見出し画像

【歌詞感想】Mrs.GREEN APPLEのライラックが韻も忘却バッテリーの世界も踏襲して凄い

韻について一部で色々と騒がれておりますが、J-POPなんかでも当たり前に韻が踏まれるような時代ということもあり、注目度があがっているのかなと思ったり思わなかったりです。

さて本題ですが、アニメ、忘却バッテリーの主題歌、Mrs.GREEN APPLEのライラック。皆さん聴きました?

僕は原作も読んでいる方なのですが、まぁーこれが原作の世界観を踏まえた上で、爽やか青春ソングのメロディと歌詞に、韻がバッシバシに決まっているので、ちょっと今更何ですが記事にしようかと思った次第です。

過ぎてゆくんだ今日も
この寿命の通りに
限りある数字が減るように
美しい数字が増えるように

出典:ライラック

出だしからパンチライン!

「通り」(ooii)、減るように(euoui)は「減るよーに」でフローすることで踏んでますね。さらに「増えるように」で(euoui)を完踏み。「ように」が被っていて簡単に見えますが、「寿命の通り」で年齢を重ねることに対する思いを繋げてからのこのリリックは素晴らしいと思います。

J-POP的韻極まってます。

※J-POP的韻
J-POP的メロディが確りしているので、ガッチガチに踏むとくどくなりそうなところを調度良い塩梅で踏むことで、グルーブを生むことだと勝手に思ってます。

さて次

思い出の宝庫
古いものは棚の奥に
を被ってるのに
誇りが光って見えるように

出典:ライラック

出だしの「今日も」と「宝庫」(ouo)で踏んでます。この繰り返しのメロディーでも丁寧に踏むところが最近のJ-POP的韻ですね。これをきちんとやるのとやらないのでは、グルーブが全く違います。

「奥に」も前のバースから(oui)踏み。「埃」と「誇り」は定番ですが同音異議語で踏んでます。

「被ってるのに」と「見えるように」も厳密には(euoi)と(euoui)で少し違うのですがフローで踏んでおりますね。

されど
By my side
不安 喝采 連帯
濁ったり安全地帯
ワングワンになる
朝方倦怠感
三番ホーム 準急電車

出典:ライラック

Bメロは歌い方が一気にラップっぽくなります。それに合わせてかなりリリックも韻を踏んでいる。ていうか踏んでないとこの方が少ない。

By my Side」(aiaiai)からスタートしてひたすらai音とan音を強調していきます。「不安喝采」(uanaai)、「濁ったり」(ai)「安全地帯」(aneniai)の流れで「あんぜーんちたーい」で踏み外しながらもフローで語感踏み。

さらに「グ・・・ワングワンになる」(anuaniau)とフローしてan音とai音からのau音踏み(ワングなる)をこの部分で成立させてるの怖い。

朝方」の完全(a)音で「倦怠感」(enaian)音を入れ込む。さらに「三番ホーム」(anan)音と来て「準急電車」

最初踏み外してるように思えた「倦怠感」の(enai)と「電車」(ena)で踏めるという。ラップ風の歌いまわしならではのカッチカチさ。

ちなみに、三番ホームの三番は忘却バッテリーの主人公が3番打者だったことと、ポジションがキャッチャー(ホーム)っていうことを暗示しているかと思います。そもそも出だしの「思い出の宝庫」からずっと忘却バッテリーを彷彿とさせてセンスありすぎる・・・

青に似たすっぱい春とライラック
君を待つよ ここでね
痛みだす人生単位の傷も
愛おしく思いたい
探す宛てもないのに
忘れてしまう僕らは
何を経て 何を得て
大人になってゆくんだろう

出典:ライラック

サビの部分は、細かく韻を刻みますが、そこまでがちがちじゃない。これがJ-POP的韻の特徴ですよね。同じメロディの箇所(例えば、はると・たんいの)の母音を合わせるようにしてるくらいですかね。メロディーが強いのでそこまで韻でグルーブを作る必要がない。

それゆえに、「何を経て 何を得て」という同音異議語のリピートが目立ちますよね。

一回だけのチャンスを
見送ってしまう事が無いように
いつでも踵を浮かしていたい
だけども難しいように

出典:ライラック

このリリックの中でもそこまで韻を踏んでませんが、1番の「今日も」(ouo)と「チャンスを」(auo)でuo音を踏んでおります。8小節中で韻を踏むというより、バースを越えて同じメロディラインで韻を踏むことがJ-POP的韻の特徴でもあるかと思います。

リリックの内容で言うと、「一回だけ」、「見送ってしまう」、「踵を浮かしていたい」は野球を彷彿とさせますね。
※踵を浮かせるのは守備中の基本なんです。バッティングのタイミングを取る時もそうですね。

主人公の候補
くらいに自分を思っていたのに
名前も無い役のような
スピンオフも作れないよな

出典:ライラック

「主人公の候補」がこれまた一番の「過ぎていくんだ今日も」と同メロディー箇所にて、語感踏みかつ脚韻してますね。

たかが
By my side
くだらない愛を歌う
嘘つきにはなりたくない
ワサワサする胸
朝方の疎まし
ズラして乗る 急行電車

出典:ライラック

ビート強調バースは1番ほどでなくとも確り(ai)音をいれてきてますね。

影が痛い
価値なんか無い
僕だけが独りのような
夜が嫌い
君が嫌い
優しくなれない僕です
光が痛い
希望なんか嫌い
僕だけ置いてけぼりのような
夜が嫌い
一人が怖い
我儘が拗れた美徳

出典:ライラック

Cメロに入り、先ほどの(ai)音の流れを引き継ぎ大量に放り込んできます。このネガティブなリリックに怒涛の如く韻を刻むことで、次のバースで逆転を予感させますね。

不完全な思いも
如何せん大事にしたくて
不安だらけの日々でも
愛してみる

出典:ライラック

そしてここ。「不完全な」「如何せん大」「不安だらけ」と「uanena」「ianenai」「uanaae」。と韻を放り込んでくるとこ。

あくまでリリックの意味は不安定ながらも、どこか軽やかで聴き心地の良いくなっております。このバランス感なんですよねー。

感じた事のない
クソみたい北感も
どれもこれもが僕を
つき動かしてる

出典:ライラック

強いて言うなら(ai)音踏みですかね。これまた韻を踏むJ-POPあるあるなのですが、言いたいところや盛り上げどころ、その手前ぐらいは韻はほぼない、またはさらっと流す程度なんですよね。つまりここから大サビに入るってことですよ!

鼓動が揺らすこの大地とハイタッチ
全て懸けた あの夏も
褪せはしない 忘れられないな
今日を生きる為に

出典:ライラック

ハイタッチはライラックとで(aia)音で韻を踏んでますね。大サビでタイトルと踏むのは完全に意図的だと思います。全般(ai)音踏みが多いのもそうでしょう。

しかも、ライラックの花言葉は色によって違うようで。

紫:初恋、恋の芽生え
白:青春の喜び、無邪気、若き日の思い出
ピンク:思い出
赤:愛の芽生え
また、色に共通して「友情」「青春の思い出」「謙虚」「純潔」など、人間関係の絆や心の純粋さを象徴する花言葉もあります

出典:Google AI

とのこと。

当然、白いボール、白いベースおまけに忘却バッテリーの主人公チーム小手指高校のユニフォームも白なので、青春の喜び、無邪気(主人公は無邪気なキャラ)なわけですよ!!

その上で、大地とハイタッチ→ヘッドスライディングってことですよね。

粋が過ぎる!!

そこから続いて全てかけたあの夏は、完全に甲子園を思わせますね。一番の「青に似たすっぱい春とライラック」の部分は、まず単体で青春をイメージさせて、実は春の選抜をもはらんでいたという仕掛け!効きますねー。

韻に話を戻すと「色褪せはしない」 「忘れられないな」は踏み外しているようで(aeaia)音でガッチガチに踏んでいる。これぞJ-POP的な意識をさせない韻。

探す宛ても無いのに
失くしてしまう僕らは
何のために 誰のために
傷を増やしてゆくんだろう

出典:ライラック

のために」「のために」も1番での「何を経て」 「何を得て」とは違うライン(an)と(ae)で韻を踏んでくどさをなくしてますね。

雨が降るその後に
緑が育つように
意味の無い事は無い
信じて進もうか

答えがない事ばかり
だからこそ愛そうとも

出典:ライラック

ここは韻をそこまで意識してないですよね。
ケセラセラもそうでしたが、普通ならこの大サビで終わるところをMrs.GREEN APPLEの場合、エンドロール的にさらに盛り上げてくるから怖い。

あの頃の青を
覚えていようぜ
苦味が重なっても
光ってる

割に合わない疵も
認めてあげようぜ
僕は僕自身を
愛してる
愛せてる。

出典:ライラック

韻というか、ここは語尾を確り合わせてますね。最後の最後だから韻にそこまで拘らないけど、響きを合わせて綺麗に伝わるようになってます。

たまに甲子園球児だったんだよーなんて言う方に会ったりするんですが、もう本当この歌詞の通りなのかなと思います。

MVの最後だと、色々な職業の方がでてくるのですが、等しく青春時代があったと思うのです。

運動、勉強、恋愛など・・・勿論それは華やかじゃない青春だったかもしれませんが、そのころの自分を忘れず、むしろそれを経験したからこその今の自分も愛していこうというとてつもない自己肯定感な歌だと思いました。

こういうの弱い!
勿論、忘却バッテリーのストーリーともあっているんですよ。凄まじすぎ。

そんなわけで、韻に注目してもやはり名曲でございました。皆様も是非、ライラック、聴いてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?