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9月の読書

今月はそこそこに読めて8冊でした。
下記は読んだ順です。

  • 『青く滲んだ月の行方』青羽悠

  • 『凪に溺れる』青羽悠

  • 『檸檬先生』珠川こおり

  • 『小説家になって億を稼ごう!』松岡圭祐

  • 『チグリスとユーフラテス』新井素子

  • 『コーリング・ユー』永原皓

  • 『言の葉は、残りて』佐藤雫

  • 『神の悪手』芦沢央

圧倒的におもしろかったのは『神の悪手』

9月に読んだ8冊の中で圧倒的におもしろかったのは、芦沢央さんの『神の悪手』。
2021年に出版された作品で、現時点ではまだ文庫化はされていません。
将棋を題材とした五つの短編からなる小説ですが、将棋がわからない人でもこれは楽しめる!
よく、将棋の棋士をメインにした小説ってありますけど、『神の悪手』は、題材としつつもやっぱりミステリーなんですよね。
とりあげるのも、棋士だけでなく、被災者への将棋ボランティア、奨励会の順位戦、詰め将棋、対局の中継、将棋の駒を作る師弟とバラエティ豊か。
前にもどこかで書きましたが、芦沢央さんの短編って、短い中にしっかり読書の予想を裏切る結末を持ってくるからすごい。
長編って、ある程度おもしろくなるものだと思うんですよ。
出版されているものだと。
でも、短編がおもしろい人って、本当におもしろい話が書ける人だと感じています。
そういった意味でも、芦沢央さんはおすすめです。

こんな未来もあるのかも。『チグリスとユーフラテス』

新井素子さんの『チグリスとユーフラテス』もなかなか衝撃的でした。
この作品は、新井素子さんの30作目にあたる小説で、出版されたのが1999年になります。
けっこう前の作品なんですよね。
職場の読書好きの後輩に薦められて読んでみました。

地球が人口増加なんかでそろそろ人が住めなくなるってことで、宇宙に移住することが検討された未来の話。
その中で実際に宇宙への移住が行われた惑星ナイン。
宇宙船に乗って30年近くかけてたどり着いた人類は、地球から持っていった人工子宮などの繁殖に必要な機器をフル活用して、どんどん人口を増やしていきます。
スタート時、35名(惑星ナイン到着時に31名)だった人類は、そこからピーク時は120万人を超えるまでになります。
しかし、あるときから、人口の停滞、減少が始まります。
出生率が著しく下がっていくのです。
人工子宮が問題だったのか、地球の人間には惑星ナインの環境が合わなかったのか。
理由がわからぬまま、どんどん子どもが産まれなくなり、ついに、惑星ナイン”最後の子供”であるルナが生まれます。

『チグリスとユーフラテス』は、このルナが、病気などのさまざまな理由でコールドスリープされていた人たちを、一人ずつ起こしていくところから物語が始まります。
つまり、小説が始まった時点で、すでに最後の子供が産まれ、惑星ナインに残された人類は、ルナと、コールドスリープされている人だけになっちゃってるんですね。
起こされた人は、びっくり!
眠っている間に、惑星ナインがほぼ壊滅状態になっているんですから。
生きている人間は自分とルナだけ。
絶望的な現実を見せられて、起こされた人たちはなにを思うのか。

人間の生きている意味を問い直させられる名作です。

新人賞受賞作も3冊

さて、9月は、新人賞受賞作も3冊読みました。
小説現代長編新人賞から、珠川こおりさんの『檸檬先生』。
小説すばる新人賞から、永原皓さんの『コーリング・ユー』と、佐藤雫さんの『言の葉は、残りて』。
デビュー作読むの好きなんですよね。
そこから、その作家さんのその後の作品を追っていくのがわりと楽しい。
青羽悠さんも、デビュー作を読んで、今月残りの2冊を読んだところです。

さて、この中だと、考えさせられたのは、『檸檬先生』かな。
いろんなものが色に見えてしまう共感覚を持つ小学生が主人公。
音にも数字にも、人にも色が見えてしまうというなかなか大変状態。
だから、周囲とうまく打ち解けられず、孤立しているところに、同じ共感覚を持つ中学生の檸檬先生と出会い、そこから成長していく物語です。

『コーリング・ユー』は、知能が高く人間の言うことを理解するシャチとの話で、『言の葉は、残りて』は、鎌倉幕府の三代将軍・源実朝とその妻・信子の和歌を中心においた物語でした。
この三作は、いずれもしっかり資料を読み込んで、研究して書かれているのがすごく伝わってきてよかったです。

来月読みたい本!

さて、10月はちょっと今月よりは冊数が減るかもです。
ちょっと、自分も小説書きたい気持ちが溢れてきているので。
それでも、芦沢央さんの『夜の道標』(2022年8月出版)は読みたいなあ。
あとは、新人賞受賞作もいくつか手に取りたいし、読み途中だった『斜陽』も読み切りたい。
仕事はそこそこに忙しくなってきたので、無理ない範囲で10月も楽しみます。




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