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【書籍紹介】「会社は頭から腐る」冨山和彦 著

本書は、企業経営における根本的な問題を掘り下げ、特に経営者の役割とその影響について考察した書籍です。著者である冨山和彦氏が自身の産業再生機構での経験を基に、企業再生の現場で直面した課題や成功事例を通じて、経営の本質を明らかにしています。

1. 経営の本質

本書の冒頭では、経営の本質についての考察がなされます。著者は、経営が悪化した企業に共通する特徴として、一流の現場を持ちながら、経営が三流であるという点を挙げています。これは、現場の優秀さと経営の質が必ずしも一致しないことを示しています。経営者が現場の実情を理解し、適切な判断を下すことが求められます。

人はインセンティブと性格の奴隷である。だから、小賢しい組織論やスキル論よりも人間集団を正しく動機づけることの方がパワーを生み出す。

人間の価値観、行動洋式そのものを変えるのが真の経営者だ、という人もいるが、実態は、そこにいる個々人が本来持っていた個性ややる気に対して働きかけた結果、モチベーションと組織能力が飛躍的に高まった

2. リーダーシップの重要性

著者は、リーダーシップの重要性を強調します。経営者は、企業のビジョンを明確にし、それを従業員に伝える役割を担っています。リーダーが腐敗した思考を持つと、組織全体に悪影響を及ぼすことになります。リーダーが持つべき資質として、合理性と情理のバランスを挙げ、感情を理解しつつも冷静な判断が必要であると述べています。

経営者としての私のスタンスは、まずは人間を動機づけているものの本質を理解する努力を行う。そこに的確に働きかけ、勇気づける。本人が相互に矛盾するインセンティブの相克に苦しんでいるのなら、それを整理して、あるいは自分自身がその一部を引き受けて、その人を葛藤状態から解放すべくベ ストを尽くす。

部下は上司の見たい現実を報告するように動機づけられている。ミクロの次元では理に適った行動が、全体としての転落を加速していく。

3. 組織文化の形成

組織文化は企業の成長において重要な要素です。著者は、健全な文化を育むためには、透明性とコミュニケーションが不可欠であると指摘します。特に、従業員が意見を自由に表現できる環境を整えることが、企業の活性化につながります。企業文化が経営者の姿勢や行動に大きく影響されることを強調し、リーダーが模範となることの重要性を説いています。

ホワイトカラーおやじ組織で、やたらと会議が大人数になるのは、意志決定に関する責任が自分ひとりにふりかかって来ないようリスクヘッジをするインセンティブが働くから。こうした相互安全保障を目的とした会議や根回しの業務量は、人と人の組み合わせの数に応じて増えていく

営業提案の話は、現場だけでなく、トップやミドルなど、同じ企業のさまざまな階層に話が来るものである。担当者としてみれば、自分が断ってすむのではなく、上司やトップから同じ案件が下りてくる可能性も予期しなければならない。仮にトップ営業を受けた企業の上層部が前向きに捉え、現場にこの案件を降ろしてきた場合、担当者が、以前に無碍に断ってでもいたら、上層部から叱責を受けることになる。このようなリスクを回避するために、担当者はアリバイづくりに励むのである。つまり未知な領域に積極的に足を踏み出そうとはせず、前向きに検討した「アリバイ」をつくり、無難に処理しようという本能が働くのだ。

4. 変革の必要性

経営環境は常に変化しています。著者は、企業が生き残るためには、変革を恐れずに受け入れる姿勢が重要であると強調します。特に、時代の流れに合わせた戦略の見直しが求められます。変革を促進するための具体的な手法として、定期的な評価やフィードバックの実施を提案しています。

そもそも、経営が送り出すメッセージに対して、ただちに心から反応し、動機づけられて行動する人間は多くない。経営者がそのメッセージをどこまで本気で送っているのか、それに素直に乗っかることが自分にとって得か損か、自分にとって気分のよいことか悪いことか。まずは、値踏みモードに入る。

5. 経営者の選定と育成

本書では、経営者を選ぶ仕組みの問題についても言及されています。著者は、経営にふさわしくない人がトップに選ばれる背景には、企業統治システムの欠陥があると指摘します。適切なリーダーを育成し、選抜するためには、組織全体の意識改革が必要です。経営者の資質を見極めるための基準を明確にすることが重要であると述べています。

6. 企業再生の実践

著者は、産業再生機構での実体験を基に、企業再生の具体的なプロセスを紹介します。再生の修羅場では、経営者がどのように判断を下し、どのように従業員を巻き込んでいくかが鍵となります。再生に成功した企業の事例を挙げ、どのような戦略が有効であったかを分析しています。

7. 経営の未来

本書の最後では、経営の未来についての展望が示されます。著者は、企業が持続的に成長するためには、変革を続けることが不可欠であると強調します。また、経営者が社会的責任を果たすことの重要性についても言及し、企業が社会に貢献する姿勢を持つことが求められています。

結論

本書は、経営者やビジネスパーソンにとって、組織の健全性を保つための重要な指針を提供する書籍です。リーダーシップの重要性、組織文化の形成、変革の必要性、経営者の選定と育成、企業再生の実践といったテーマは、現代のビジネス環境においてますます重要になっています。著者の実体験に基づく具体的なアドバイスは、実際のビジネスシーンにおいても有効であり、企業の成長を促進するための貴重な資源となるでしょう。

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