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#元町の上で Interviews⑧「storage books」

『愛がなんだ』『あの頃。』などの今泉力哉監督が東京・下北沢を舞台にひとりの青年と4人の女性の出会いを描いた群像劇『街の上で』。新型コロナウイルス拡大による上映延期を経て、ついに当館でも5/1(土)より公開いたします。公開を記念し、映画と合わせて映画館がある「街」を楽しんでもらうために近隣の書店や喫茶店の協力のもと、noteにてオンラインマガジンを刊行します。タイトルは「#元町の上で」。お店の人が観た本作の魅力、オススメの書籍やドリンクの紹介、さらに映画館スタッフによるお店へのインタビューなどで〈元町〉という“街”の魅力を伝えたいと思っています。映画も街もお楽しみください。


こんにちは。映画『街の上で』note企画、書店担当の林です。
企画にご参加いただいているそれぞれのお店・ひとの魅力をお伝えするインタビュー8回目。ラストを飾るのは【storage books】。店長の山下和希さんにお話を伺いました。


出会いやきっかけ、知識の“貯蔵庫”(=storage)

〈ハットグラフィコデザイン〉としてフリーでデザイナーをしていた濱章浩さんが、現在の三星ビルに事務所を構えたのが2010年。そこからギャラリー(サンセイドウギャラリー)、コワーキングスペース(オープンスペースDEP.)、バー(書庫バー)とひとつずつ借りる部屋を増やしながら活動も広げていき、2017年に書店【storage books】をオープンされました。神戸で唯一のデザイン&アートの専門書店です。出会いやきっかけ、いろんな人の知恵・知識の貯蔵庫として〈storage〉と名付けられました。

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書店を任される山下さんは、熊本県のご出身。大学時代を神戸で過ごされた後、日本を代表する大企業勤務から転職してアパレル業界へ、そして大学時代に濱さんの主宰するイベントでスタッフをしていた縁で【storage books】に携わることが決まり、ふたたび神戸に戻ってこられました。神戸は自然と人工のバランスが良く、商圏が一箇所に集まっている街のコンパクトさも気に入っていて「一生住みたい街」だと話されます。

店に来てすぐに、「お店としてできることは、まだまだたくさんある」と感じて大規模な見直しを行ったという山下さん。どんなところが?と尋ねると、「敷居が高すぎる、お客さまを見ていない、そもそも本が少ない」と容赦のないダメ出しが飛び出します。「どんな人でも気軽に入れて、そこでアートを軸に知見を深められる店づくりを」と、手に取りやすい本を発注しまくることから始め、店に立ちながらお客さまの動線を追い、どんな層がどんな本を手に取るかを細かく観察し、店舗設計に反映させていきました。アパレル勤務時に身につけたディスプレイの鉄則などのノウハウが最大限に活かされています。


ここから次の一歩を届けたい

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こうしてお客さまの目線に立った店づくりをされた山下さんですが、「ニーズに応えつつも大事なのは“提案”」「“次の一歩”を届けられる存在に」と話されます。実は今回の参加書店の中で、ここだけが唯一新刊書のみを扱う店。デザインとアートに特化した店なので、“今”の最先端・最新を届けたいとの思いがあるそうです。アパレル在職時に自分の表現の幅を広げたいと転職を考えたときに、ひとつの答えではなくさまざまな解釈を飲み込めるアートの持つ“許容感”に魅かれたという山下さんご自身の体験もあり、どんな人にとってもささやかなきっかけになるような本を並べたいと話されます。

デザインとアートの専門書店ということで、いわゆる文学系の“本好き”は「ちょっと自分には関わりがないかも…」と躊躇してしまうかもしれません。何を隠そう、私も最初はそう思っていました…。訪れてみると、アートに限らず暮らしまわりの本やリトルプレス、絵本など、いろんな本があります。最近はコロナ禍のためか旅系の本が人気だそうで、屋久島で作られている「SAUNTER Magazine」やオフセット印刷とリソグラフ印刷を融合させた「NEUTRAL COLORS」など、独立系のユニークな雑誌も扱います。


アートは物語のひとつ

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最後に、山下さんからのメッセージを。「アートは鑑賞者に対して問いを投げ、多様性を育む存在。正解のない世界を楽しめる場所でもある。僕は、アートは物語のひとつだと思っています。新しい物語に触れる気持ちでぜひ来てほしい」。

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storage books
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映画の感想と荒川青にすすめたい本紹介


▽階段に置かれた小さな案内板

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▽ここでしか見かけないような気になる本がいっぱい

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*おまけ/林の買っちゃった記【storage books編】

いやもう、これは誰が見ても気になるでしょう。手に取っちゃうでしょう。そして買っちゃうでしょう。とにかく表紙を見てください。

「ロバート・ツルッパゲとの対話」ワタナベアニ(2020年/センジュ出版)

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一見わかんないんです。でも、「え?あれ?ツルッパゲって書いてた?」って思わず戻っちゃうんです。そして帯の「知らんけど」にやられて、ああもう完敗、買います、っていう流れです。見事な本です。


映画『街の上で』元町映画館にて5/1公開

文責:林 未来(元町映画館支配人)

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