近いですが、音の質が米語の場合と違うような感じがしてます)。

ずっと洗練されててカッコいいですよね。日本人の多くは英語と言えば巻き舌の[r]音だと勘違いして、やたら強調したがりますが、実は小林さんが言っているようにあまり誇張すると、田舎者丸出しでカッコ悪いんですよね。

12:50~Jump- Van Harenの発音もかっこいいですね。この動画で小林さんの発音の仕方を見ていると、何度も何度も声に出して練習した形跡が伺えます。音が体にしみ込んでいて、一体化しているような。It's like the sounds are soaked into his body and they are part of his.

きっと洋楽番組「ベストヒットUSA」でのカウントダウンは、本番前に相当の発声練習をしていたと推察できます。まさにPractice makes perfect.そしてこれこそがプロですね。That's what we call a real professional.


5. 発音練習の継続

定期的な発音練習: 小学校低学年より、毎日最低2時間はFENなどのラジオ番組に耳を傾け、しゃべりの練習素材として使いながら、声に出す発音練習を続けた。それは成人になっても続き、80歳を過ぎた現在も継続中。

6. 情熱とモチベーション

  • 自己啓発: 今でも発音に関する書籍や資料を積極的に模索し、最新の知識獲得に努めている。特に韓国のアイドルグループBTSの日本語や英語習得に関心を持ちチェックしているとのこと。このように音声習得に対する高いモチベーションを維持し、発音の改善を長期間にわたって続けることができている。

小林克也さんの発音が高いレベルに達しているのは、このような複数の要因が組み合わさった結果だと考えられます。これらの要因が相互に作用し、小林さんの英語発音の精度と流暢さを高めたと言えるでしょう。

7. 小林克也さんが行った具体的学習法

・ ボイス・エアロビックス
ボイス・エアロビックスは、発声や声の使い方に重点を置いたエクササイズです。これは、声の出し方や呼吸法に注目して、発音やイントネーションを改善するための練習です。具体的には、腹式呼吸を使って、単語一つ一つを可能な限りゆっくりと超スローで発声し、口の周りの筋肉と息の強さを鍛えるものです。

2. ものまね

ものまねは、英語の発音やイントネーションを学ぶための効果的な方法です。映画のキャラクター、ラジオのパーソナリティなどの話し方を模倣することで、自然な発音や話し方を習得します。これにより、場面や状況による声のトーンや調子、音の強弱、文の上げ下げなど単語そのものの発音の周辺にある英語らしさを生み出す音声領域を身につけることができます。ベルちゃんはディズニー映画のキャラクターを、小林さんはプレスリーのモノまねを相当やり込んだとのこと。

3. ささやき(ウィスパリング)

ささやきは、通常の音量よりも小さな音でささやくように話す練習です。これにより、発音の正確さや音の出し方を意識することができ、特に子音に有効だとか。日本人が弱い[s]や[k][g]などの音がクリアになると、小林さんは語っています。

4. 早口言葉

早口言葉を使った練習は、発音の滑らかさやスピードを向上させるための方法です。難しいフレーズや言葉を速く発音することで、舌の運動や口の動きを鍛え、流暢な発話ができるようにします。マザーグースなどは格好の素材です。

5. とび乗り

「とび乗り」は、シャドーイングのことで、リスニングとスピーキングのスキルを同時に向上させる方法です。音声素材を再生しながら、聞こえてきた英文を半テンポ遅れて追いかけて真似して声に出して発音します。慣れないと難しいですが、どこまでついていけるかといったゲーム性があって意外にハマります。この練習により、発音やイントネーション、リズムを自然に身につけることができます。最初は意味のわかった英文でやるといいでしょう。小林さんはFENから聞こえてくる未知の英文でやっていたそうです。

6. ラップ

ラップを使った練習は、英語の強弱リズムを鍛えるにはとても効果的な方法です。ラップのリズムで発音することで、英語の持つ強弱やスピード感を身につけることができます。

8. セルフ・モニタリング

セルフ・モニタリングは、自分の話し方や発音を録音し、再生してチェックする方法です。自分の話し方を客観的に評価し、改善点を見つけることで、発音や表現力を向上させます。録音を通じて、自分の弱点や強みを把握することができます。録音機がなくても、自分の耳に手を当てて、内側にかぶせるようにすると自分の声がとてもよく聞こえます。原始的な方法ですが、これも小林さんが発明した方法だとか。

9. アクション(動作)

アクションを伴った学習は、体を使って言葉やフレーズを習得する方法です。例えば、歩きながら英語を話す、座って立ち上がる動作を行いながら話す、ジェスチャーを加えて話すなど、体の動きと連動させることで、記憶を助け、学習を楽しくする効果があります。身体的な動作が脳の活性化に役立ち、言葉の意味や使い方がより自然に身につきます。

小林克也さんは、これらの方法を組み合わせることで、英語と「遊んで」いたと著書で述懐しています。

それでは、せっかくなので、ここで実践練習をしてみましょうか。

山下達郎さんの「Summer Sun」という曲の紹介ナレーションを小林さんがやっている短い音声があります。これを使ってみましょう。

【手順】
①訳を見て内容を頭に入れる。声に出して読むとなお可。
②英文の単語や文法、構文をチェックした後、一語一語をゆっくりはっきり発音。
③モデルの音声を聴く。息継ぎ、間、強弱、抑揚などに注意する。
④意味のカタマリを意識して、徹底的にDJになりきって声に出してマネる。
⑤同じスピードで始めから終わりまでそっくりかぶせて言えるまで練習。

【英文】
Hey, thank you very much for tuning in to a beautiful FM radio.

And I think I’m gonna dedicate this beautiful song for you.

This is the latest from Tatsuro Yamashita, something called "Summer Sun," Hey…..

【訳】
こんにちは、素晴らしいFMラジオ局を聴いてくれてありがとう。
この美しい曲をあなたに捧げます。
山下達郎の最新作、「夏の太陽」です。

3:02~です。


● ベルちゃんと小林克也さんの共通点


日本にいながらにして高度な英語運用能力を獲得した二人には、以下のような共通する特徴があります:

  • 多様なメディアの活用:映画、テレビ番組、ラジオなど、さまざまな英語メディアを活用して、興味のあることを選ぶことで、学習を楽しいものにしています。小林さん曰く、英語と真剣に「遊ん」でたと。勉強の対象ではなく、遊び相手だったわけです。ベルちゃんも、英語のことをあたかも大好きな親友であるかのように捉えています。

  • 会話パートナー:海外の友人、仕事関係の人など言語パートナーと定期的に会話をすることで、実際の会話の中で英語を使う機会を作っています。実際に使ってうまくいったこと、失敗したことは忘れません。この体験の繰り返しが両人に共通していました。

  • 英語での発信:ブログやSNSなどで英語で文章を書くことで、話す力を間接的に向上させます。話すことと書くことは表裏一体で、相関があると言われています。つまり「話す」という行為は「書く」という行為を速くしたもので、脳内処理は似たような経路をたどって、最終的な産出場所が違う(音声なのか文字なのか)だけと考えられています。特にベルちゃんは英語を書くことにも積極的だったようです。

  • 興味・関心の維持:自分の興味や趣味に関連した内容で英語を学ぶことで、学習へのモチベーションを維持しています。小林さんの場合は洋楽や映画、ベルちゃんの場合はディズニー映画やミュージカルです。

  • 成功体験の有無:二人とも学習の進捗や成果を実感し「通じた!」「ほめられた!」という小さな成功体験をいくつも積み重ねていました。この成功体験は成功した学習者に広く共通する特徴です。人に褒めてもらえないなら自分で自分を声に出して褒める。これ大事です。

  • さまざまなアプローチの試行:異なる学習方法や教材を試し、自分に最適な学習スタイルを見つける柔軟性を持っています。

  • 長期的な視点:英語学習は長期的な取り組みであると理解し、短期的な成果を追い求めずに、持続的に学習を続けています。二人とも失敗や挫折を経験しながらも、途中で止めず継続的に努力していました。

  • 学習の習慣化:毎日の学習を習慣化し、少しずつでも継続的に取り組むことで、言語能力を着実に向上させました。例えば、半径1メートル以内に常に英語を置いて、毎日長期に渡りかなりの時間英語と触れる機会を持っていました。

●感情を言葉に載せるのが上手い
 ここが平均的な日本人学習者との大きな差かもしれません。小林さんは
 俳優、ベルちゃんは舞台女優ということもあり、役に入り込み、気持ちを
 言葉に載せる技術が優れています。そしてお二人とも歌が上手い。
「歌が歌えれば、英語でのナレーションも上手いはず」とは小林さんの弁。
 確かにベルちゃんも歌がお上手です。

特に英語らしさを生みだす、リズム、イントネーションなどはこういったことも関係していると思われます。

そして最後に一番の共通点と言えば、「なりきってマネる」でした。
二人の学習法を見ていた思ったのがこれでした。どちらもエンタメ業界に属し、俳優や舞台で役者になりきることを生業にしていることとも関係があるのかもしれません。対象は洋楽アーティストや俳優。小林さんの場合は、高校生の頃はプレスリーがその対象で、ベルちゃんはディズニー映画のキャラクターでした。

なりきってマネる」は、日本の英語学習の多くが、見落としている点かもしれません。対象のモデルに入り込んで、その人の感情や言葉のリズム、イントネーション、間合い、テンポを完璧に再現するのです。ここまでやってる人は少ないかも。

というわけで、これらの特徴が共通していました。

この二人を見ると、日本で生まれ育ち、普通に義務教育を受けて英語を学んだ純ジャパが、子供のころから特別な教育を受けなくても、また留学しなくても、国内だけで、ここまでのレベルまでいけるんだという刺激を与えてくれます。

AI時代に入って便利になったとは言え、結局生身の人間が外国語を覚えるという行為の本質的なところはいつの時代も変わりません。同じなわけです。

どうか最初からどうせ無理とあきらめずに、二人のケースを参考に、自分の英語学習にも使えるところは取り入れて、高度な英語運用力の獲得を目指してみてください。あなたにもきっとできます。You can do it!  Good luck!

・ネィティヴスピーカーのような発音へのこだわりについて

英語はもはや「国際共通語」であって、英語ネイティヴだけのものではない、というのが今の世界の流れになっています。確かにそうなのですが、一方で、せっかく英語をやるのだからどうせならネイティヴに近い誰からも聞き返されないクリアーな発音で英語を話したい、という人がいるのも事実です。

そこで、発音をネィテイヴ・スピーカーに近づけることの利点について見てみましょう。以下のような利点があります。

  1. コミュニケーションの明瞭さ: 発音が正確だと、相手が自分の言っていることを理解しやすくなります。これにより、誤解や混乱を減らし、スムーズな会話が可能になります。

  2. 自信の向上: 発音が良くなると、自分の話す英語に対して自信が持てるようになります。自信を持つことで、会話をより積極的に楽しむことができるようになります。

  3. リスニングの改善: 発音を意識することで、英語の音声の細かい部分に気づくようになり、リスニング能力が向上します。特に世界のニュースメディアの80%は英米系の英語なので、理解できる情報量が増えます。

  4. プロフェッショナルな印象: 発音が良いと、ビジネスや学術の場でよりプロフェッショナルな印象を与えることができます。面接やプレゼンテーション、ビジネス会話などで有利になることがあります。この利点はかなり大きいです。実際、こういうことがあるとよく聞きます。

  5. 社会的な受け入れ: 発音がネイティヴ・スピーカーに近いと、社会的な場面での受け入れがスムーズになることもあり、他の人々とのコミュニケーションが円滑になります。

  6. 地域性の理解: 発音を学ぶことで、特定の地域やアクセントに関する理解が深まります。これにより、特定の地域の言語習慣やニュアンスも理解しやすくなります。

また、この点についてアカデミックな論文や研究報告もあります。発音の改善がもたらす効果について述べたものです。

  1. Derwing, T. M., & Munro, M. J. (2005). "Second Language Accent and Pronunciation Teaching: A Research-Based Approach." TESOL Quarterly, 39(3), 379-397.

    • この論文は、第二言語学習者の発音がコミュニケーションの明瞭さにどのように影響するかについて探求しています。研究者たちは、発音の向上がリスナーの理解度を高め、誤解を減少させることを示しています。

  2. Jenkins, J. (2000). "The Phonology of English as an International Language." Oxford University Press.

    • Jenkinsは、国際的な英語使用における発音の重要性を論じており、発音が国際的なコミュニケーションの明瞭さに寄与することを示しています。特に、発音の改善がネイティブスピーカーとのコミュニケーションをどのようにスムーズにするかについての詳細な分析が含まれています。

  3. Levis, J. M. (2005). "Changing Contexts and Shifting Paradigms in Pronunciation Teaching." TESOL Quarterly, 39(3), 369-377.

    • Levisは、発音教育の進化とその効果について論じており、発音の改善が学習者の自信を高めるとともに、コミュニケーション能力を向上させることを示しています。

  4. Munro, M. J., & Derwing, T. M. (1995). "Processing Time, Accent, and Comprehensibility: A Study of Native and Non-Native Speakers' Speech." Language Learning, 45(1), 73-97.

    • この研究は、発音の改善がリスニングの理解度や処理時間に与える影響について述べています。発音の明瞭さがリスナーの処理時間を短縮し、理解を容易にすることが確認されています。

さらに日本人学習者の発音改善がもたらすプラス面についてのものもあります。

  1. Inoue, S. (2013). "Japanese EFL Learners’ Pronunciation: A Review of Research and Pedagogy." Asian EFL Journal, 15(2), 104-126.

    • この論文は、日本人英語学習者の発音に関する研究のレビューを行い、発音改善がどのように学習者のコミュニケーション能力や自信に影響を与えるかを論じています。特に日本人が直面する発音上の課題とその克服方法に関する詳細が述べられています。

  2. Saito, K., & Lyster, R. (2012). "Effects of Instruction on Japanese Learners' Pronunciation of English Vowels." Language Learning, 62(2), 238-270.

    • この研究は、日本人学習者の英語の母音発音に対する指導の効果を調査しています。発音改善がリスニング能力やコミュニケーションの明瞭さにどのように寄与するかを実証的に示しています。

  3. Matsuda, A. (2006). "A Comparison of Japanese and American English Pronunciation: Implications for Pronunciation Instruction." TESL-EJ, 10(1).

    • この論文では、日本語とアメリカ英語の発音の違いを比較し、日本人学習者がどのような発音の課題に直面するかを分析しています。発音の改善が学習者の英語の流暢さや理解度に与える影響についても言及されています。

  4. Tanaka, K. (2007). "The Effect of Pronunciation Instruction on Japanese EFL Learners' Speech Intelligibility." International Journal of English Linguistics, 3(4), 123-138.

    • 発音指導が日本人英語学習者のスピーチの明瞭さにどのように影響するかについての研究です。発音改善がリスナーに対する理解度を向上させることが示されています。

  5. Yoshida, R. (2014). "Improving Japanese Learners’ English Pronunciation: A Study of Vowel Length and Consonant Clusters." Studies in Second Language Acquisition, 36(3), 315-339.

    • 日本人学習者が直面する英語の母音長や子音クラスタに関する課題を扱った研究で、発音改善がリスニング能力や会話のスムーズさに与える影響を探求しています。

これらの研究は、日本人学習者の発音改善のメリットを具体的に示していて、発音がコミュニケーションやリスニング、プロフェッショナルな場面でどのように貢献しているかを理解する上で参考になります。

というわけで、やはり発音はコミュニケーション上の大事な要素であり、いいに越したことはありません。聞き手に何度も聞き返えされると、話す側も自信を無くして話すのをあきらめてしまうことにもつながります。とりあえずお手本に近づくよう努力し、通じやすい英語を目指すのが一番かなと思います。

最後に、ネイティブのような発音でなくても、きれいで適切な発音ができると相手の心証が違うとも言えます。NHK国際放送局でキャスターを務めていた東海林さんは、次のように述べています。

綺麗で適切な発音は、英語の信頼度を増してくれます。それだけでなく、知的で教養のある人だという認識を与えることができるので、言っていることそのものにも信ぴょう性を持たせることができるでしょう。」

          (東海林(2018)『英語の発音・話し方技術22』p12)




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?