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国際バカロレア留学の成功の秘訣(と僕が思うもの)

前の原稿で、子供をIBプログラムに送るには親もIB修行するつもりで、と書いた。

その中で最も重要なことは2つあると思っている。

① 先生やクラスメートの親と情報交換をしっかりすること

② 親自身がIB学習者の資質を身につける(あるいはつけようとする)こと

ことの2点だ。

今日は、そのうちのひとつ「先生やクラスメートの親と情報交換をしっかりすること」について書く。


その前に、娘がIBスクールに入学することになったいきさつから話したいと思う。

僕がマレーシアに赴任した当時、娘は4歳、息子は2歳だった。そのため、まずはどちらもローカルの幼稚園に入学させた。歩いて10分程のところにある幼稚園では、先生方は基本的には英語で接してくれ、マレー語の簡単なクラスもあるところだった。幼稚園なので、基本読み書きはできなくてもOKで、英語などまったく話せない子供たちも、割と楽しんで通っていた。


そのころ、小学校を選ぶのに、IBにするなどとは全く考えていなかった。今ここでエラそうにIBを語っているが、IBの凄さと素晴らしさを知ったのは、恥ずかしながら娘を入学させた後だった。


マレーシアでは公立校の費用は安いが、基本的にマレー語で授業を行うので、日本人が通わせるのはインターナショナルを選ぶことがほとんどだ。我が家も例外ではなく、家から通える範囲のインターの小学校を見て回ることになった。


通学可能な範囲にある学校は4校程度だったため、すべて見て回った。その中の一校は地元でも有名な優秀校で、しかもマンモス校だった。カリキュラムはイギリスのケンブリッジ式だった。1クラス40名くらいで小中高一貫のカリキュラムだ。


当初は入学可能ならばその学校に入れようと、親としては思っていた。だが、他の学校も見に行こうと思い、見学した1校が現在娘の通う学校だった。


その優秀なマンモス校に比べると、IBの学校はこじんまりしていて、よく言えばアットホーム、悪く言えばあまり施設が充実していないところだった。しかし、担当してくれた小学校プログラム部門の責任者の先生の感じはとてもよく、僕と妻は好感を持った。その責任者の先生はインド人の女性の先生で、自ら娘の入学試験を行ってくれた。


試験の結果、「英語力は低いけれど、指示は理解できていて、基本的な算数の能力もあるので大丈夫」と入学を許可された。


だが、その時点ではまだ僕はマンモス校の方を優先すべきと思っていた。少し厳しめだが、しっかりと教育してくれることが定評の学校だったし、家からもそちらの方が近かったからだ。だが、最終的にはIB校に決めることになった。


入学の決め手となったのは、あまり自己主張しない娘が「ここがいい」と、きっぱり言ったからだった。すでにマンモス校のほうに手付金を支払っていたが、娘が望まないならば仕方ない。妻と話し合って、娘をいまの学校に入学させることに決めた。


最初の1年間、娘の成績は決して良くなかった。英語がほかの子にくらべて圧倒的にできなかったからだ。そのうえ、宿題が毎日でる。正直日本の小学校1年生とくらべても、質量ともかなり厳しい宿題だった。

なかなか理解が進まず、宿題もできない娘には、妻と交互でつきっきりで宿題を教える毎日だった。あまりに算数ができなくて1ページ進むのに3時間かかった時もあった。

思えばこれが親のIB修行の第一歩だった気がする。娘の直面する問題に親も一緒に直面して、一緒に乗り越えるのだ。これはIBに限らず、小学校に親子で留学するならば必ずやらなくてはいけないものだと思う。


そんな大変な中、娘が偉かったのは、どれだけ時間がかかっても、どれだけわからなくても、途中で投げ出したり、逃げたりしなかったことだ。また、言語に頼らないアートや体育はとても楽しんでいたし、前の原稿で書いたイベントで踊ったり歌ったりするのも楽しんでいた。


そして何より、娘は友人に恵まれていた。クラスに日本人は一人もおらず、周りはみな英語ばかり話す中、なぜか娘はちゃんと友人たちと仲良くやれていた。というか、クラスメートが娘をかわいがってくれたようだ。

毎日娘に「今日は学校はどうだった?」と聞くと「うん!楽しかった!」と毎日答えていた。友人たちも、インド系マレーシア人、中華系マレーシア人、マレー系マレーシア人、アフリカ系アメリカ人、中国人、マレーシア系ドイツ人など様々で、3年生の時にはシリアからの亡命者の子までいた。そこまで多様性があるので、娘ひとりが日本人であることなど、些末なことのようだった。


今でもそうだが、娘の学校では、親がSNSを使ってグループを作ることが一般的だ。そこでは、質問しあったり、学校のやり方について議論したりする。ちょっとうざいこともあるが、基本的に無視していても誰も文句は言わないので気は楽だ。何か質問のあるときは、そこに投げればたいてい誰かは返信してくれる。いい人が多いのだ。


そして、娘の中の良い友人の親とは、ラーニングセレブレーションやイベントでしょっちゅう顔を合わせるので、自然と友達になる。つまり、学校のイベント等に頻繁に参加していると、同じようにイベントに積極的な親同士で仲良くなることが多い。そうすると、クラスのSNSとは別に「気の合う友人」として彼らと付き合うことができる。娘のクラスメートのインド系マレーシア人の家族とは、家ぐるみの付き合いが続いており、一緒に食事や旅行に行ったりしている。

そういった交流の中で、先生の評判や他の学校との比較など、ネイティブの人々の重要情報が回ってくるようになる。それはとてもありがたかった。
学校をやめた子でも、親同士の交流が続けば、移った先の学校の情報が入ってくるし、子供たち自身、やめた子も含めたグループチャットなど作って、交流を続けている。


さらに、学校の行事やイベントに参加することで、先生との交流が深まる。どのようなポリシーのもと、先生が指導しているのか、子供のことをどう評価しているのかがおのずとわかってくる。もちろん正式な2者面談もあるので、その時に聞くこともできるが、先生と打ち解けた関係になると、もっとフランクな意見も聞くことができ、参考になる。


学校の方でも、常にイベントに参加し、先生と積極的に交流してくれ、建設的な意見を述べてくれる親は歓迎してくれる。校長先生と直接話すことも割と簡単だ。


しかし、まったく問題がなかったわけではない。娘が小学3年のとき、同じく海外から来た子にイジメを受けた。イジメというよりも、今思い返すと、単なる意地悪だったのだが。

例えば、その子は娘の持っている(日本で買った)文房具がかわいいといって、奪って自分のものにしたり、ミニテストが満点だったご褒美に先生からもらった景品をその子に奪われたりしていた。また、娘が持っていたハーブを使った蚊よけのリキッドがくさい、といって文句を言ったりしていた。

ある日娘が満点の答案を持ってきたのに景品がないのに気づいて、尋ねると「〇〇ちゃんに取られちゃった」と話したのがきっかけだった。先生が満点の子だけに景品をあげるので、その子は娘から景品を奪って、親に満点を取ったとウソをついていたらしい。

他にされたことは?と聞くと、いくつか上にあげたような話をした。僕と妻は普段から先生と交流があり、ミニテストの日程や満点の子には景品をあげることもわかっていたので、気づくことができた。


僕と妻は直ちに担任の先生とプログラム主任の先生にメールを書き、対処をお願いした。担任の先生はいち早く動いてくれ、クラス会議を開き、事実確認をした。そしてそれが事実と判明すると、皆の前でその子に娘に謝るように指導した。プログラム主任の先生は、いじめをした子の親に警告書を送った。その後、いじめは起こらなくなった。


そうなった理由は、結局、それは日本のような、1対多ではなく、「その子vsうちの娘」という構図でしかなかったからだ。その子は、他のクラスメートにも、娘に意地悪をするように言ったらしい。しかし、入学からずっと一緒だったクラスメートたちは、絶対にいじめに加担しなかった。おかげで娘は、精神的にダメージを受けずに済んだ。ちょっとヤなことがあるなあ、くらいにしか思わなかったと話していた。

娘はびっくりするくらい、さばさばしていて、「〇〇ちゃんって、悪い子なんだよねー、だめだよねー」といいつつ、そのことが終わっても、その子とは普通に接していた。「別に、いっつも悪い子ってわけじゃないんだよねー」と話していた。

数か月後、結局イジメたその子の方が学校になじめずに、小学校3年の終わりで辞めた。IB学習者の資質のなかの「フェア」や「オープンマインド」に反している子を、学校も引き留めはしなかった。


そんな娘の小学校生活を見ていた弟は、幼稚園を卒業したら絶対にお姉ちゃんと同じ学校に行く、と言ってきかなかった。親としても反対する理由はない。かくして、姉弟ともにIBプログラムを受けることになった。


小学4年生くらいになると、娘は英語もほぼ理解できるようになり、宿題も親の力を借りずにできるようになってきた。そこからは、学力も伸び、娘の勉強にはあまり手はかからなくなった。だが、親の参加するイベントや、さまざまな催しでのボランティアなどは頻繁にあったし、ゲストティーチャーとして、僕が娘のクラスで簡単な授業を行うこともあった。


娘の例を主に述べたが、やはり個人差はあるもので、小学校4年になった息子の方は、いまでもある程度宿題を見てやらないと進まない状態だ。どの程度、発達するかは個人差があるので、一概にはいえないと実感している。


だが、娘の時と同様に、学校に対して協力的でいることと、父兄とのつながりを大切にしていることで、いろいろな面で助かっている。ここまで密に学校と連絡を取り合えることは、親として大変ありがたいと思っている。

 
そして去年、子供たちの通う学校は、世界IBプログラムのトップ50校に選ばれた。世界中にIBプログラム校は5,000校以上ある。つまり、世界全体で上位1%以内の優れたIB校であると認められたことになる。


自分の子供たちも、日本語の通じない中、よく頑張っているが、その頑張る子供たちをしっかりサポートしてくれる学校に改めて感謝した。


このように、子供の、とくに小学校(多分中学も)での留学のカギは、いかに学校と密に連絡を取り、(気の合う)父兄とのつながりを大切にするかだと実感している。そして、そのためには、学校の行事やイベントに積極的であり、学校からの働きかけにきちんと反応すること、そして子供のクラスメートの親とできるだけ話をすることだ。

逆にいえば、それをしても反応の薄い学校ならば、行く価値は低いかもしれないと個人的には思っている。その意味では、今子供たちの行っている学校はよい学校だと自信をもって言える。

幸いマレーシアの場合、日本のママ友カーストのような、息苦しいコミュニティはない。いや、どこかにあるのかもしれないが、マレーシアでは、いやだったら離脱すればいい。なので、親がまず積極的に現地コミュニティに飛び込む姿勢を見せることが大切だ。結局、子供は親の背中を見て育つのだと思う。

追記:この学校への留学にご興味のある方は、このページの一番下にある「クリエイターへのお問い合わせ」から筆者にご連絡ください。

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