今年読んだ本ベスト5
2022年もついに大晦日を迎えました。
今年は仕事が忙しくて、ゆっくり読書三昧とはいかなかったけど、89冊の本と出会えて割と楽しかったです。
そんな中で、特に気に入った本を簡単に紹介していきます。
『かがみの孤城』辻村深月
まずは、辻村深月さんの『かがみの孤城』です。
出版されたのは2017年5月11日で、2021年3月5日に文庫版となりました。
2018年の本屋大賞にも選ばれた作品で、私もそこから読んでみようと思って手に取りました。
ちょうどアニメの映画化もされていて、100万部を超えるヒットを生んでいます。
100万部ってとんでもないですよね。
出版不況で、10万部いけばベストセラー。
初版1万部のいかない小説があたり前だって言われている時代にですよ。
どんな話かを簡単に。
主人公は中学一年生のこころ。
同級生から受けた仕打ちが原因で不登校になります。
親はこころのことをなんとかしようとするんですが、いざ学校に行こうと思っても、朝になると体が動かない。
行くことになった子供育成支援教室にも通えず、親からは冷たい視線を浴び、部屋に引き籠る生活を続けています。
5月のある日、自室の鏡が突然光り出し、こころはその中に吸い込まれていきます。
そこには大きな城と6人の中学生がいました。
その城の中に、鍵が隠されていて、鍵を見つけた一人だけが願い事を叶えることができる。
そんな中で、こころたちはぶつかり合ったり、現実と向き合ったりしながら成長していきます。
実は何気に、辻村深月さんの作品読むのって初めてだったんですよね。
だって、文庫化された小説、全部が全部分厚いんですよ。
分厚い上に上下巻とか。
だから、なかなか気軽に手に取ることができずに。
でもね、これは読んで大正解。
『かがみの孤城』も文庫版だと上下巻だけど、止まることなく一気に読み切ってしまいました。
『白銀の墟 玄の月』小野不由美
2019年に出た〈十二国記〉シリーズの最新刊ですね。
文庫本で4巻まである作品です。
十二国記を私が読み始めたのは高校生のときですね。
あれから随分経ちましたが、色褪せることなく心を動かされます。
『白銀の墟 玄の月』は、戴国の麒麟である泰麒が主人公。
戴国を救うために、麒麟としての力を失ったままなのに、李斎とともに、帰国します。
相変わらず、小野不由美さんの表現がきれいで、どうやったらこんな文章になるのか、と物語が動き出す前からぞくぞくさせられていました。
しかし、物語全体としてはかなり苦しい。
シリーズ全体を見ても、どうして戴国にばかりこんなに厳しいのかと感じてしまうくらいに。
4巻もあるから、その中で気に入っていく登場人物もいるのに、
「えっ!そこでそんなことになるの?」
ってことが度々起こり。
もう、本当に戴国にもっと救いを与えていただきたい。
そう思いながらも、次はどんな話になるのか今から楽しみです。
『黒牢城』米澤穂信
続いては、私の大好きな作家である米澤穂信さん。
『黒牢城』は、2021年6月に出版され、第12回山田風太郎賞受賞、第166回直木賞受賞、第22回本格ミステリ大賞受賞と、とんでもない小説です。
米澤穂信さんは、『儚い羊たちの祝宴』を読んでからはまり、〈古典部〉シリーズを始め、既刊はすべて読破しているくらいに好きです。
ただ、最初、この小説のことを聞いたときは、
「黒田官兵衛かー。歴史物にいっちゃったかー」
なんて思っていました。
というのも、いろんな作品を書いている方だけど、高校生くらいを描いた作品が特に好きだったものですから。
ですので、なかなか手を出さずに、先に読んでおきたい小説を読み進めていて、出版から一年たってようやく読みました。
『黒牢城』は、荒木村重を中心として描かれています。
織田信長を裏切った荒木村重を諫めにきた官兵衛。
それを村重が殺さずに、土牢に閉じ込めてしまうところから始まります。
織田軍との戦いが始まる中で、城内で起きる不可思議な事象。
その謎を解くために、土牢に入る官兵衛に助言を求める村重。
いくつもの謎が出てきますが、その謎もさることながら、村重と官兵衛のやりとり、敵である官兵衛がなぜ村重に協力して助言を与えるのか、見どころはたくさんあります。
正直、歴史物だからどの程度のものになるのかと思っていましたが、いやーとても見事でした!
読んでいてまったく違和感がなく。
もちろん、史実に沿っているものの、ミステリー部分は完全にフィクションですよね。
でも、読んでいくと、本当にこんなことがあったんじゃないかなって感じてきてしまいます。
『汚れた手をそこで拭かない』芦沢央
2022年は一番読んだ作家さんは芦沢央さんでした。
最初に読んだのが、『火のないところに煙は』で、ちょっとホラーの入ったミステリー。
きっかけは、YouTubeのほんタメ!で、たくみさんが紹介していたことですね。
今年、初めて読んだ作家さんでしたがすごくおもしろくて、既刊13冊を全部読んでしまいました。
その中でも、私が一番好きだったのが、『汚れた手をそこで拭かない』です。
短編集になるんですが、その中でも、教師がプールの栓を閉め忘れて、大量に水を無駄にしてしまう話が好きでした。
水を大量に放出してしまったって、けっこうなミスなんですよね。
プール全体の約半分ほど。
この教師は、どれくらいの水が放出されていくらぐらいの金額がかかるかをものすごく真剣に検討するんですね。
そして、素直に謝れば、被害弁済と注意くらいで済んだかもしれないのに、誤魔化す方向に頭を使っていきます。
いやね、こういうことって誰にでも起こりうることで、誤魔化したくなる気持ちもすごくわかる。
だから読んでいてどきどきするし、おもしろかったです。
芦沢央さんの作品は、個人的には短編のほうが好き。
将棋を題材にした『神の悪手』もかなり良かったです。
でも、長編もそれはそれでおもしろくて、赤ちゃんの取り違えを描いた『貘の耳たぶ』とか、今年出た『夜の道標』はかなり好きでした。
『medius 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼
この作品は、2022年にドラマ化もされたので知っている人も相当いると思います。
元々、表紙が素敵で気にはなっていたのですが、ドラマ化されると聞いて慌てて読みました。
これもまた、「やられたー!」という感想がまず出てきます。
どんでん返しものってとても好きな私です。
綾辻行人さんの『十角館の殺人』、道尾秀介さんの『シャドウ』、乾くるみさんの『イニシエーションラブ』とか、毎回、さっぱり気付かずに驚かされます。
これもねー、本当にすごくよかった。
ある程度、読者に予想させておきながら、
「そこでそっちの方向からくるのかー!」
と思わず笑ってしまいました。
おわりに
ほかにも素敵な作品はたくさんあったんですよ。
今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』
森博嗣さんの『すべてがFになる』
宮下奈都さんの『羊と鋼の森』
夏木志朗さんの『ニキ』
宮本輝さんの『流転の海』
宿野かほるさんの『ルビンの壺が割れた』
貴志祐介さんの『青の炎』
珠川こおりさんの『檸檬先生』
宇野碧さんの『レペゼン母』
町田そのこさんの『宙ごはん』、『美しが丘の不幸な家』
浅倉秋成さんの『俺ではない炎上』
ほかにも書ききれないけどたくさん!
充実した一年となりました。
2022年は、新人賞受賞作を多めに読んだので、その中でも気に入った作家さんを2023年は追っていこうかなって思います。
それでは、来年もどうぞよろしくお願いします。
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