【書籍紹介】なぜか売れるの公式 理央周著
著者の理央周さんは、アマゾンジャパン、フィリップモリス、マスターカード等の外資系企業でマーケターとして活躍され、現在はマーケティングコンサルタントをされています。大学で教鞭を取られていた経験もお持ちです。
本書の中で、マーケティングとは「自然に売れる仕組みを作る」ことであり、「①何を、②誰に、③どうやって」売るのかを組み立てることであると解説されています。
これは、ビジネス書にも言えます。本書のターゲットはマーケティングの初学者。具体的には、以下の通り説明されています。
ここの部分が重要で、マーケティングの中上級者が、新しい知見を得ようという目的で読むとその期待には応えてくれません。
一方、突然の異動でマーケティングの担当になった、あるいは、商品開発の担当者が販売の仕組みも一緒に考えなければいけないけれど、どうアプローチして良いかわからないというケースには、とても心強い味方となる一冊です。
著者のこれまでの実戦経験及び講師として様々な受講生を指導してきた経験から、初心者にも理解しやすい状況設定や事例を選択。それを受ける形で、「これは、マーケティング理論ではこの様に説明できます」と展開。4P、3C、消費者認知モデル、RFM分析、イノベーター理論、キャズム等、様々な理論やフレームワークが実にわかりやすく紹介されています。
本書の最大の魅力は、著者がこれまで実務者、コンサル、講師として長年蓄積してきた事例の引き出しの多さ。誰もが知っている有名な事例だけを引用するのではなく、地元名古屋の自転車屋さん、喫茶店、ウェブサイト制作会社、インテリアコーディネーター等の事例が、身近な実体験として語られることで理解が進み、記憶に残る構成となっています。
例えば、自転車屋さんが1回のチラシで電動自転車の売上を14倍にした事例。購買者となる主婦層が集まるカフェでの会話から情報収集を行い、購入者目線で商品の特徴を考え「免許がなくても乗れる」「坂道が簡単に登れる」「きめ細かいアフターサービス」等が伝わる様にチラシの内容を工夫した。こういう事例は記憶に残ります。
定性調査で仮説探索を行い、消費者インサイトを抽出し、定量調査で仮説を検証し、ベネフィットとアトリビュートを明確化し、それを統合型コミュニケーションで展開しなさい。といきなり言われても、初学者には理解が困難ではないでしょうか?本書では、その様な心配は無用です。
また、「すべて は 成功 例 から 考え られ た『 あとづけ の 理論』 では ない か?」という問いかけに対しては、
と「暗黙知」を「形式知」にしていく重要性が説明されています。
更に、著者自身がアメリカのMBAで学んだ体験から、多くのフレームワークを学ぶことが重要なのではなく、様々なケーススタディーを通じて、「なぜ、成功したのか?」を自分の頭で考え抜く重要性が強調されています。
ここで、私と理央さんの関係について紹介させて頂きます。時は、私が「ラテン系企画マン」としてアメブロでブログを書いていた2009年に遡ります。同じ広告・マーケティング系のジャンルということで交流が始まりました。
当時、私は東京勤務。理央さんは名古屋にある外資系の会社で、マーケティングの実務家として勤務する傍ら、「週末起業家」として準備をされていました。2009年4月に名古屋でマーケティングセミナーを実施するという案内を受け、理央さんとリアルでお会いするチャンスと申し込みました。私自身も名古屋出身なので、実家への帰省も兼ねて。
その際の参加者は私含め5名。他の参加者も、同じく起業を目指している方々でした。セミナー後の懇親会にて、起業に向けた理央さんの熱い想いと緻密な計画をお聞きし、私も胸が熱くなったことを想い出します。
その後、理央さんは、マーケティングアイズという会社を立ち上げ、様々な企業のコンサルティング、マーケティングセミナー講師としてご活躍。マーケティング関連の著書は10冊を超え、現在、関西学院大学で教鞭をとられたりと大成功を収めました。
本書は、各種フレームワークが事例の形でわかりやすく網羅されていて、かつ、マインドセットも学べるお得な1冊。マーケティングを学びたい。あるいは、実務でマーケティングをやっているけれど、いまひとつ自信がないという人にお薦めです。
■動画版は、こちら。
理央さんご本人が書籍の解説をされている動画もご紹介致します。
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