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父ちゃんの隠し子、あたいの知らないきょうだいへ。


 あたいには腹違いのきょうだいがいる。らしい。

 名前も顔も分からない。男か女かも知らない。ただ分かっているのは、あたいより歳上で、姉ちゃんより歳下だということ。それと出産した母親が飲み屋で働く外国人であり、生まれた子どもがミックスルーツ(いわゆるハーフと呼ばれる人)だということだ。

 その事実について、ゲイバーで働いている時に、友人やお客様へ身の上話の一環から話したことはあるけれど、作家望月もちぎとしてのエッセイでは書いてこなかった。

 あたいとしては隠し子なんて与り知らぬことで、見たこともないきょうだいのことと、そもそもあたいが6歳の時に自殺してしまってほとんど覚えていない父ちゃんの話など、書けることも、かける言葉もなかったからだ。

 せいぜい書けても「腹違いのきょうだいがいるらしい。会った事はない。父ちゃんが死んでいるので確認する術が無い」ーー以上だ。

 つまり、エッセイにおいて書けるほどの情報がなかった上に、あたいのルーツに関わる話でもなかったのでそれに触れてこなかった。そして、エッセイには書いてないことも多いし、全てを赤裸々に書くことがエッセイだとも思っていないので、それでいいと思った。

 けれど最近、Twitterで「子どもの頃からずっと、他人からハーフと呼ばれるのが嫌だった」と語る人のエッセイを読んだり、あたいの周りにいた非嫡出子として育った経験を持つ子の話に照らし合わせて、思うところが増えてきた。

 だからせめて、あたいが顔も知らないきょうだいの存在を知った時の経緯と、いまになって思うあたいの言葉くらいは描きたいので、ここに残しますわ。


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ここはあなたの宿であり、別荘であり、療養地。 あたいが毎月4本以上の文章を温泉のようにドバドバと湧かせて、かけながす。 内容はさまざまな思…

今ならあたいの投げキッス付きよ👄