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【ア・スカーミッシュ・オブ・オトシダマ】

(※当作は「ニンジャスレイヤー」の二次創作小説です)

「「「アケマシテオメデトゴザイマス!!!」」」

新年カウントダウン終了と同時に、ネオサイタマ各所で大規模な花火が打ち上がった。黒雲をバックに咲いた花は鮮烈なコントラストを作り、地上から、あるいはモニタ越しに眺める市民を魅了した。

「ヤッタ!」「ワースゴーイ!」「スゴスギル!」

無邪気な歓声が上がる。彼らのいるパブリックビューイング広場では、イカやモージョー・ガレット、甘酒を売る屋台が集まり、祭りめいた雰囲気を醸し出していた。他の地域でも同様に、屋台のラインナップを変えただけの光景が繰り広げられている。

カチグミもマケグミも、年齢も性別も問わず、年越しの喜びを誰かと共有したいのだ。街には非日常の笑顔が溢れていた。

やがて大規模街頭TVやマグロツェッペリンの広告モニタでひとしきり喜びを共有した市民たちは、レーン上を滑るスシ皿めいた規則正しいルートで、次なる目的地へ向かう。身近なテンプルに詣り、ブッダに新年の加護を願うのだ。人々の信仰心が薄れつつある昨今も、それは変わらぬ伝統であった。

そして街から人気が無くなるこの時間こそが、彼らの仕事時間だった。

【ア・スカーミッシュ・オブ・オトシダマ】

物流の心臓、ネオサイタマ郵便局の第三六区画。薄暗い駐車場にはガラの悪いバイカーたちが集まり、一夜限りの相棒の調子を確かめていた。

その中に一人、垢の抜けない顔をした少年の姿があった。少年……シムダ・イジマはあてがわれたバイクに腰を下ろし、ため息をついた。事前説明は嫌に冗長で、無駄に時間が掛かった。その上勤務時間に含まれないとなれば、ため息の一つも出ようものだ。

「ネンガジョはね、つまりですね皆さん。日本の伝統であり、美徳であります。我々シモダマ・エンタープライズ社は伝統と安全を守り、それを発展……そう、つまり進歩させているのですな。つまりですね、ネンガジョ・ドライバーに応募された皆さんも守るべき宝でして、皆さんの安全性は今はなきオムラ社謹製のバイクに担保されておりますので、エー、安心安全なのです。危険が及ぶことは一切ありませんので、つまり落ち着いてネンガジョを配達さえしていただければ……」

シモダマ・エンタープライズ社員の退屈な説明が蘇る。

ネンガジョとはオショガツに贈るクリスマス・カードのようなものであり、親しい人間に前年の感謝と新年の友好を伝えるための奥ゆかしいカードである。しかし、近年はIRCでメッセージを伝える若者が増加し、ネンガジョの販売枚数は減る一方だった。

そこに目をつけたのがシモダマ社だ。彼らは郵便局に営業を掛け、「ネンガジョ改革」をテーマに様々な施策を打ち出した。伝統規範のアッピール、有名俳優や映画スターを起用したCM、ネコネコカワイイから仮想ネンガジョが届くサービス……このような施策は概ね功を奏し、1割程度は現在のネンガジョ・ブームの要因となった。

そう、1割程度は。残りの9割は? ……カネである。シモダマ社はネンガジョに富クジを付けることを提案。莫大なオトシダマ・ボーナスで人々の目を釣り、抽選対象のネンガジョは他人から贈られたもののみ、それも一人一枚に限るという厳しい制限で人々を煽った。

この制限方式で当選確率を上げようとすれば、他者とネンガジョを贈り合う以外に方法はない。欲望者たちは互いにネンガジョを贈るように圧力を掛け、贈ってこない人間をムラハチにした。

古来より続く伝統を蔑ろにする礼儀知らず。ムラハチにされて当然の卑怯者。そのレッテルを貼るのに、シモダマ社のコマーシャルは効果的に作用した。

今やネンガジョから奥ゆかしさは消え去った。IRC上には見ず知らずの人間とネンガジョ交換を持ちかけるトピックが氾濫し、そこでは心の籠もらない金券もどきがやり取りされる。それらのカードには新年の挨拶はない。あっても隅に追いやられ、当選祈願の毒々しいサイケデリック・モージョーが紙面を独占するようなものがほとんどだ……

(まあ、俺には関係ないけどさ)シムダは心の中で呟いた。彼にネオサイタマの友人はいない。故郷の知り合いへのネンガジョは、父と祖母が頼まずとも代行してくれる。ここでの彼の日常は大学と下宿先の往復が大部分を占めている。講義の前にときおり話す知人も、住所を知るほど深い付き合いではない。それに、そういう虚礼を好むようなタイプにも見えなかった。

彼にとってネンガジョ・ドライバーは割がいいバイトだった。勤務時間はたったの5時間。仕事内容はネンガジョを配達するだけ。ただそれだけで万札が受け取れる。

故郷からの仕送りは必要最低限だし、勉強時間を考慮すれば、のんきに長期のバイトを入れることは出来ない。(そんな迂闊なことをすれば、到底講義についていけないほどにシフトを詰められるのが普通だ)短期でまとまったカネを得られるこのバイトは、彼にとって実際渡りに船であり……「シムダ=サン」

「アッハイ!」背筋を伸ばし、シムダは返事をする。だが、彼はすぐにそれが誤りだったと気づいた。「シムダ=サン、シムダ・イジマ=サン。0時5分ドスエ。そろそろ出発しないと違約金可能性な」自分に話しかけたと思ったのは電子マイコ音声だったのだ。

周囲からクスクスと笑い声が聞こえる。シムダは赤くなった顔を伏せ、慌ててエンジンを掛けようとした。

「オイ兄ちゃん、ヘルメット忘れてるぜ!」「ド田舎にもそんぐらいあるだろうがよ!」屈強な同僚バイカーがゲラゲラ笑いながら忠告する。彼は慌ててヘルメットを被り、震えた声で礼を述べた。それから、逃げるように駐車場を出て行った。

◆ ◆ ◆

深夜0時とはいえ、ネオサイタマの物流が滞ることはない。心臓が常に脈を打つのと同じだ。ゆえにマイコAIは国道を避け、人気のないルートをシムダに提示する。幸い、彼の配達先は一度も国道に入らずとも到達可能のようだった。

予想移動時間は1時間。ドライバーにあてがわれる配達先は様々だったが、彼の引いた場所は実際アタリだと言えた。

(悪くない……悪くない)

彼は心の中で呟き、つい先ほどの笑い声を記憶から追い払おうとする。とっとと配送を終わらせ、カネを受け取ろう。そのカネで、ずっと行きたかったクラブに行くのだ。そんな暢気な想像をしながら。

まさかこの夜ニンジャに出会うことになるなど、その時の彼は想像だにしていなかった。

◆ ◆ ◆

「イヤーッ!」「アバーッ!」

海沿いの道に容赦ないカラテ・シャウトが響く。ネンガジョ・ドライバーのミューラは男の回し蹴りを受け、ヘルメットごと首を吹き飛ばされて死んだ。屈強な胴体が路上に転がり、花瓶めいて血を溢れ出させる。

たった今、残虐殺人を行ったばかりの男は死体など眼中にないかのようにバイクへ歩み寄り、ホルダーを壊して積み荷のネンガジョを取り出した。

「ヒイ・フウ・ミイ……」

枚数を数え終えると同時に、彼はそれらを無造作に握りつぶす。直後、ネンガジョは超自然の炎に包まれ、有害物質に塗れた煙を上げて燃え尽きた。コワイ! 煙の悪臭に男は舌打ちすると、ニンジャ装束めいた服装からIRC通信機を取り出し、どこかへ連絡を入れた。

「首尾は」「上々です。ドラ……配達人の始末も滞りなく」「そうか」

彼は通話の最中、ミューラの胴体をつま先に乗せ、ガードレールに触れないように海へと蹴落とした。常人離れした恐るべき脚力であった。

「ネンガジョ……美しき伝統。こんな富クジもどきがその名を語るとは虫酸が走る」「ゆえに燃やし尽くさねばなりませぬ」「その通りだ。歪んだ伝統は滅すべし。ニンジャの力をもってでもな」ナムサン……! 彼は今、何と言った!? ニンジャ!?

「また連絡する」軽い現状報告の後、彼は通信を切る。それから手近なビルの屋上へと飛び移り、付近を睥睨した。

彼の名はシッコウシャ。賢明なる読者の皆さんには、彼がニンジャであることに既にお気づきの方もおられるだろう。その超人的な視力は、路地裏を走る一台のバイクへと目を留めた。

◆ ◆ ◆

シムダの乗ったバイクは、延々と似たような景色が続く、退屈な路地を走り続けていた。こんな深夜に出歩くのは、彼にとって初めての体験だった。ましてやバイクに乗ってなどは。

(……気味の悪い路地だ。もしもユーレイやオバケに出会ったらどうしよう)天狗にユーレイ、クネクネ・モンスターなどの恐るべき想像上の怪物が、不安がちなシムダのニューロンに浮かぶ。彼は不安を払うように脇見を繰り返しながら進む。

だが、何度かの脇見ののち、視線を正面に戻したその時! 彼はバイクの進行方向に、謎の男が立っているのを見つけた!

「オバケ!?」シムダは急減速! しかしバイクは急に止まらない! けたたましい摩擦音を鳴らしながら、男を撥ね「イヤーッ!」

「アイエッ!?」シムダは困惑した。バイクは男の上に前輪を乗り上げ、停止していたのだ。そして……男は倒れていない! ホイールを片手で掴み、軽々と持ち上げているのだ!

「ドーモ、シッコウシャです」

男は前輪を掴んだ状態でオジギした。街灯の明かりに照らされ、シムダは黒檀のニンジャ装束を認識する! 恐るべき伝説上の怪物が、彼を恐慌に陥れる!

「アイエエエ!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」あえなく失禁! 直後、シッコウシャはホイールを掴んだ手をさらに上げ、無造作に車体を押し倒した。「グワーッ!」車体に押し潰されることこそ咄嗟に免れたが、それでも強烈な痛みがシムダを襲う!

「グワーッ!」「貴様の積み荷を渡せ」激痛に悶えるシムダに、ニンジャは冷酷に告げた。「アイエエエ……つ、積み荷……ネンガジョのことですか」彼は息も絶え絶えに聞き返す。だが!「ダマラッシェー!」「アイエエエ!」

突如ニンジャスラングで怒鳴られ、シムダは再失禁!「愚か者が! それはネンガジョなどではない! おぞましき伝統汚染物質に過ぎぬ!」シッコウシャは声を荒げ、シムダを見下ろした。「とっとと出せ! さすれば配送の罪は不問としてやる!」「ア、アイエエエ……」

シムダは恐怖に心折られ、這いながらホルダーに近寄った。ナムサン……! このままネンガジョは燃やされてしまうのか!? 彼の手がホルダーに触れた、その時! シッコウシャは突如として明後日の方向を睨み、腰のタント・ダガーを引き抜いた!

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

ガキィン! 襲撃者の鉤爪めいた得物とタント・ダガーが打ち合い、激しい金属音を鳴らす! 襲撃者はアンブッシュが決まると確信していたのか、予想外の手応えに目を剥いた。当然、その隙を見逃すシッコウシャではない!

「イヤーッ!」「グワーッ!」ハイキックが襲撃者の腹部に命中! 後方へ吹き飛ばす! 殺害チャンスだ! だがシッコウシャは深追いを避けた。彼のニンジャ第六感は、明らかに市販品ではない奇妙な得物を持つ敵を警戒したのだ。

彼は追撃の代わりに連続バク転で距離を取り、余裕を見せつけるように、たっぷりと時間をとったオジギを行った。「ドーモ、はじめまして。シッコウシャです」

「ゲホッ……ドーモ、シッコウシャ=サン。スカラムーシュです」襲撃者はアイサツを返す。アンブッシュでもアイサツでも期先を制され、その声には苛立ちの色が滲んでいた。

「スカラムーシュだと? 腑抜けた名前よ」一方のシッコウシャもまた、声色に苛立ちを滲ませる。「貴様とて日本人であろう。ならば日本語の名を名乗るべし」

「生憎、都会暮らしが長いんでな」スカラムーシュは戯けながら、心臓を庇うように手をやった。そして服の上から秘匿IRC機器を慎重に操作し、友人のハッカーへと事前に取り決めた暗号を送信した。

「かくいうアンタはあちこちで派手にやってるみたいじゃねぇか。随分な恨みを買ってまでよ」スカラムーシュは問いかける。「しかり。穢れた伝統を撒く者は全て殺す」シッコウシャは事も無げに答えた。

「どうしてそこまでする?」「愚問である」遮るシッコウシャ。だがスカラムーシュは追求した。「ああ、馬鹿な質問だとは分かってる。でも気になるんだよ。もう少し聞かせてくれねえか? アンタは何を憂いている?」

……アンブッシュの失敗、そして追撃を受け、スカラムーシュのニンジャ第六感は冷酷なるカラテ力量差を感じ取っていた。ゆえに彼は殺害ボーナスの満額を諦め、IRCを通じて今夜のミッションを共にする傭兵のネットワークへ呼びかけたのだ。

増援が来るには当然時間がかかる。彼は話術を用い、この狂人から長口上を引き出そうとしていた。一方、突然現れた二人のニンジャの問答を、シムダは震えながら見ていた。

(ニンジャ。ニンジャ、ナンデ……?)シムダは人生を根底から覆されたような、未知の恐怖に襲われていた。ニンジャの存在は高度に隠蔽され、秘匿されている。彼のような一般人が迂闊にニンジャ存在に触れれば、たちまちリアリティ・ショック現象が現れるのだ。

(逃げないと)会話の続いている間、彼はしばらく震え続けた。その当たり前の結論へたどり着くのにすら、大分時間が掛かった。だがニンジャ相手にどう逃げる? ニンポやスリケンで背後から攻撃されれば……! その時、彼はスカラムーシュと名乗ったニンジャの目配せに気づいた。

スカラムーシュは目線で無力なドライバーにメッセージを送っていた。(車体の影にでも隠れて、ジッとしていてくれよ……)だが、その目線を受けたシムダは、こう受け取った。(逃げろ……って言っているのか?)

恐怖のあまり、声を出して尋ねる事は出来なかった。シムダは恐る恐るバイクへ這いより、シモダマ社の説明を思い出しながらマイコAIに再起動命令を下す!

ブルン……排気音が鳴る! シッコウシャは即座にバイクへと振り返る! 彼は打ち倒したバイクが自動で車体を起こし、その上にネンガジョ・ドライバーの小僧が跨っている光景を目にする!

「貴様……」駆け出そうとするシッコウシャ! スカラムーシュは咄嗟の状況判断で、その背にスリケンを投擲!「イヤーッ!」「グワーッ!」スリケンが背中に突き刺さる! だが浅い!「……スカラムーシュ=サン! 貴様、私を謀ったな!」「そうだ! 全て俺の計画通りだ!」嘘だ!

スカラムーシュは隠れろと目配せしたはずのドライバーが、バイクで逃走しようとしたことに苛立った。だがドライバーの無事も、彼の任務の評価対象である!(結果オーライだ、結果オーライ! 奴に一発カマしてやったぜ!)そしてシッコウシャの激昂の隙に、シムダはバイクを走らせ離脱する!

(どこへ行けば!? ニンジャが、ニンジャを!)シムダもまた、咄嗟に状況判断! だが経験が足りず、最適な答えは浮かばない!(……国道なら、他の車もたくさんいる!)苦し紛れな答えを元に、来た道を逆走! 国道を目指す!

「行かせんぞ! イヤーッ!」バイクを狙い、クナイが飛ぶ!「イヤーッ!」スカラムーシュが鉤爪を振り回し、これを阻む!「お前の相手は俺だ!」「貴様ァーッ!」

激昂するシッコウシャ! 不敵に笑うスカラムーシュ! 精神的イクサの趨勢はひっくり返った。だが彼の心臓はバクバクと鳴り続けていた。ここから先はノープランなのだ!

◆ ◆ ◆

時間帯ゆえか、それともこの区画は元々人気が少ないのか。車の影はまばらだ。国道に入ったシムダは、交通法規に喧嘩を売るように爆走していた。

「アイエエエ! ぶつかる! ぶつかる!」彼はギアを滅茶苦茶に操作しながら、はるか先の車が目の前にいるかのように恐怖した。彼にこんな速度での運転経験はない。後ろからの追い抜き経験もない。国道での運転経験すらない! 故郷の農道と比べ、ここはまるで車の森だ!

「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」合成ヤクザクラクション音声がシムダのルール違反を咎める! 初耳! 極限状態のシムダは、全ての車にヤクザが乗っているように錯覚!「ゴメンナサイ! 許して! アイエエエ!」闇雲に加速する!

「グワーッ!」ドアミラーとヘルメット衝突!「アイエエエ!」壁との激突危うく回避!「ウワーッ!」中央分離帯に乗り上げ、飛翔!

オムラ社謹製のサイバー・バイクは彼の無謀な運転にも耐え抜いた。だが彼はサイバネ者ではない! 着地時の衝撃がかかとから駆け上り、股間に直撃!「アバーッ!」涙目で運転続行!(逃げないと! ニンジャが、ニンジャが!)

先に進むにつれ、交通量も増えていった。車の収束する合流地帯へシムダは近づいていく。そこはまるで車のジャングルだった。道の先で交通トラブルでも起きているのだろうか?

鈍い痛みがシムダをクールダウンさせ、減速することを思い出させる。(もう相当逃げたよな……?)しかしそれは悪手だった!「ザッケンナコラー!」後ろからヤクザスラング! 肉声だ!

「アイエッ!?」反射的に硬直し、振り向く! その目に映るのは……ナ、ナムアミダブツ! 疾走する重武装ヤクザバイクではないか!「忠犬」のハチマキを締めたヤクザドライバーが、ロケットランチャーの狙いを定める!

シムダは恐怖のあまり動けない!「スッゾコラー!」……BLAM! ロケット弾が射出! 進行方向上に着弾! 爆発が起こる!

目の前で爆発する道路を、シムダはスローモーションになった視界で見ていた。アスファルトの破片が飛び散り、オレンジ色の爆炎が巻き上がる。耳をつんざくような轟音が起こり、鼓膜越しに脳を揺さぶった。

(逃げないと)彼は思い出したようにハンドルを操作しようとした。だがそれは叶わなかった。爆風が前輪を呑み、車体を斜め上へと跳ね上げた。空中で車体にしがみつこうとしたシムダだが、すぐに車体に振り払われ、フリスビーにされた亀めいて飛び、先んじて側壁に衝突した車体と空中衝突した。

呻き声を上げることすら叶わず、彼の意識は闇へと飲み込まれていった。

◆ ◆ ◆

(イジマ……イジマ……)

朦朧とする意識の中で、誰かの声が聞こえる。懐かしい声が。シムダは薄っすらと目を開ける。セピア色にぼやけた景色と見慣れた顔が彼を迎えた。(父さん……?)

畳の敷き詰められただだっ広い空間。薄手のカーテンの向こうから、子供たちが遊ぶ声が聞こえる。中央には大きな木製テーブルが置かれ、豪勢に盛られたスシや飲みきれないほどのビール瓶が並ぶ。壁には「合格おめでとう」「勤怠」「ダルマに目を入れる」などの見事なショドーが飾られ、このパーティーの目的を語っていた。

(イジマ、お前はよくやった)

父が誇らしげな顔で言った。(ネオサイタマ大学……国立大学だ。経歴にハクがつく)(父さん)(ネオサイタマから帰ってきた時、お前は英雄になる。シノヤマ・ヴィルの神童としてな)

(父さん、俺)彼はなおも問いかけようとした。だが父はシムダを見ようともせず、上機嫌にビールを呷る。その姿が一瞬にして祖母へと置き換わった。

(イジマや、シムダ家をよろしく頼みますよ)(ばあちゃん)(今の村役場を取り仕切るのはノジマ家のバカ息子。キョート帰国子女だけが取り柄の無能者です。ですが、あなたの学歴があれば容易くねじ伏せられるでしょう)

(ばあちゃん、俺さ)(ほら、見なさい)玄関から続々と親類縁者が入ってくる。見慣れた光景だが、今日は見慣れぬ顔の者も混じっていた。(あの人たちは)(あなたに媚を売りに来たのよ)

絶句するシムダの元に、親戚の子供たちが駆け寄った。(イジマ兄ちゃんネオサイタマ大だって!)(スゴーイ!)キラキラとした目で彼を見つめる。彼は何も言えなくなり、ただ愛想笑いした。(ネコネコカワイイに会えるんでしょ?)(あ、ああ。会えるかもね)

(ヤッタ!)(サイン貰って来てよ!)子供たちがネコネコカワイイ・ジャンプで飛び跳ねる。(こらこら、お兄ちゃんを困らせちゃダメよ)すぐにその親が現れ、二人を運んでいった。その全てが掻き消えると、再び父の姿が現れた。彼は厳格な口調で言った。(イジマ、分かっているとは思うが。大学を卒業できなければ、帰ってくる場所はないぞ)

(父さん、俺は)(余計なことは考えるな。母さんみたいになっては人生お終いだぞ)(俺は……)(余分なカネは一切送らない。一日中勉強するんだ。休日もな。イジマ、お前のためだぞ。将来に差が出るんだ)(あなたのためなのよ)背後から祖母の声が聞こえた。シムダは怯えるように二人を見た。(それでいいな?)彼らは威圧と期待の入り混じった目で見続けていた。

「……わか、った」彼が震えた声で答えると、二人の幻は掻き消えた。取り残されたシムダは、ポケットに入れていた写真をくしゃくしゃに握りつぶした。母が置いて行ったアルバムから見つけた写真。下世話な蛍光ネオンに照らされたダンスフロア。品のない空間。馴染めないだろう光景。でも、それは、綺麗だった。

(父さん、ばあちゃん。一回でいいからさ、俺、ここに行ってみたいんだ)その言葉は胸の奥に押し込まれ、誰も聞くことはなかった。

◆ ◆ ◆

「なあ、お前さん。起きれるか」

誰かの声が聞こえる。馴染みのない声が。シムダは重たい瞼を持ち上げた。しかし持ち上げた途端に彼の意識は覚醒した。目の前にいたのは、冴えないスタジアム・ジャンパーを着た男。しかしその顔には……ニンジャの装備、メンポが装着されていたのだ!

「ニン……!」「お前さんの味方だよ。……ドーモ、スカラムーシュです」ニンジャはオジギした。よくよく見るとそれは、つい先刻彼を襲ったニンジャと戦い、彼を逃がしてくれたニンジャであった。

シムダは周囲を見渡す。国道脇の安全地帯に、彼とバイクは倒れていたらしかった。「あなたは一体」彼は困惑した声で尋ねた。「俺か? 俺は雇われだ。さっきのニンジャ野郎、あいつに敵対する連中の手駒だよ」「シモダマ社が」「アー……まあ、そんなもんだよ」彼は誤魔化し、話題を替えた。

「お前さん、怪我の具合はどうだ」「怪我……?」シムダはようやく、自身の体に考えが及ぶ。そして体を見下ろした途端、後悔した。右足がおかしな方向に曲がっている。「……ッ!」声にならない悲鳴が漏れる。

そして、怪我はそこだけではない。連鎖的に全身に意識が及び、内臓、筋肉、神経……その全てが同時に痛みを訴えかけた。一斉送信された激痛信号がシムダのニューロンを満たし、苦痛の渋滞を引き起こす!

「い、痛、痛いッ……!」これだけ絞り出すのがやっとの有様だった。「ZBRは? 持ってるか」スカラムーシュが尋ねる。(ZBR……?)シムダは答えられず、身悶えするばかりだ。

「持ってなさそうだな……」彼は懐からZBRアンプルを取り出し、在庫量を確認する。十分な量があると判断すると、彼はその内の一つをシムダに注射した。「グワーッ!」シムダが飛び跳ねる!「痛み止めだ。すぐに楽になるぜ」スカラムーシュは格好つけて言った。

彼の言葉通り、激痛はすぐに引いていった。シムダはかつてインフルエンザに掛かった時、医者に打ってもらった痛み止め剤を思い出した。彼の呼吸が落ち着いてきたのを見計らい、スカラムーシュは続けた。

「状況を説明するとだ、イカれたニンジャ野郎がネンガジョを目の敵にしてる。お前さんはそいつに狙われた。ついでにイカれたシンパもいる。お前さんはそいつらにも狙われたのさ。で、俺はそいつらと敵対する連中のエージェント。お前さんたちドライバーを守るのが仕事だ」

「さっきのニンジャは」「別の連中が戦ってる」スカラムーシュは気を損ねた。駆けつけたのは、彼が援護しても足手まといになるような手練れの二人組だったのだ。殺害ボーナスの分け前は期待するだけ無駄だろう。

「戦闘は連中に任せてやった。逃げたんじゃないぞ。それで、俺はまあ、重要任務に戻ったわけだな。目先の戦いより重要な任務に」「ドライバーを守る……ですか」ZBRの刺激が強すぎたか、シムダはとろんとした目つきで尋ねた。

「ああ。……まあ、ちょっとばかし駆けつけるのが遅れちまったが、お前さん生きてるだろ。結果オーライだ、結果オーライ。お前さんを狙ったクソヤクザもキッチリ潰しといたしな」スカラムーシュは言い訳がましく言った。「で、それよりだ。ネンガジョの件だよ」

そうだ。シムダは咄嗟に聞き返した。「配達は」「まあ、無理だろうな」スカラムーシュは事も無げに続けた。「無理……」「配達は俺が代わりにやってやる。お前さんは適当な病院で下ろす。治療費も出してやる」俺のカネじゃねぇけどな、と彼は言いかけ、口を噤んだ。

「ま、今日の事はこれで忘れろ。バイオパンダに噛まれたとでも思ってくれや。長い人生、こういう夜もあるもんだぜ。ニンジャと関わって命があるだけでも儲けもんだな」スカラムーシュはそう言って話を打ち切ると、シムダを抱えようと手を伸ばす。だが、意外にもシムダは食い下がった。「でも、俺の仕事です」

「何言ってんだお前。……その体じゃ無理だろ?」「もう痛くないですから」「ZBRのおかげだ。麻酔と一緒だよ」「でも、足だって……!」彼は右足を動かそうとした。無理な動作は誤魔化しきれない激痛を生み、彼を身悶えさせた。

「言わんこっちゃない。ZBRってのはゲームのポーションじゃないんだ。その足はすぐには治らねえ。諦めるんだな」ダダをこねる若造を、スカラムーシュは生暖かい目で見守った。彼がここまで優しくするのには理由がある。実のところ、彼は殺害ボーナスの収益を当て込んでいたのだ。

事前調査ではシッコウシャがニンジャと交戦したとの情報はなく、十分に殺せる手合いだと見込んでいた。しかし結果はこのザマだ。どんな小金でも稼げる分は稼いで帰らねば、妻にどんな目で睨まれることか。ニンジャの身体能力を以ってネンガジョを配り、素知らぬ顔で報酬金を受け取る。マヌケな構図だが、背に腹は替えられない。

一方のシムダも、腹に何かを抱えていた。(諦めろって言うのか?)妥当な忠告だとは分かっていた。助けてくれた恩もあった。だが、何故か彼は腹が立っていた。納得しかねていたのだ。

そんな心の機微を知ってか知らずか、スカラムーシュは優しく言った。「いいか、俺はな。お前さんのためを思って言ってるんだぜ」

シムダは答えなかった。彼は這いずるようにバイクに寄りかかると、まだ動く左足を支点に、倒れこむように無理やり跨った。「再起動しますドスエ。姿勢制御重点な」自動電子マイコ音声が鳴り、役に立たないルート情報を表示。全自動で機体を立ち上がらせた。

スカラムーシュはギョッとしたように言った。「オイ、何考えてる」「配達ですよ」震えた声でシムダは返した。

「んな……」「だって俺が配達すれば予定通りでしょ」「だから、それが出来ないって言ってんだよ!」「大丈夫ですよ!」「どこがだ!」「分かりませんよ!」不毛に言い合う二人。その間に、マイコAIは再起動を完了した。「再起動完了ドスエ。ガンバロ!」途端にシムダはキックスタート!

「無茶だ!」「やってみなきゃわかんないでしょ!」けたたましいエンジン音! 彼はもはや脇目も振らず、一直線に国道へ再合流した! 取り残されたスカラムーシュはポツンと呟いた。

「なんだアイツ……ZBRが効き過ぎたのか?」

◆ ◆ ◆

初めて国道へ入った時と同じように、車の数はまばらに戻っていた。渋滞の原因はありふれた交通事故だったが、その残骸が無許可で海へと捨てられ、無事に清掃完了したのだ。だがシムダにはそんな事情は知らないし、分からないし、分かる気もない。今はただ内なる衝動に身を任せ、この仕事を最後までやり抜くだけだ!

「残り時間は!」シムダは車載UNIXのボタンを適当に連打!「残り1時間ドスエ」音声認識で返答!「1時間……!」彼は歯ぎしりする。Uターンして国道を降りるという作戦は不可能となった。そんな悠長なことをすれば、間に合わない!

「次の降り口は!」「およそ30分ドスエ。渋滞を考慮な」「渋滞を無視すればどうなる!」「およそ10分ドスエ」「よし!」アクセルを踏み込み、急加速! 道路脇のオレンジライトが淡い光の線を描く!

正面に車の影! 注入されたZBR効果により、ニューロンが加速! 車体の10cm隣を通過! 肩をずらしてドアミラー衝突回避! さらに前に車! 次は距離がある! たやすく回避! 左右に車体! 突き進む! その先にトラック! 強引な減速で左右の車を先に行かせ、今度は右へ!

シムダのバイクは車と車の隙間を見つけ、強引に滑り込んでいく。その後方でスカラムーシュはトラックの荷台から荷台へ飛び移り、その滅茶苦茶な曲芸走行を観察していた。

(アイツ、なんであそこまで)不意に彼のニューロンに、自身の過去が浮かび上がった。愛する女を守るための逃避行。先も後も考えない、衝動のままの戦いの記憶。色褪せた、しかし鮮烈な美しさを持った光景だった。

この時のシムダはZBRが効いているとはいえ、実際驚異的なパフォーマンスを発揮していた。だが、ヤバレカバレの奇跡は長続きしない!

「ザッケンナコラー!」血気盛んなトラック運転手が窓からバットを突き出す! 後方の喧騒から、暴走バイクの存在を察知したのだ! シムダは惰性に従い、野球ボールめいて頭を差し出してしまう!

「アバーッ!」ヘルメット越しとはいえ、相当な衝撃が脳を揺さぶった!「ア、アバッ……」「どういう見識してんだテメッコラー! 交通ルール守れやコラー!」操作がなくともバイクは惰性で前進し、運転手の罵声が後ろに遠ざからせる。しかし直後に別の車が行く手を遮る。シムダは覚束ない手でハンドル操作し、何とかこれを回避する。

だが、突如として焦熱が引いた。ZBRが切れたのだ! 意識が朦朧とし、忘れていた痛みが蘇る! 減速しなければ危険だ! しかし減速すれば四方を車に囲まれる、ネズミ袋の格好となってしまう!「アバ……アバーッ……」彼は一時避難するべく、ルートを探す!

百メートルほど先は三叉路だ! その内の一つが空いている! シムダはこの救いの糸に、後先構わずしがみつく! 彼は最後の力を振り絞ってバイクを走らせ、何とか車体地獄から抜け出した!

そこは不自然なほどに車影のない道だった。排気音の喧騒が遠ざかり、故郷のような静けさが周囲に広がる。何かがおかしい。シムダは自身を強いて道路標識を見上げる。そして気づく! この道を進んでいけば……ネオサイタマを出てしまう!

「そんな!」だが後戻りは出来ない! 今更Uターンしたところで、先ほどの道に割って入ることは不可能なのだ! ナムサン! ここで手詰まりか!?「進行方向は!」前進を続けながら、シムダはマイコAIに怒鳴る!

「この先30分地点でUターンドスエ」「それじゃ間に合わない! 残り時間は!」「約45分ドスエ」「15分でネンガジョを配り尽くせるか!」「質問の意味が分からないドスエ」「俺にどうしろって言うんだ!」「質問の意味が分からないドスエ」

「クソーッ!」シムダは頭を抱えた。ヘルメットが軋み、嫌な音を立てた。結局、諦めるのか。やると決めたのに、何も出来ないのか! 何でこんな目に遭わなくちゃいけないんだ! ニンジャが! ニンジャで! 整合性のない怒りが溢れ、彼の心を満たした。

じわりと涙が滲む。けれどもヘルメット越しでは拭うことすら出来ない。シムダの視界が霞んだ。だが、霞んだ視界の中、彼はありえないものを見た!

「ニンジャ!?」彼が見たものは進行方向に中腰で立ち、少し側壁側に背中を向け、レシーブめいて手を組むニンジャ……スカラムーシュの姿だった! 一瞬、互いの視線がかち合う。何事かの意思交錯ののち、シムダは思い切りアクセルを踏み込んだ!

「ウオオーッ!」シムダが咆哮!「ウオオーッ!」スカラムーシュが咆哮! 組んだ両手の上に前輪がのし掛かる! 回転する質量が彼の手を押しつぶさんとする! なんたる狂気的光景! だが……ニンジャは吠え、叫び、ただがむしゃらにカラテを込めた!「イイイ……イヤーッ!」

「アイエエエ!」シムダは絶叫! 車体が上空に跳ね上がる! ナイスレシーブ! バイクが側壁を越える! その光景をスカラムーシュは見送った。後にはジンジンとした手の痛みが残った。肩も、腰にまで痛みが来ていた。

「ハァーッ……クソッ。アイツ……ワケ分かんねぇ……」年甲斐もない馬鹿をしてしまった。彼は任務に戻るべく、手近なトラックの荷台へと飛び移り、手の傷を見てしかめ面をした。だが、そのメンポの下は複雑な笑みが浮かんでいた。

◆ ◆ ◆

側壁を飛び越えたシムダの視界に、遠く離れたネオサイタマの景色が飛び込んだ。

天を覆う網めいた無骨なケーブルから、ドギツい色のネオンサインが染み出している。樹上の果実めいて頭を出した猥雑なネオン看板が、まるで統一感のない店舗をアッピールする。そして宙を泳ぐマグロツェッペリンがそれらにサーチライトを投げかけ、稚拙なライトアップを行なっていた。

「綺麗だ」シムダはぽかんと口を開け、そう呟いた。それは場違いな感情だったが、彼には尊いものに思えた。しかし、無粋な重力は彼を離さない。車体は一直線に市街地へと落下していく!「アッ! ……アアア!」

街灯! 道路標識! 車体にしがみつくシムダ! ビルの窓! 看板! 地面! 地面! 地面!「グワーッ!」絶叫!

彼は一度目の失敗から、落下衝撃から身を守る姿勢を本能的に模索していた。しかし所詮はヤキバ・アタッチメント。素人の所作に過ぎない。アドレナリンを押し流すような激痛に情けない悲鳴を上げ、シムダは体を抱え込むようにして暫く震え続けた。

◆ ◆ ◆

……脳内物質の放出が止まる。痛みは未だ残っている。彼は気力だけで声を絞り出し、マイコAIに尋ねた。

「ここは」「目的地点ドスエ」えもいわれぬ感動があった。だがマイコAIは無感情に続けた。「残り30分ドスエ。急務な」

血の気が引いた。遠目にテンプルから戻ってくる親子連れの姿が見える。彼は一目散にバイクを走らせ、投函作業を行っていった。

◆ ◆ ◆

午前9時。ネオサイタマ郵便局、第三六区画の駐車場。そこに一人のドライバーが戻ってきた。バイク置き場には彼を除いて2台ほどの欠けがあったが、疲れ果てた彼は気にも留めなかった。

チェーンにバイクの前輪を繋ぎ、自動査定装置のボタンを押す。何らかのプログラムが走り、ネンガジョ・ホルダーを走査する。「シムダ=サン。シムダ・イジマ=サン。全ネンガジョの規定時刻内投函完了ドスエ」

電子音声が完了を知らせ、査定機器から万札を一枚吐き出した。彼は震える手でそれを受け取り、喜ぶような、困惑するような、そんな笑みを浮かべて眺めた。「一万円……そうだな……一万円かぁ」

もはや財布を取り出す気力もなかった。万札を懐に無造作に詰め込むと、彼はハンドルにぐったりともたれかかった。

散々なバイトだった。身体中がまだ痛む。労災は降りるのだろうか。怪我のことを父や祖母にどう言い繕おうか。

あのニンジャたちは何者だったのか。シッコウシャは、スカラムーシュはどうなったのか。シモダマ社はどこまで知っていたのか。他のドライバーたちもまた、何者かの襲撃に曝されていたのだろうか。

疑問は山のように浮かぶ。しかし、疲れ果てたニューロンはそれらを拒絶し、彼を穏やかな眠りに誘った。

「散々だった。でも」瞼が落ちきる前、彼は満足げな笑みを浮かべ、呟いた。「やりきったぞ」

薄暗い駐車場。決して柔らかくはないハンドルの上で、シムダは安らかな寝息を立て始めた。

【ア・スカーミッシュ・オブ・オトシダマ】終わり。

それは誇りとなり、乾いた大地に穴を穿ち、泉に創作エネルギーとかが湧く……そんな言い伝えがあります。