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一か月で10,000プレイ以上されたカードゲームの開発経緯

 前回、開発失敗した話を書いたが、その後、どう考え、行動して完成に至ったかを書いてみる。

コンセプトは変えずにトライ

 開発失敗した後、今度こそ失敗しないように企画した。
コンセプトは前回と同じように以下の通り。
 いくつかランダムに選択肢を与えて、その中の最適解を考える。
 それが正解かどうかはその時点では判断できず、ゲームを進めていくと判明する。

 これに当てはまる既存のゲームはいくつかある(麻雀など)
 今回は「ランダム+選択」の要素で相性の良いジャンル、カードゲームを選択した。
 失敗したパズルRPGはフィールド移動にプラスして、戦闘毎に選択行動があったため、テンポがすこぶる悪かった。「ランダム+選択」のサイクルを高速に回せるような仕組みにしたい。

2020年2月頃。プロトタイプなので勝手に画像を使っている。

ぴにゃこら太との対決

 カードゲームといえば対戦形式だが、サーバを立てて対戦となるとハードルが高くなるので、1人用ゲームとすることとした。
 参考としてシャドウバースのソロプレイを研究。当時はイベントで、強CPU「ぴにゃこら太」と対決するイベントが開催されていた。この「ぴにゃこら太」の強さだが、AIが強いのはもちろん、通常デッキに入れられないカードが入った「反則的デッキ」を使ってくるのだ。

相手の場にある《ゴールデンな装甲車》は専用カード

 反則的なカードを使ってくるにもかかわらず、その強さに不平を言うユーザは少なかった。
 なぜか?
 シャドウバースは、デッキ構成とプレイング(カードの使い方)次第で、ある程度の不利対面でも勝利できるからだ。さらに、敵のデッキは決まっているので、対策を立てやすい。カードをうまく使えば、弱いデッキが強いデッキに勝てる。デッキ構築やプレイングといった、自分の考えた戦略(=実力)で勝つと気持ちがいい。
 弱者が強者を倒す、大逆転感覚……これは自分のゲームに持ち込みたい!
 「相手の強いデッキにプレイングで勝つ」これをテーマにして考えてみることにした。

課題検討

いろいろな課題が見えてきた

 テーマをもとにカードゲームを作成しているうちに、2つの課題が見えてきた。
 課題1:強いAIを作る技術がない。
 これから自分がAIの勉強をして、その後、AIが機能するようにゲームの内部構造を変えるのは、半年、あるいはそれ以上の時間がかかるため、現実的ではなかった。
 課題2:相手の手札がうまく揃わない場合に敵が弱く感じる。
 いわゆる、手札事故である。自分の引きが良いのに、相手が事故って自分が勝つと非常につまらない。 時間をかけて準備したデッキをうまく活かせないと、手ごたえがなく、落胆してしまう。
 この2つの課題を、どう解決すれば良いか、いくつかの方法を考え、試した。色々な案を試して、失敗もあったが、ある1つの結論にたどり着く。

積み込みによるムーブ 

積み込みとは麻雀用語である

 解決方法として「相手のカードの引きを固定にして、相手側は毎回理想ムーブにする」という方法をとった。要はイカサマである。
 自分はデッキからランダムにカードを引くのに、相手は引くべきカードを100%の確率で引く。完全なる黄金の右腕である。 自分自身に問いかける。 

「そんな実装で大丈夫か?」

El Shaddai - エルシャダイ -

 この方式は意図した展開を作りやすいのだ。敵は固定だが、自分の手札はランダムなので、毎回違った展開になる。
 シューティングゲームやアクションの敵の配置はランダムではないが、ゲームは成立してるのではないか。 手札が強いと対象AIが弱くても敵は強く感じる。逆にAIの弱さを掴んで、その弱点をつくゲーム性が成立している。
 テストプレイしてみると、確かな手ごたえを感じた。

さらなる高みを目指したが、しかし……

 ただ、ゲーム性はシャドウバースと同じ感じになっていた。オリジナリティを高めようと、ここから、いろいろな要素を追加して試してみた。
 結果としては、ほぼ全滅。いたずらに複雑化するだけで、面白さにつながらないケースがほとんどであった。

2020年10月頃。要素を足したり消したりしていた。

 ハースストーンとシャドウバースがほぼ同じゲームシステムというのが今ならわかる。余計なものは足さなくていい。面白いからマネされるのだ。
 ただ、面白さは担保されたので、ここからは演出とか素材をつくっていくだけ。残りの作業は、楽勝の工程だと当時は思っていた。
 ただ、これはとても時間のかかる作業なのであった。
「素材選定→反映→評価→再検討→再評価」みたいな流れを各素材について行っていく。それは、UI、カード図柄、カード能力と多岐に渡る。ボリュームはとても大きい。個人製作のカードゲームでは、ここで挫けてしまうケースが多いと思う。

2021年5月頃。ゲームのベースは完成しているが画像は全て仮。

 とにかく、軌道には乗った。
 以前、開発に失敗しているだけあって、とても嬉しかった。

公開した結果

 ゲームをゲームアツマール(2023/6/28に閉鎖)に公開してみたが、
一か月で11,000プレイしていただいた。
 2023年3月に公開したのだが、3月に公開された新着ゲームでは2位に位置していた。

2023.3.11~2023.4.10 ゲームアツマール

 好意的なコメントが多く、満足度も高い。ただ、公開直後はカードのバランスもまだ甘く、しばらくは調整を続けることとなった。
 しかしながら、ゲームを完成させ、高評価を頂いた。
 この瞬間、たまらない。
 やっぱりゲーム制作は最高だぜ!

この素晴らしい瞬間に祝福を!


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