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ニンジャの二次創作

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「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンド&フィリップ・N・モーゼズ著)の二次創作作品群です。面白いと思ったらぜひ原作ニンジャスレイヤーもどうぞ。
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【リモート・ボンド、リライアブル・ボット】

【この作品は『ニンジャスレイヤー』の二次創作小説です/約42000文字】 #1 『ナボタタ・リゾートへようこそ!』 『そこは地上の楽園! 晴れ渡る空! 青い海! 忙しい日常を離れ、雄大な自然でリフレッシュしよう! 飛行機? ポータル? 一切不要! UNIXデッキの前から本物の南国体験! バーチャルではありえない感動をあなたに! エメツ・テックが叶えます!』 『ナボタタ・リゾート! ナボタタ・リゾート! そこは地上の』  ――ブツン!  ウノエ・ヒロカワがモニタの電

【ミステイク・フェイド・オーヴァー・タイム】

この小説は『ニンジャスレイヤー』の二次創作です。(12573文字) 「看板メニューを作りましょう!」 客が去り、無人となったピザ・タキ店内。テーブルを拭き終えたコトブキが出し抜けに言った。タキはポルノ新聞から顔を上げ、問い返す。 「アア? 何がだ?」 「だから、看板メニューです」 「どこの?」 「もちろんピザ・タキのですよ!」 「アア?」 タキは耳を疑った。コトブキは大げさに腕を広げて言った。 「革新的な看板メニューで集客! 企業努力ですよ!」 「そりゃ結

【ビフォア・ザ・ベル・リンギング】

【この小説はニンジャスレイヤーの二次創作です】 昼夜を問わないネオンサインが、その光量を落としている。色街に犇くサラリマンたちは、この日ばかりは各々の家庭で静かな時を過ごす。客引きたちが数少ないカモの奪い合いに無言の火花を散らす。だがその瞳に本気の憎悪は宿らない。年の瀬のネオサイタマは、薄氷に覆われたタマ・リバーの水面のように静かだ。 今日はオショガツの前日。オミソカと呼ばれる特別な一日だ。オショガツとは一月一日を指すと同時に、古代より連なる伝統的儀式を意味する。当然その

【シンパシー・ホワット・スラム・ヒム・トゥ・ヘル】

(27940字) (この小説は「ニンジャスレイヤー」の二次創作物です) #1華美な刺繍のされたカーテンは、家の恥を傍目に晒さぬように固く閉ざされていた。広いリビングには3人の家族。音楽ディスクを威圧的に持ち、床に正座させた子供を見下ろす父親。それを遠目に見守り、さめざめと泣いている母親。そして、18歳の頃の自分。 (夢だ) アミタ・クマミチは直感した。よくよく見ると観葉植物の形はぼやけ、母親の顔も霞んでいる。ハッキリしているのはディスクと父親だけだ。 「それは……」

【プライド・オブ・ヴァーレット】

(この小説は「ニンジャスレイヤー」の二次創作です) ハイウェイを降り、林道を下ること数十キロ。突き当たりのオムラ・ダムを迂回し、危険なバイオパンダ出没地帯を抜けてさらに数十キロ。砂をたっぷり含んだ風が窓ガラスを叩けば、ドライバーはようやく一息つくことができる。 トットリーデザート。今や訪れる者もいない、広大な砂漠地帯である。かつてのこの一帯には、ネオサイタマからの観光客向けの補給地点や、観光業従事者のベッドタウンが広がっていたが、それらはゴーストタウンと化したか、オムラ・

【ストレイキャット・ストーリー】

3/2 : 不自然な箇所を修正 2/28: 投稿 (この小説は「ニンジャスレイヤー」の二次創作物です) 【ストレイキャット・ストーリー】出題編 あまり治安の良くないコミダ・ストリートの雑居ビル二階。猥雑な旧世紀ヘンタイ・ポルノショップと違法サイバネ商店に挟まれた一室こそ、”私立探偵”イチロー・モリタの名目上の事務所である。 彼の事務所は広告を打たず、奥ゆかしい看板以外に存在をアピールするものもない。両隣の店の客はこの開かずの事務所を空き物件だと思っており、所長の存在は

【ア・カインド・オブ・モデスティ・プレジャー】

(この小説は「ニンジャスレイヤー」の二次創作です) 第一話その日は貴重な晴れ模様だった。ネオサイタマの空事情においては、黒雲か重金属酸性雨、またはその両方が太陽を遮るのが常だ。カネモチ・ディストリクトには多種多様なカチグミ住宅が居を並べているが、年中空を覆う油膜めいた雲にはマケグミ同様に悩まされている。 ジェイドマムシがこのペントハウスを購入したのは、高層より下界を見渡す美しい夜景写真に釣られてのことだったが、それが一年に数日しか鑑賞できない物だということをすっかり忘れて

【ア・スカーミッシュ・オブ・オトシダマ】

(※当作は「ニンジャスレイヤー」の二次創作小説です) 「「「アケマシテオメデトゴザイマス!!!」」」 新年カウントダウン終了と同時に、ネオサイタマ各所で大規模な花火が打ち上がった。黒雲をバックに咲いた花は鮮烈なコントラストを作り、地上から、あるいはモニタ越しに眺める市民を魅了した。 「ヤッタ!」「ワースゴーイ!」「スゴスギル!」 無邪気な歓声が上がる。彼らのいるパブリックビューイング広場では、イカやモージョー・ガレット、甘酒を売る屋台が集まり、祭りめいた雰囲気を醸し出