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開拓星のガーデナー #2

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先制攻撃だ! ナパーム弾を撃ち込み、一発で片を……

(いや、待て!)

弾薬は限られている。ここは節約しないと……

(いや、でも……!)

対応マニュアルで叩き込んだ知識が、野放図に頭の中を駆け巡る。何をすればいい? どう倒せば最良だ? 樹獣に、ジムさんに、ルチア。三者三様の死のイメージが、取るべき行動のリスクを無限大に引きあがらせていた。

その迷いは、戦場でもっとも危険なものだ。

棒立ちする僕の前で、裂け目が大きく開く! 奥から現れたのは生物のように生々しい、巨大な一つ目だ。樹獣は根を節足動物めいて動かし、走り寄る! おぞましい眼球が、正面モニターいっぱいに広がっていく!

「わっ、えっ、ああッ!」

反射的にレバーを引く! 左腕部がけたたましい音を立て、樹獣に叩き込まれた! 真っ白な樹液が噴出! ガーデナーの肘部から熱が噴き出す!

「つ、次! 次は!」

慌ててスイッチを押しこむ! 叩き込まれた手首から、霧状の燃料が噴出! 樹獣の導管を伝い、全身に染み渡っていく!

「これで!」

再度スイッチ! 指先が熱を帯び、燃料に引火! 樹獣の体が内側から四方八方に裂け、隙間から炎が噴き出す!

KABOOOOOOOOM!

爆音を立て、樹獣の体はバラバラに吹き飛んだ! 焼けた木片は周囲に散らばり、あるいは空中で燃え尽きて炭になった。荒く呼吸する僕に、ルチアが声を掛けた。

「やるじゃんか! 完璧なカウンターだったぜ!」

偶然だ。でも正直にそう答えるわけにもいかない。僕はとりあえず不敵な笑みで返した。

「何ニヤけてんだ? それより次だ、次!」

ルチアに促され、慌てて警戒態勢に戻る。樹獣は群れを成していることが多い。迂闊に攻撃すれば、一斉に襲いかかってくるのだ。

一体一体がさほどの脅威ではなくとも、集団となれば話は別だ。対応できる範囲を見誤れば、すぐに取り囲まれ……ジムさんのような末路を迎える。

僕らは背中合わせになり、周囲を警戒した。閑静な森に、樹獣の焼け残りが貪られる音だけが響く。どこから来る? 右か? 左か? いや。

(両方だ!)

側面モニターに映し出されたのは、姿の異なる二体の樹獣! 一体は幹全体からイソギンチャクのように無数の太い枝を生やし、もう一体はヤシの木のように細長く、表面に大きく裂けた口が浮かび上がっている。二体はほとんど同じ速度で、僕に向かって来ている!

(落ち着け、落ち着け……! さっきだって倒せただろ!)

両腕をまっすぐ伸ばし、左右の樹獣にナパーム弾を撃ちこもうとしたその時。僕は正面モニターに、もう一体の樹獣が写り込んだことに気づいた! 辺りの木々をへし折りながら、まっすぐに向かってくる!

(三体目!?)

動揺して動きを止めた僕に、そいつは猛然と掴みかかった!

【#3へ続く】

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それは誇りとなり、乾いた大地に穴を穿ち、泉に創作エネルギーとかが湧く……そんな言い伝えがあります。