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vol.1『思うことから、すべては始まる』フツーの主婦が起業して教育ジャーナリストになったわけ

 はじめまして 中曽根陽子と申します。
 私は、クリエイティブに未来を創る力を持った子どもを育てる母たちの、発見と成長の場を提供するマザークエストという会社の社長で、教育ジャーナリストという肩書で本を書いたり、情報発信をしている人間です。
 小さい頃は、ジュール・ヴェルヌの『80日間世界一周』や『地底旅行』『海底2万里』が大好きで、本気で「地球の地下には地底人がいるかもしれない」なんていう空想をしているような子どもでした。
 大人になってからは、出版社に勤めたものの、本の体裁を整える部署に配属され、進行管理という仕事をすることに。本の中身を創る仕事がしたいと訴えるも叶わず、出産を機に退職。育休もインターネットもなかった時代の話です。専業主婦になって、「子どもは可愛いけれど、このまま○○ちゃんのママというだけのワタシになってしまうのか」というモヤモヤを抱えながら子育てをしていたワタシが、どうやって今に至ったのか…。そこには偶然の出会いや出来事があったのですが、振り返ってみると、「いつか必ず仕事をする」という思いと、一つ一つの選択の積み重ねが、今のワタシを作ってきたのだと思います。


フツーの主婦だった私が起業をするきっかけ

最初のターニングポイントは、『子どもとでかける大阪あそび場ガイド』という本を作ったことでした。これは、身近な公園やあそび場をお母さんの目でチェックしてイラストと文章で紹介するという本で、お母さん10人がチームを作って企画・取材・執筆・編集まですべてを手掛けました。

メンバーは、同じ子育てサークルの仲間です。このサークルの合言葉は、「子どもも大事、でも私も大事」。メンバーは自主的に動くことが求められ、前職や得意なことやスキルを活かして活動をしていました。「○○ちゃんのママとしてだけではなく私自身として生きたい!」 そう思っていた私は、サークル結成の記事を読んで早速参加。本の出版に興味がある仲間とグループを作り、私は職歴を活かして、出版社への売り込みと編集・進行管理を担当しました。あそび場を使う当事者のママが、トイレや貸し出しベビーカーの有無、おすすめの対象年齢など、自分たちが知りたい情報を足で集めてイラストも使って紹介したこの本は、インターネットのない時代に大ヒット。同シリーズの全国展開の先駆けとなり、その後20年に渡るロングセラーとなったのです。

成り行きで、登録スタッフ制の企画編集会社を立ち上げる

あそび場ガイドが売れたので、毎年改定作業をする必要があり、その受け皿として作った会社は、登録スタッフ制の情報発信ネットワークワイワイネットとして発展し、子育て関連の本を企画編集するようになりました。
つまり、最初から起業をしようと思っていた訳ではなかったのです。でも、会社をやめるときに、これからは雇われる働き方はしないと決めていたワタシにとって、起業は自然な選択肢でした。作ったからにはやりたいことをしよう! そう思った私が、企画を考える時に大事にしてきたことは、自分ごととして鼻の効く分野であること。一読者として欲しいけれど、まだ世の中にない切り口であることでした。ライターもそのテーマの当事者であること。「全ては、お母さんと子どもの笑顔のために」を社是にして、実用書を数多く手掛けました。
自分の子どもが小さい時は、一緒に出かけるときのお役立ち情報を集めた本、学校に行くようになると、家にある材料でできて、1日で完成して親子で楽しめる夏休みの自由研究のネタ帳というように、自分自身の関心やニーズによって、企画内容は変わっていきました。専門家の方を立てて、手話の本や字がきれいになるワークブックを作ったこともあります。



子どもの中学受験をきっかけに本を執筆 これが教育ジャーナリストになるきっかけ

次の転機になったのが、子どもが中学受験をしたことでした。自分が経験した葛藤や疑問を他の人はどう乗り越えたのかを知りたくて経験者の声を集め、次に続く人が中学受験を親子の成長の機会にしてほしいと思い、『後悔しない中学受験』(晶文社)という本を書きました。それをきっかけに、教育関連の記事執筆の依頼を受けるようになり、教育ジャーナリストとして活動するようになります。業界とは関係なくフラットな立ち位置で、しかも利用者の目線で教育について取材し発信して行きたかったので、ジャーナリストという肩書を使いましたが、本音を言うと、今でも少し面映い気持ちがあります。


幸福度世界一の国、デンマークの教育視察で受けた衝撃から次の道へ

3つ目の転機は、デンマークの教育視察に出かけたことでした。日本で学校取材をするうちに、子どもが本当にやりたいことやワクワクすることを見つけていくというより、将来に備えて学歴をつけることを優先している日本の偏差値型教育に疑問を持っていた私は、デンマークでは、国が一度導入を決めた原発の計画を、国民が対話によって覆したという歴史を知り、そんなことができる国の教育はどうなっているのか、自分の目で確かめたくて出かけたのです。
そして、その旅は私のその後の進む道を決定付ける経験になりました。

デンマークの教育の目的は「自立」。常に「あなたはどう思うのか」「どうしたいのか」を問いかけられ、一方的に教えるのではなく、言葉で対話することを通して学び合い、他者と共生しながら自分らしく生きる道を見つけていきます。
それは、幼児教育から始まっていて、私が視察した森の幼稚園では、子どもたちは真冬でも一日中外で過ごしながら、自分がやりたいことを見つけていきます。ナイフや木槌、火を使う場面もあり、ツアーに参加した教育関係者からの、「怪我とか心配ではないのですか」という質問に、園長先生は「なぜ?」という表情で、「扱いについてルールはあるけれど、子どもたちは体験を通して学んでいきます。怪我を心配して与えなければ、子ども達は学ぶ機会を失ってしまいます。子どもたちのやりたい気持ちにどう応えるかが大事なのです」と話してくれました。そして、園長先生の「良い社会を作るには、よい子供時代が必要です」という言葉が、私の心に強く突き刺さったのです。




未来を創るキーパーソン「お母さん」を応援する「マザークエスト」


以来、その経験を伝えながら、これからの教育を考えるワークショップを開催し、ありたい教育について対話を繰り返していきました。そこには、さまざまな立ち位置で教育改革を進めようとしている方が集って対話をしましたが、その中で、思い至ったのは、「教育を変えていくに大きなエネルギーが必要で、簡単には変わらないけれど、親が何に価値を感じ、子どもに何を伝えるかで子どもは変わる。子どもの身近にいるお母さんは、良い社会を作るためのキーパーソンだ」ということでした。そして、お母さんが探究する場という意味で、「マザークエスト」を立ち上げて、お母さんが視野を広げ自分軸を持つサポートをする活動をはじめました。


これからのキャリアは、プランド・ハップンスタンスで決まる!?

こうして振り返ってみると、子育てとほぼ同じ時を重ねてたどり着いた現在のキャリアも、出産で会社を退職したときには、30年後にこんなことをしているとは1ミリも予想していませんでした。しかし、一つ確信していたのは、全ての結果は、自分の思いが引き寄せるということです。もちろん偶然の出来事もありますが、それをやるかやらないかは自分が決めている訳で、そういう意味でも、思うことから全ては始まっているのです。最近、新しいキャリア論で、「プランド・ハップンスタンスセオリー」というものがあると聞きました。これは、偶然の出来事や出会いをキャリアアップにつながる機会と捉えてを受け入れると同時に、自ら偶然の出来事を引き寄せるアプローチが重要だと言われています。計画通りのキャリアステップでなかったとしても、まずは挑戦してみようというスタンスが次の扉を開くことがあるからです。一直線に自分のやりたいことを極めて行く人もいるでしょうが、私の場合は、「何をしたいかは分からないけれど、○○ちゃんのママでは終わりたくない」そんな思いから直感を大切にして行動した結果、プランド・ハップンスタンスで次の扉が開いたのかもしれません。

こうした経験から、私は子どもに次のように伝えてきました。
「やったことがないことでも、自分が興味を持てることであれば、挑戦してみる。たとえその経験が思い描いたものとは違ったとしても、必ず意味があるから、やるなら一生懸命やる。その繰り返しによってたどり着いた場所は、自分が思いもしなかった世界かもしれないけれど、結果的に自分のやりたいことに近づいている可能性は高い」と。

これまでは目指すゴールを定めてキャリアステップを具体化し、それに向けて経験を積み重ねていく、という考え方が主流だったかもしれないけれど、変化が激しい時代には、もしかしたらこういうことを伝えていくキャリア教育もありかもしれませんね。

他人軸ではなく自分軸をもって

AIの発達より早く、新型コロナによって一変した社会。これからは、他人軸で社会に適合するのではなく、自分軸を持って社会に貢献できる人が世の中をよりよく変えていくリーダーになっていくのではないかなと思います。そんな子どもたちがよりよい未来を創ってくれることを応援したいと思っています。

そんな私が、今一番興味をもっていることは、「自分がやりたい!という意欲のある子に育つには、どうすればいいのか」ということです。こうしたテーマを解き明かすべく、自分のやりたいことを見つけてイキイキと活躍している人のインタビュー記事など、執筆活動をするかたわら、毎日の子育ての中で、ついつい周りが気になって悩んだり、あふれる情報に振り回されて不安になったり、思うようにならない子どもにイライラしたり、それでも毎日がんばっているお母さんのために、厳選した良質な情報、コト、モノを提供し、お母さんのパワーアップを応援する活動をしていこうと思っています。

もし興味を持ってくださったら、ぜひサイトを覗いてみてください。

マザークエスト https://www.motherquest.net/
中曽根陽子 オフィシャルサイト https://www.waiwainet.com/


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