「みんなからうっすらと嫌われてるんです」

　以前、こう話す人と出会ったことがある。

「自分、みんなからうっすらと嫌われてるんです」

　何か嫌われるような事をしたの？ たとえば放火とか横領とか……、とあたいが問い返すと、「いやそんなことはしてないですけど……」と若干引き気味に返答し、それから自分なりに努めて冷静に、それでいて他人のことを語るかのようなどこか冷めた目で身の上話を語り始めた。

　その人曰く、どうやら初対面の時は誰とでも分け隔てなくある程度は話せるらしく、コミュ力と呼ばれる外向きの社交性こそそこまで低くはないものの、それでも会う回数を重ねれば自分のだらしないところや、つまらないところ、他人との会話や約束を忘れてしまう無思慮なところがバレていって、いつしか人からの信頼を失い、誰からもうっすら信用されず、顔見知りはいても友達はほとんどおらず、恒常的につるむような仲の人間がずっとできない、とのことだった。

　聞き取ったあたいなりに要約しているので、ちょっとは解釈が違うかもしれない。けれどまぁよくある「基本的には人見知りがちだけど、世界との交流を断絶するほど孤高に振り切れていなくて、だから頑張って他人と交流するけれど、どこかで無理が出てしまう。あるいは本来は他人に興味が無いのに関心があるフリを取ってしまうから後々に齟齬や軋轢が生まれがち」というタイプの、普通の内向型の人だと思った。